信用リスク管理態勢における管理者の役割・責任

信用リスク管理部門の管理者は、「信用リスク管理規程」を策定し、取締役会等の承認を得ます。
また、管理者は、信用リスク管理部門の態勢を整備し、牽制機能を発揮させるための施策を実施します。

信用リスク管理規程の整備・周知

【金融検査マニュアルのチェック項目】

管理者は、信用リスクの所在、信用リスクの種類・特性及び信用リスク管理手法を十分に理解し、信用リスク管理方針に沿って、信用リスクの特定、評価及びモニタリングの方法を決定し、これに基づいた信用リスクのコントロール及び削減に関する取決めを明確に定めた信用リスク管理規程を策定しているか。
また、管理者は、信用リスク管理における債務者の実態把握や債務者に対する経営相談・経営指導等を通じた経営改善支援の重要性を踏まえて、信用リスク管理規程を策定しているか。信用リスク管理規程は、取締役会等の承認を受けた上で、組織内に周知されているか。
さらに、信用リスク管理規程は、金融円滑化管理規程との整合性を確保しているか。

信用リスク管理部門の管理者の役割の一つとして、信用リスク管理規程の策定があります。
信用リスク管理規程の策定のためには、信用リスクの所在、種類・特性、ならびに信用リスク管理手法を十分に理解しておく必要があります。

管理者は、金融円滑化管理の観点から、信用リスク管理における債務者の実態把握や債務者に対する経営相談・経営指導等を通じた経営改善支援の重要性を踏まえて、信用リスク管理規程を策定しなければなりません。
なお、策定した信用リスク管理規程は、取締役会等の承認を要するものとされています。

策定した信用リスク管理規程は、「組織内」(信用リスク管理に関係する部署の役職員)に周知しなければなりません。

 

信用リスク管理規程の内容

【金融検査マニュアルのチェック項目】

信用リスク管理規程の内容は、業務の規模・特性及びリスク・プロファイルに応じ、信用リスクの管理に必要な取決めを網羅し、適切に規定されているか。
例えば、以下の項目について明確に記載される等、適切なものとなっているか。

・信用リスク管理部門の役割・責任(問題債権として管理が必要な債権の範囲及び問題先に対する取組方針を含む)及び組織に関する取決め
・信用リスク管理の管理対象とするリスクの特定に関する取決め
・信用リスク評価方法に関する取決め
・信用リスクのモニタリング方法に関する取決め
・取締役会等に報告する態勢に関する取決め

信用リスク管理規程の内容は、業務の規模・特性及びリスク・プロファイルに応じて、どのように信用リスク管理を行うか、必要とされる項目を網羅的に、かつ適切に規程する必要があります。

金融検査マニュアルには、信用リスク管理の基本的な項目が列挙されていますが、あくまでも例示であるため、自社に必要とされる内容については、どの程度詳細に規定するかも含めて、改めて検討する必要があります。

金融検査マニュアルのFAQによると「リスク評価手法とは、リスクの性質・傾向性、特性、大きさについて質的又は量的に分析し、損失の程度を判断する手法をさしています。」といわれています。
そのため、定量的な分析、損失の程度を判断する手法である「リスク計測手法」よりも広義の概念になります。
また、「モニタリング」は、監視することのみならず、警告その他の具体的な抑止行動を含みます。

 

管理者による組織体制の整備

【金融検査マニュアルのチェック項目】

(ⅰ)管理者は、信用リスク管理方針及び信用リスク管理規程に基づき、適切な信用リスク管理を行うため、信用リスク管理部門の態勢を整備し、牽制機能を発揮させるための施策を実施しているか。

(ⅱ)管理者は、統合的リスク管理に影響を与える態勢上の弱点・問題点等を把握した場合、統合的リスク管理部門へ速やかに報告する態勢を整備しているか。

(ⅲ)管理者は、統合的リスク管理方針等に定める新規商品等に関し、統合的リスク管理部門の要請を受けた場合、事前に内在する信用リスクを特定し、統合的リスク管理部門に報告する態勢を整備しているか。

(ⅳ)管理者は、業務の規模・特性及びリスク・プロファイルに見合った信頼度の高い信用リスク管理システムを整備しているか。

(ⅴ)管理者は、金融円滑化管理責任者と適切に連携し、新規融資や貸付条件の変更等の相談・申込みへの対応のうち、金融円滑化の趣旨に照らして、不適切又は不適切なおそれのあるものについて、適時適切に情報を収集し、金融円滑化管理責任者に報告する態勢を整備しているか。

(ⅵ)管理者は、信用リスク管理を実効的に行う能力を向上させるための研修・教育態勢を整備し、専門性を持った人材の育成を行っているか。

(ⅶ)管理者は、定期的に又は必要に応じて随時、取締役会等が設定した報告事項を報告する態勢を整備しているか。特に、経営に重大な影響を与える事案については、取締役会等に対し速やかに報告する態勢を整備しているか。

信用リスク管理部門は、機能的に次の3つの機能の部門を総称したものです。

  1. 審査部門
  2. 与信管理部門
  3. 問題債権管理部門

(ⅰ)では、信用リスク管理部門の管理者は、信用リスク管理部門の態勢整備、施策の実施を行う責務を負っていることを示しています。
(ⅱ)、(ⅲ)では、信用リスク管理部門と統合的リスク管理部門の連携、報告態勢について示されています。
(ⅳ)で示されている「信用リスク管理システム」の範囲は、信用リスク管理に用いられているコンピュータ・システムとして広く捉える必要があります。
なお、金融検査マニュアルの注釈では、「システムには、中央集中型の汎用機システムや分散系システムの他、EUC(エンド・ユーザ・コンピューティング)によるものも含まれることに留意する」とあります。

また、平成19年2月の改定の際のパブリック・コメントでは、次のようなコメントとそれに対する回答がされています。

信用リスク管理に関するシステムとしては、「与信に係る勘定系システム」、「信用格付の実施・管理システム」、「信用リスク量の算出・分析システム」、「信用リスク・アセットの算出システム」等が存在するが、ここでいう「信用リスク管理システム」とは具体的にどのようなシステムを指すのか。
→「信用リスク管理システム」とは、信用リスク管理に関するシステム全般を指しています。具体的にどのようなシステムであるかは、金融機関により異なりますが、全体として業務の規模・特性及びリスク・プロファイルに見合った信頼度の高いシステムを整備することが必要と考えます。

信用リスク管理は、一連のプロセスですから、パブリック・コメントにあるように各段階でことなるシステムが利用されていることが一般的だと思われます。
ここでは、そのような諸システムを総称して「信用リスク管理システム」と捉えなければなりません。

複数の管理システムを利用している場合には、各システムの守備範囲、受け渡しされるデータの整合性など、システム間の相互関係について注意することが必要です。

(ⅴ)では、管理者は、金融円滑化推進・管理の重要性に鑑み、金融円滑化管理責任者と適切に連携し、顧客からの新規融資や貸付条件の変更等の相談・申込みへの対応のうち、金融円滑化の趣旨に照らし不適切なもの等についての情報収集を行い、金融円滑化管理責任者に報告する態勢の整備が求められます。

 

信用リスク管理規程および組織体制の見直し

【金融検査マニュアルのチェック項目】

管理者は、継続的に信用リスク管理部門の職務の執行状況に関するモニタリングを実施しているか。
また、定期的に又は必要に応じて随時、信用リスク管理態勢の実効性を検証し、必要に応じて信用リスク管理規程及び組織体制の見直しを行い、又は取締役会等に対し改善のための提言を行っているか。

自ら所掌する部門の職務の執行状況について、継続的にモニタリングすることは、管理者として当然です。チェックリストで言及しているのは、管理者がモニタリングを怠っていたために何らかの問題が生じた場合には、当然の事ながら管理責任を問われるという意味合いと見ることができます。

「信用リスク管理態勢の実効性を検証する」という表現は、抽象的ですので、管理者として具体的に何をどのように行えば、「実効性を検証」したことになるのか、よく考えておく必要があります。

信用リスク管理態勢の実効性を改善させる手段として、「規程の見直し」、「組織体制の見直し」、「取締役会等への提言」が挙げられていますので、実効性を検証する際には、少なくとも、実効性を確保する観点から見て、規程に問題点・弱点・不明瞭な点はないか、組織体制に関してどうかというチェックを行う必要があります。

記事製作者

中小企業診断士 湯谷 一夫

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