償却・引当の内容(貸倒引当金)

金融検査では、「償却・引当金の適切性」と「償却・引当結果の正確性」を検証します。

【金融検査マニュアルのチェック項目】

  • 償却・引当基準の適切性の検証

    貸倒引当金は、少なくとも債権(貸出金及び貸出金に準ずる債権)を対象とし、発生の可能性が高い将来の損失額を合理的に見積り計上する。
    ただし、国、地方公共団体及び被管理金融機関に対する債権については、回収の危険性または価値の穀損の危険性がないものとして貸倒引当金の対象とはしないこととする。
    また、貸倒引当金の算定は、原則として債務者の信用リスクの程度等を勘案した信用格付に基づき自己査定を行い、自円否定結果に基づき償却・引当額の算定を行うなど、信用格付に基づく自己査定と償却・引当とを一員性をもって連動して行うことが基本である。

    プロジェクト・ファイナンスの債権は、当該債権の回収の危険性の度合いに応じて、 予想損失額を合理的に見積り計上する。
    資産等の流動化に係る債権については、当該スキームに内在するリスクを適切に勘案した上で、損失額を合理的に見積り計上する。

  • 償却・引当結果の正確性の検証

    貸倒引当金の算定に関する検証に当たっては、原則として信用格付を踏まえ、自己査定と償却・引当が一貫性をもって連動し、かつ、償却・引当基準に則って行われているかどうかを検証する。
    次に、被検査金融機関の信用リスクの程度に鑑み、貸倒引当金の総額が十分な水準となっているかを検証する。
    なお、合理的で適切な内部モデルにより信用リスクの計量化を行なっている場合には、貸倒引当金の総額と信用リスクの計量化等によって導き出されたボートフォリオ全体の予想貸倒損失額を比較し、その特性を踏まえた上で貸倒引当金総額の水準の十分性を確認しているか検証する。

    特に、プロジェクト・ファイナンスの債権に係る償却・引当の算定においては、貸倒実績がないことをもって、引当を行わない理由としていないかを検証する。

     

(注)上記の「被管理金融機関」とは、預金保険法附則第16条第2項の認定が行われた金融機関をいう。
(注)「金融検査マニュアル別冊[中小企業融資編]」の貸出債権を資本的劣後ローンへ転換した場合(デット・デット・スワップ)の債権に対する貸倒引当の算定方法については、「銀行等金融機関の保有する貸出債権が資本的劣後ローンに転換された場合の 会計処理に関する幣沓上の取扱い」(平成16年11月2日日本公認会計士協会)を参照。
また「自己査定」(別表1)1.(3)の(注)の十分な資本的’性質が認められる借入金 (「金融検査マニュアル別冊[中小企業融資編]」の資本的劣後ローン(准資本型)を含む)に対する貸倒引当金の算定方法については、その特性を勘案し、例えば時価を把握することが極めて困難と認められる株式の評価方法を踏まえて算出する等、 会計ルールに基づいた適切な引当を行うこととする。

貸倒引当金の算定に関する検証にあたっては、信用格付に基づく自己査定の結果に従って、償却・引当とを一貫性をもって連動して行われているか確認することが大原則になります。
発生の可能性が高い将来の損失額を見積もる償却・引当の算出プロセスは恣意的を排除した「合理的」なものとなっており、算出された償却・引当の総額は、信用リスクに見合った十分な水準でなければなりません。

本チェック項目のDDSに関わる注記については、金融検査マニュアル別冊「中小企業融資編」に記載のあるデット・デット・スワップの会計処理について、従来より「銀行等金融機関の保有する貸出債権が資本的劣後ローンに転換された場合の会計処理に関する監査上の取扱い」(平成16年11月日本公認会計士協会)を参照していましたが、この点を周知する観点から追加されています。

 

一般貸倒引当金

【金融検査マニュアルのチェック項目】

  • 償却・引当基準の適切性の検証

    一般貸倒引当金については、正常先に対する債権及び要注意先に対する債権について、原則として信用格付の区分、少なくとも債務者区分毎に、以下に掲げる方法により算定された過去の貸倒実績率又は倒産確率に基づき将来発生が見込まれる損失率 (予想損失率)を求め、原則として信用格付の区分、少なくとも債務者区分の債権額 に予想損失率を乗じて予想損失額を算定し、予想損失額に相当する額を貸倒引当金として計上する。

    一般貸倒引当金の算定に当たっては、信用格付別又は債務者区分別に遷移分析を用いて予想損失額を算定する方法が基本である。
    そのほか、被検査金融機関のポートフォリオの構成内容(債務者の業種別、債務者の地域別、債権の金額別、債務者の規模別、個人・法人別、商品の特性別、債権の保全状況別など)に応じて、一定のグループ別に予想損失額を算定する方法などにより、 被検査金融機関の債権の信用リスクの実態を踏まえ、一般貸倒引当金を算定することが望ましい。

    予想損失率は、経済状況の変化、融資方針の変更、ボートフォリオの構成の変化 (信用格付別、債務者の業種別、債務者の地域別、債権の金額別、債務者の規模別、債務者の個人・法人の別、債権の保全状況別等の構成の変化)等を畠酌の上、過去の 貸倒実績率又は倒産確率に将来の予測を踏まえた必要な修正を行い、決定する。

    特に、経済状況が急激に悪化している場合には、貸倒実績率又は倒産確率の算定期間の採用に当たり、直近の算定期間のウェイトを高める方法、最近の期間における貸倒実績率又は倒産確率の増加率を考慮し予想損失率を調整するなどの方法により、決定する。

    (一般貸倒引当金の算定方法)
    予想損失額を算定する方法
    予想損失額=債権額×予想損失率

    「予想損失率を算定する具体的な算定式の例』
     ①貸倒実績率による方法
      貸倒償却等毀損額÷債権額

     ②倒産確率(件数ベース)による方法
      倒産確率×(1-回収見込率)

    (注)「1ー回収見込率」を無担保比率、平均毀損割合とする方法がある。

    なお、要注意先に対する債権のうち、債権の元本の回収及び利息の受取に係るキャッシュ・フローを合理的に見積ることができる債権については、当該キャッシュ・フロー を当初の約定利子率で割り引いた金額と債権の帳簿価額との差額を貸倒引当金とする方法(以下、「DCF法」という。)がある。

正常先、要注意先に対する債権に係る一般貸倒引当金の算定については、個々の債権毎に貸倒見込み額を算出するのではなく、ここにあるように信用格付の区分ごとにグループ化を行い、その債権額に予想損失率を乗じて算出する「総括的に見積もる方法」によることとされています。

「予想損失率」は、過去の貸倒実績率又は倒産確立に基づいて算出することが基本です。
しかし、企業が倒産する確立は、景気動向の影響を強く受け、不況時には好景気の時の数倍、倒産の可能性が高まるため、単に過去の実績値を用いるのではなく、直近のデータウェイトを高めるなど、経済状況を合理的に勘案して決定する必要があります。

本チェック項目に関しては、「金融検査マニュアルに関するFAQ」の中で次のように説明されています。

金融検査マニュアルに関するFAQ

Q:別表2の償却・引当基準の適切性の検証欄に「商品の特性別」を追加したのはなぜです
  か。

A:簡易な審査手法で融資実行されている住宅ローンやビジネスローンといったものの中に
  は、その商品の特性により、デフォルト実績が他の商品と大きく異なっている場合もあ
  ります。そのような場合、商品の特性に着目した方がより適切な予想損失額を算定でき
  る場合もあることから、グループの一例として、住宅ローンやビジネスローンといった
  「商品の特性別」に着目することを追加しました。

【金融検査マニュアルのチェック項目】

  • 償却・引当結果の正確性の検証

    貸倒引当金については、正常先に対する債権及び要注意先に対する債権について、信用格付の区分又は債務者区分毎に、償却・引当基準に基づき予想損失額が合理的に見積られているかを検証する。

正常先、要注意先に対する債権に係る一般貸倒引当金は、信用格付の区分・債務者区分毎にグルーピングしたうえで、償却・引当基準に基づいて算出されているか検証を行います。
貸倒実績率または倒産確率に基づく貸倒引当金計上額の妥当性は、算出の前提となる次の項目をチェックします。

貸倒実績率又は倒産確率に基づく貸倒引当金計上額の妥当性の検証項目

    • 平均残存期間
    • 貸倒実績率又は倒産確立
    • 異常値控除
    • 貸倒実績率又は倒産確率の算定期間
    • 予想損失率
    • 前期以前の予想損失率

イ.貸倒実績率又は倒産確立に基づく貸倒引当金計上額の妥当性の検証

【金融検査マニュアルのチェック項目】

①平均残存期間等の検証
 平均残存期間に対する今後の一定期間における予想損失額を算定している場合には、平
 均残存期間が合理的なものであるかを検証する。
 具体的には、当座貸越に係る債権をどのように平均残存期間に反映させているか、約定
 期間が短期間ではあるものの、実質的には長期間固定化している債権をどのように平均
 残存期間に反映させているかなどを把握し、平均残存期間が合理的なものであるかを検
 証する。
 また、要注意先に対する債権を信用リスクの程度に応じて区分し、当該区分毎に今後の
 一定期間における予想損失額を算定している場合には、信用リスクの程度に応じた区分
 毎の今後の一定期間が合理的なものであるかを検証する。

平均残存期間の設定に関しては、特に、当座借越や長期固定化した短期貸付金(いわゆる短期ころがし)などのような不定期な期間の債権についてどのような算定を行うことが合理的なものか判断することがポイントになります。

 

【金融検査マニュアルのチェック項目】

②貸倒実績率又は倒産確立の検証
 貸倒実績率による方法を採用している場合は、貸倒損失額として、直接償却額、間接償却額、債権放棄額債権売却損額等の全ての損失額が反映されているかを検証する。
 倒産確率による方法を採用している場合は、倒産件数として、少なくとも実質破綻先及び破綻先となった全ての件数が反映されているかを検証する。
 倒産件数には、何らかの形で破綻懸念先となった件数を反映することが適当であり、例えば、破綻懸念先となった件数に倒産確率を乗じて算出した件数を倒産件数として反映させるなど、その方法が合理的なものであるかを検証する。
 なお、破綻懸念先となった件数を倒産件数に反映していない場合には、一般貸倒引当金の総額が被検査金融機関の信用リスクの程度に応じた十分な水準となっているか、前期以前の予想損失額の算定が十分な水準であったか、貸倒実績率に基づく予想損失額との比較が行われているかどうかについて十分に検証を行う。
 また、倒産確率の算定に当たって、信用格付別又は債務者区分別に遷移分析を行っている場合には、当該分析に合理的な根拠があるかを検証する。
 なお、倒産確率による方法を採用している場合において、大口の損失が発生したことにより、貸倒実績率による方法により算定した予想損失額が倒産確率による方法により算定した予想損失額を上回ると見込まれる場合には、貸倒実績率による方法により算定した予想損失額を貸倒引当金として計上することが望ましい。

金額ベースによる過去の貸倒実績率を採用している場合、貸倒損失額の集計に遺漏なく、関係する全ての損失額が的確に反映されていなければなりません。
件数ベースでの倒産確立による方法を採用している場合には、実質破綻先・破綻先の件数に加えて、破綻懸念先の件数をどのように反映させるか、その扱いがポイントになります。


【金融検査マニュアルのチェック項目】

③異常値控除の検証
 特定先に対する損失額又は倒産件数を異常値として、貸倒実績率又は倒産確率の算定の際に控除している場合には、控除することに合理的な根拠があるかを検証する。
 具体的には、貸倒実績率又は倒産確率の算定に当たっての債務者区分を正常先あるいは要注意先としていたものを、本来の債務者区分は破綻懸念先であったことを理由に、当該特定先に対する損失額又は倒産件数を異常値として控除している場合には、当該損失額又は倒産件数を破綻懸念先に対する債権の予想損失額の 算定に反映するなど、何らかの方法により貸倒引当金の算定に反映しているかを検証する。
 また、特定の業種又は地域に係る損失額又は倒産件数がその他の業種又は地域に係る損失額又は倒産件数に比べ、著しく相違していることを理由に、当該業種又は地域に係る損失額又は倒産件数を異常値として控除していないかを検証する。 この場合は、特定の業種又は地域に対する損失額又は倒産件数を異常値として控除することは適当ではなく、当該特定の業種又は地域毎にグルーピングを行い、 グループ毎の貸倒実績率又は倒産確率を算定し、これに基づき予想損失率を求め、 グループ毎の債権額に予想損失率を乗じて予想損失額を算定することが望ましい。

倒産実績率又は倒産確率の算定の際に、特定先にかかるデータを異常値として控除する場合には、合理的な根拠があるかどうかが問われることになります。異常値がどうかの判断は、そもそものグルーピングの仕方に問題がなかったかという点も含めて考える必要があります。


【金融検査マニュアルのチェック項目】

④貸倒実績率又は倒産確立の算定期間の検証
 予想損失額の算定に当たって、その算定期間が少なくとも過去3算定期間の貸倒実績率又は倒産確率に基づき、算定されているかを検証する。
 ただし、算定期間が過去3期間となっていない場合は、十分なデータの蓄積等がないとの理由など合理的な理由が存在するかを検証する。
 なお、この場合においては、データの蓄積等により過去3算定期間の貸倒実績率又は倒産確率を利用することが可能となる時期を把握するとともに、その間の予想損失額の算定方法が合理的なものとなっているかを検証する。

経済状況の変化を反映するとともに、実績値を安定化させるため、貸倒実績率又は倒産確立の算定機関は過去3期間と定められています。


【金融検査マニュアルのチェック項目】

⑤予想損失率の検証
 予想損失率を求めるに当たって、被検査金融機関が、経営環境を取り巻く経済状況の変化、融資方針の変更、ボートフォリオの構成の変化等をどのように把握しているかを検証する。
 また、経済状況の変化等による必要な修正を行っている場合は、被検査金融機関の経済状況の変化等の把握状況を踏まえ、修正を行うことについて合理的な根拠があるかを検証する。
 また、被検査金融機関が経済状況等の大きな変化を把握しているにも関わらず必要な修正を行っていない場合には、修正を行わないことについて合理的な根拠があるかを検証する。

予想損失率は、過去の倒産実績率又は倒産確立を元に修正した数値を用いることが認められていますが、この修正内容については合理的な根拠があることを説明できなければなりません。


【金融検査マニュアルのチェック項目】

⑥前期以前の予想損失額の検証
 前期以前の予想損失額について、その後の実際の貸倒実績又は倒産件数の実態と比較し、十分な水準であったかを検証する。検証の結果、予想損失額の水準が不十分であったと認められる場合には、前期以前の予想損失額の算定に当たり、前期以前の時点での将来の予測を踏まえた修正が適切であったかどうかなどその 原因を検証するとともに、基準日時点での予想損失率の修正が適切かを検証する。

前期以前の予想損失額の検証とは、過去において理論的に算出した予想損失額をその後の実際の倒産実績・倒産件数と比較して、予想損失額が妥当なものであったか検証を行うもの(バック・テスティング)です。
差異がある場合には、その原因を救命士、予想損失額の算出プロセスの改善を図ることが必要です。


【金融検査マニュアルのチェック項目】

ロ.DCF法に基づく貸倒引当金計上額の妥当性の検証
  債券の元本回収及び利息の受取に係るキャッシュ・フローを合理的に見積ることがで
  きる債権については、「銀行等金融機関において貸倒引当金の計上方法としてキャッ
  シュ・フロー見積法(DCF法)が採用されている場合の監査上の留意事項」 (平成15年
  2月24日日本公認会計士協会)に基づいて貸倒引当金が算定されているかを検証する。

DCF法は、将来予想される債権の元本及び利息の受取に係るキャッシュ・フローを当初約定利子率等で割り引いて現在価値を計算するものであり、不確実性を伴うことから、前提条件等について現時点での客観的な事実と最善の予測に基づいたものであることが求められます。

なお、DCF法による場合は、日本公認会計士協会の「銀行等金融機関において貸倒引当金の計上方法としてキャッシュ・フロー見積法(DCF法)が採用されている場合の監査上の留意事項」によるものとされています。

1.正常先に対する債権に係る貸倒引当金

【金融検査マニュアルのチェック項目】

  • 償却・引当基準の適切性の検証

    正常先に対する債権に係る貸倒引当金については、債権の平均残存期間に対応する今後の一定期間における予想損失額を見積ることが基本である。
    ただし、今後1年間の予想損失額を見積っていれば妥当なものと認められる。予想損失額の算定に当たっては、少なくとも過去3算定期間の貸倒実績率又は倒産確率の平均値(今後の一定期間に対応する過去の一定期間における累積の貸倒実績率又は倒産確率の3期間の平均値)に基づき過去の損失率の実績を算出し、これに将来の損失発生見込に係る必要な修正を行い、予想損失率を求め、正常先に対する債権額に予想損失率を乗じて算定する(今後1年間の予想損失額を算定する場合には、1 年間の貸倒実績率又は倒産確率の過去3算定期間の平均値に基づき算定することとなる。)。

  • 償却・引当結果の正確性の検証
    正常先に対する債権に係る貸倒引当金について、償却・引当基準に基づき、正常先に対する債権の係る平均残存期間に対応する今後の一定期間又は今後1年間の予想損失額が合理的に見積もられているかを検証する。
    なお、今後1年間の予想損失額を見積もっている場合には、平均残存期間に対応する今後の一定期間の合理性の検証を省略して差し支えない。

正常先に対する債権に対する貸倒引当金は、今後1年間の予想損失額を見積もっていれば足りるものとみなされている点がポイントになります。

2.要注意先に対する債権に係る貸倒引当金

【金融検査マニュアルのチェック項目】

  • 償却・引当基準の適切性の検証
    イ.貸倒実績率又は倒産確立に基づく方法
      要注意先に対する債権に係る貸倒引当金については、貸倒実績率又は倒産確率
     に基づく方法を用いる場合、債権の平均残存期間に対応する今後の一定期間にお
     ける予想損失額を見積ることが基本である。
      ただし、要注意先に対する債権を信用リスクの程度に応じて区分し、当該区分
     毎に合理的と認められる今後の一定期間における予想損失額を見積っていれば妥
     当なものと認められる。

      例えば、要管理先に対する債権について平均残存期間又は今後3年間の予想損
     失額を見積り、それ以外の先(以下、「その他要注意先」という。)に対する債権
     について平均残存期間又は今後1年間の予想損失額を見積っている場合は、通常
     妥当なものと認められる(下記口及びハを参照)。 予想損失額の算定に当たって
     は、少なくとも過去3算定期間の貸倒実績率又は倒産確率の平均値(今後の一定期
     間に対応する過去の一定期間における累積の貸倒実績率又は倒産確率の3期間の
     平均値)に基づき、過去の損失率の実績を算出し、これに将来の損失発生見込に
     係る必要な修正を行い、予想損失率を求め、要注意先に対する債権に予想損失率
     を乗じて算定する。

  • 償却・引当結果の正確性の検証
    イ.貸倒実績率又は倒産確立に基づく貸倒引当金計上額の妥当性の検証
      要注意先に対する債権に係る貸倒引当金について、償却・引当基準に基づき、
     要注意先に対する債権に係る平均残存期間に対応する今後の一定期間、又は要注
     意先に対する債権を信用リスクの程度に応じて区分し、当該区分毎に合理的と認
     められる今後の一定期間における予想損失額が合理的に見積られているかを検証
     する。
      また、信用リスクの程度に応じた区分毎に今後の一定期間における予想損失額
     を算定している場合には、予想損失額の算定が合理的なものであるかを検証す
     る。
      なお、要管理先に対する債権について今後3年間の予想損失額をそれ以外の先
     に対する債権について、今後1年間の予想損失額を見積もっている場合には、通
     常、平均残存期間に対応する今後の一定期間の合理性の検証を省略して差し支え
     ない。

(注)今後、要注意先債権に対する貸倒引当金に関する基準に係る告示を変更した場合には、所要の見直しを行うこととする。
(注)「要管理先に対する債権」とは、要管理先である債務者に対する全ての債権要管理債権でない債権を含む)をいう。以下同じ。

要注意先に対する債権に関しては、債権の平均残存期間に対応する予想損失額が見積もられているかどうかを検証します。
金融検査マニュアルでは、次の予想損失額を見積もっている場合には、一定期間の合理性の検証を省略することができる「セーフ・ハーバー・ルール」が設けられています。

【セーフ・ハーバー・ルール】

・要管理先に対する債権        →  今後3年間の予想損失額

・それ以外の要注意先に対する債権   →  今後1年間の予想損失額


【金融検査マニュアルにおけるチェック項目】

  • 償却・引当基準の適切性の検証
    ロ.要管理先の大口債権者に係る貸倒引当金の算定方法
    (イ)要管理先の大口債務者については、DCF法を適用することが望ましい。
       DCF法は債権単位で適用することが原則であるが、債務者単位で適用してい
      る場合であっても、合理性があると判断されれば妥当と認められる。
       なお、将来キャッシュ・フローを合理的に見積ることが困難なため、やむを
      得ずDCF法を適用できなかった債務者に対する債権については、個別的に残存
      期間を算定し、その残存期間に対応する今後の一定期間における予想損失額を
      見積ることが望ましい。
    (ロ)将来のキャッシュ・フローの見積り
       将来キャッシュ・フローの見積りは、銀行の最善の予測でなければならず、
      回収実績等、客観的根拠をベースに不確実性を適切に反映するなど慎重に決定
      し、毎期見直さなければならない。

(注) 「大口債務者」とは、当面、与信額が100億円以上の債務者をいう。以下同じ。
(注) 残存期間の算定方法の考え方については、「銀行等金融機関の正常先債権及び要注意先債権の貸倒実績率又は倒産確率に基づく貸倒引当金の計上における一定期間に関する検討」(平成15年2月24日日本公認会計士協会)を参照。

  • 償却・引当結果の正確性の検証
    ロ.要管理先の大口債務者に係る貸倒引当金の算定方法の検証
    (イ)DCF法を採用している場合には、債権の元本の回収及び利息の受取に係る

      キャッュ・フローを当初の約定利子率で割り引いた金額と債権の帳簿価格との
      差額について貸倒引当金が計上されているかを検証する。
       また、債務者単位で適用している場合は、合理性があるかを検証する。
       なお、DCF法を適用できなかった場合の個別的な残存期間の算定に当たって
      は、契約上の貸出期間から実態の貸出期間への調整を合理的な方法に基づいて
      行っているかを検証する。
    (ロ)将来キャッシュ・フローの見積りの検証
       将来キャッシュ・フローの見積りは、合理的で十分に達成が可能であると認
      められる前提、仮定及びシナリオに基づいた銀行等金融機関による最善の予測
      となっているかを検証する。将来キャッシュ・フローの見積り並びにその基礎
      となった前提仮定及びシナリオは、債務者に影響する諸般の事情を検討した上
      で、過去の回収実績等合理的かつ客観的な証拠に基づき慎重に決定されている
      かを検証する。
       また、将来キャッシュ・フローの見積り並びにその基礎となった前提仮定及
      びシナリオは、決算の都度見直されているかを検証する。貸倒引当金の計上額
      についてバック・テストを行い、最善の予測と将来の結果との乗離が生じた場
      合には、必要に応じ、将来キャッシュ・フローの見積り並びにその基礎となっ
      た前提仮定及びシナリオ等を含めた貸倒引当金の計上方法を見直しているかを
      検証する。
       さらに、将来キャッシュ・フローの見積りに関しては、不確実性を反映させ
      るため必要な調整を合理的かつ客観的な証拠に基づき行っているかを検証す
      る。この場合において、「必要な調整」には、例えば、内部で蓄積している信
      用格付別貸倒実績率・倒産確率・格付遷移分析等の情報を利用して調整する場
      合を含む。

     

要管理先の大口債務者に係る貸倒引当金の算定方法は、DCF法を適用することが望ましいとされています。DCF法を用いる場合には、将来キャッシュ・フローの見積もりが重要です。

平成14年10月に発表された「金融再生プログラム」において、新しい金融行政の枠組みの一環として、資産査定の厳格化が唱えられ、引当に関するDCF法的手法の採用(1)及び引当金算定における期間の見直し(2)が求められました。
これを踏まえて、金融検査マニュアルにおいても、要管理先債権及び破綻懸念先債権に関して、DCF方が選択肢として書き加えられ、「与信額が100億円以上の大口債務者については、DCF法の適用が望ましい」とされたものです。

(1) DCF法の考え方については、「銀行等金融機関において貸倒引当金の計上方法としてキャッシュ・フロー見積法 (DCF法)が採用されている場合の監査上の留意事項」(平成15年2月24日日本公認会計士協会)を参照。
(2)残存期間の算定方法の考え方については、「銀行等金融機関の正常先債権及び要注意先債権の貸倒実績率又は倒産 確率に基づく貸倒引当金の計上における一定期間に関する検討」(平成15年2月24日日本公認会計士協会)による。


【金融検査マニュアルのチェック項目】

  • 償却・引当基準の適切性の検証
    (ハ)割引率
       割引率は、債券の発生当初の約定利子率又は取得当初の実行利子率とする。
  • 償却・引当結果の正確性の検証
    (ハ)割引率の検証
       将来キャッシュ・フローを債権の貸出条件の緩和を実施する前に当該貸出金
      に適用されていた約定利子率、又は、取得当初の実効利子率で割り引いている
      かを検証する。

       なお、当初の約定利子率が、事後的に変動する金利に基づいて決定される場
      合においては、割引率を、貸出条件緩和直前の約定利子率に固定する方法、貸
      出条件緩和直前の利鞘と当該変動金利に基づいて決算日ごとに決定する方法な
      どがあるが、いずれの方法で割引率が決定されているとしても、それが継続し
      て適用されているかを検証する。

     

DCF法による場合、将来キャッシュ・フローを割り引いて現在価値を算出する際に用いられる割引率は、当初の約定利子率もしくは実行利子率を用いることとされています。


【金融検査マニュアルのチェック項目】

  • 償却・引当基準の適切性の検証
    (ニ)総額の適切性等
       DCF法に基づく貸倒引当金計上額が、要管理先の大口債務者の信用リスク
      の程度を十分に満たす必要がある。
       また、被検査金融機関のDCF法の適用及び貸倒引当金の決定は、合理的か
      つ客観的な証拠によって裏付けられなければならない。
  • 償却・引当結果の正確性の検証
    (ニ)総額の適切性の検証
       DCF法に基づく貸倒引当金計上額と過去の貸倒実績率又は倒産確率に基づ
      き今後の一定期間における予想損失額を見込む方法によって算定した金額とを
      比較する等により、貸倒引当金の水準の十分性や合理性について検証する。

DCF法により算定された貸倒引当金計上額が大口債務者の信用リスクの程度をカバーしているものと合理的に判断できるか、別の角度から検証することも必要です。


【金融検査マニュアルのチェック項目】

  • 償却・引当基準の適切性の検証
    ハ.要管理先又は破綻懸念先からその他要注意先に上位遷移した大口債務者に係る
     貸倒引当金の算定方法前期以前に要管理先又は破綻懸念先としてDCF法又は個別
     的な残存期間を算定する方法により貸倒引当金を算定していた大口債務者が、そ
     の他要注意先に上位遷移した場合原則として経営改善計画等の期間内は、DCF法
     又は上記イに掲げる要管理先に対する債権に係る貸倒引当金の算定方法(平均残
     存期間に対応する今後の一定期間における予想損失額又は今後3年間の予想損失
     額を見積る方法)を適用することが望ましい。

要管理先、破綻懸念先からその他要注意先にランクアップ(上位へ遷移)した債務者に係る貸倒引当金の算定方法について、経営改善計画等の期間内はDCF法、又は要管理先に対する債券に係る貸倒引当金算出方法によることが望ましいものとされます。

 

個別貸倒引当金及び直接償却

【金融検査マニュアルのチェック項目】

  • 償却・引当基準の適切性の検証

    個別貸倒引当金及び直接償却については、破綻懸念先、実質破綻先及び破綻先に対する債権について、原則として個別債務者毎に予想損失額を算定し、予想損失額に相当する額を貸倒引当金として計上するか又は直接償却を行う。
    また、個別貸倒引当金は、毎期必要額の算定を行う。
    なお、破綻懸念先に対する債権のうち、債権の元本の回収及び利息の受取に係るキャッシュ・フローを合理的に見積ることができる債権については、貸倒引当金の計上方法としてDCF法がある。

  • 償却・引当結果の正確性の検証

    個別貸倒引当金及び直接償却については、償却・引当基準に基づき、破綻懸念先、実質破綻先及び破綻先に対する債権について、原則として個別債務者毎に予想損失額を算定し、予想損失額に相当する額を貸倒引当金として計上するか又は直接償却を行っているかを検証する。
    キャッシュ・フローの合理的な見積りについては、要注意先に対する債権に準じて行っているかを検証する。

債務者区分が破綻懸念先、実質破綻先、破綻先となる債務者に対する債権については、原則として個別債務者毎に予想損失額を算定し、これに相当する額を個別貸倒引当金に計上するか、もしくは直接償却を行うことになります。

1.破綻懸念先に対する債権に係る貸倒引当金

【金融検査マニュアルのチェック項目】

  • 償却・引当基準の適切性の検証

    破綻懸念先に対する債権に係る引当金については、原則として個別債務者毎に破綻懸念先に対する債権の合理的と認められる今後の一定期間における予想損失額を見積り、予想損失額に相当する額を貸倒引当金として計上する。通常、今後3年間の予想損失額を見積っていれば妥当なものと認められる。 なお、大口債務者については、DCF法を適用することが望ましい。

  • 償却・引当結果の正確性の検証

    綻懸念先に対する債権に係る個別貸倒引当金については、破綻懸念先に対する債権の今後の一定期間における予想損失額が合理的に見積られているかを検証する。具体的には、以下に掲げる項目について検証を行うとともに、一般担保の担保評価額と処分可能見込額との差額を含めⅢ分類とされた債権額全額を対象としているかを検証する。

破綻懸念先に対する債権に対しては、個別債務者毎に今後の一定期間(もしくは、セーフ・ハーバー・ルールとして3年間)における予想損失額を個別貸倒引当金として計上します。
破綻懸念先である大口債務者については、DCF法の適用が望まれます。


【金融検査マニュアルのチェック項目】

  • 償却・引当基準の適切性の検証
    「破綻懸念先に対する債権の予想損失額の算定方法の例」
    イ.Ⅲ分類とされた債権額に予想損失率を乗じた額を予想損失額とする方法(合理的に
      見積られたキャッシュ・フローにより回収可能な部分を除いた残額を予想損失額
      とする方法を含む。)
      上記イの方法により算定を行う場合においては、原則として信用格付の区分、少
     なくとも破綻懸念先とされた債務者の区分毎に、過去の貸倒実績率又は倒産確率に
     基づき将来発生が見込まれる損失率(予想損失率)を求め、原則として個別債務者の
     債権のうちⅢ分類とされた額に予想損失率を乗じて予想損失額を算定し、予想損失
     額に相当する額を貸倒引当金として計上する。

      予想損失率は、原則として個別債務者毎に、経済状況の変化、当該債務者の業種
     等の今後の業況見込み、当該債務者の営業地区における地域経済の状況等を掛酌の
     上、過去の貸倒実績率又は倒産確率に将来の予測を踏まえた必要な修正を行い、決
     定する。
      予想損失額の算定に当たっては、少なくとも過去3算定期間の貸倒実績率又は倒
     産確率の平均値(今後の一定期間に対応する過去の期間における累積の貸倒実績率又
     は倒産確率の3期間の平均値)に基づき、過去の損失率の実績を算出し、これに将来
     の損失発生見込に係る必要な修正を行い、予想損失率を求め、Ⅲ分類とされた債権
     に予想損失率を乗じて算定する。
      なお、債務者区分が破綻懸念先とされた債務者数が相当数に上り、個別債務者毎
     に担保等による保全の状況等を勘案のうえ償却・引当額を算定することが困難であ
     ると認められる金融機関にあっては、一定金額以下の破綻懸念先に対する債権につ
     いて、グループ毎に同一の予想損失率を適用し、予想損失額に相当する額を貸倒引
     当金として計上することができるものとする。この場合、グループ毎に予想損失率
     を適用する一定金額以下の破綻懸念先に対する債権の範囲は、被検査金融機関の資
     産規模及び資産内容に応じた合理的な範囲に止め、予想損失率の算定は厳格かつ明
     確である必要がある。

Ⅲ分類とされた債権について、「債権額×予想損失率=予想損失額」により算出する場合の償却・引当基準の適切性に係る検証項目が示されています。
原則として個別債権者毎に予想損失額を算出しますが、一定の要件を満たす場合には、例外的にグループ毎の予想損失額算出が認められています。


【金融検査マニュアルのチェック項目】

  • 償却・引当結果の正確性の検証
    イ.Ⅲ分類額に予想損失率を乗じた額を予想損失額として貸倒引当金として計上する方法の場合
    (イ)今後の一定期間の検証
       予想損失額を見積る今後の一定期間が合理的なものであるかを検証する。
       ただし、今後3年間の損失見込額を見積もっている場合には、通常、検証を
       省略して差し支えないものとする。
    (ロ)貸倒実績率又は倒産確立の検証
       貸倒実績率による方法を採用している場合は、貸倒損失額として、直接償却
       額、間接償却額、債権放棄額、債権売却損額等の全ての損失額(破綻懸念先に

       対する債権に係る損失額を除く。)が反映されているかを検証する。倒産確率
       による方法を採用している場合は、倒産件数として、実質破綻先及び破綻先
       となった全ての件数が反映されているかを検証する。
    (ハ)異常値控除の検証
       特定先に対する損失額又は倒産件数を異常値として、貸倒実績率又は倒産確
       率の算定の際に控除している場合には、控除することに合理的な根拠がある
       かを検証する。
    (ニ)貸倒実績率又は倒産確立の算定期間の検証
       予想損失額の算定に当たって、その算定期間が少なくとも過去3算定期間の
       貸倒実績率又は倒産確率に基づき、算定されているかを検証する。
       ただし、算定期間が過去3期間となっていない場合は、十分なデータの蓄積
       等がないとの理由など合理的な理由が存在するかを検証する。
       なお、この場合においては、 データの蓄積等により過去3算定期間の貸倒実
       績率又は倒産確率を利用することが可能となる時期を把握するとともに、そ
       の間の予想損失額の算定方法が合理的なものとなっているかを検証する。
    (ホ)予想損失率の検証
       予想損失率を求めるに当たって、被検査金融機関が経済状況の変化、当該債
       務者の業種等の今後の見込み、当該債務者の営業地区における地域経済の状
       況等をどのように把握しているかを検証する。
       なお、被検査金融機関が経済状況等の大きな変化を把握しているにも関わら
       ず個別債務者毎に必要な修正を行っていない場合には、修正を行わないこと
       について合理的な根拠があるかを検証する。
    (ヘ)前期以前の予想損失額の検証
       個別債務者毎の前期以前の予想損失額について、個別債務者に係るその後の
       実際の貸倒実績又は倒産の実態と比較し、十分な水準であったかを検証す
       る。検証の結果、予想損失額の水準が不十分であったと認められる場合に
       は、前期以前の予想損失額の算定に当たり、前期以前の時点での将来の予測
       を踏まえた修正が適切であったかどうかなどその原因を検証するとともに、
       基準日時点での予想損失率の修正が適切かを検証する。
    (ト)キャッシュ・フローによる回収額等検証
       個別債務者毎にⅢ分類額からキャッシュ・フローによる回収可能額を控除し
       ている場合には、キャッシュ・フローの見積りが合理的なものとなっている
       かを検証するとともに、Ⅲ分類額のうち当該回収可能額を除いた残額を予想
       損失額としているかを検証する。
       なお、破綻懸念先とされた債務者数が多く、一定金額以下の破綻懸念先に対
       する債権について、個別債務者毎に担保等による保全の状況等を勘案するこ
       とを省略し、グループ毎に予想損失率を求め、予想損失額を算定している場
       合には、グループ毎の予想損失額の算定が合理的であるかを検証する。
       この場合、一定金額以下の破綻懸念先に対する債権を一つのグループとして
       予想損失額を算定して差し支えないものとする。
       なお、一定金額以下の破綻懸念先に対する債権の範囲が合理的な範囲となっ
       ているかを検証する。

(注)「キャッシュ・フローによる回収額」とは、個別債務者毎に、当期利益に減価償却費など非資金項目を調整した金額により原則として今後3年間、経営改善計画等が策定されている場合は今後5年間で回収が確実と見込まれる部分をいう。

Ⅲ分類とされた債権について、「債権額×予想損失率=予想損失額」にて算出する場合、償却・引当確認の正確性の検証として、次の7つの各要素について検証を実施します。

  • 今後の一定期間
  • 貸倒実績率又は倒産確率
  • 異常値控除
  • 貸倒実績率又は倒産確立の算定期間
  • 予想損失率
  • 前期以前の予想損失額
  • キャッシュ・フローによる回収額等

正常先、要注意先の債権に対する予想損失額の算出の場合と比較すると、「キャッシュ・フロー回収額」が追加されている点が着目されます。


【金融検査マニュアルのチェック項目】

  • 償却・引当基準の適切性の検証
    ロ.売却可能な市場を有する債権について、合理的に算定された当該債権の売却可
      能額を回収見込額とし、債権額から回収見込額を控除した残額を予想損失額と
      する方法
  • 償却・引当結果の正確性の検証
    ロ.Ⅲ分類から却可能額を控除した残額を予想損失額として貸倒引当金として計上
      する方法の場合
      売却可能な市場を有する債権について、当該債権の売却可能額を回収見込額と
      し、債権額から回収見込額を控除した残額を予想損失額としている場合には、
      当該債権の売却可能額の算定が合理的なものであるかどうかを検証するととも
      に、Ⅲ分類額のうち当該回収可能額を除いた残額を予想損失額としているかを
      検証する。

市場で売却することが可能な債権については、売却可能額を回収見込額として控除し、その残額を予想損失額とすることができます。
この場合には、売却可能額の算定が合理的なものかどうかがポイントになります。


【金融検査マニュアルのチェック項目】

  • 償却・引当基準の適切性の検証
    ハ.DCF法
  • 償却・引当結果の正確性の検証
    ハ.DCF法に基づき貸倒引当金を計上する場合
      要注意先に対する債権のうちDCF法に基づき貸倒引当金を計上する方法
      (上記(1)②ロ.(イ)〜(ニ))に準じて算定しているかを検証する。
      ただし、キャッシュ・フローの見込期間については、原則として、経営改善計
      画等に基づきキャッシュ・フローを合理的に見積ることが可能な場合には5年
      程度、それ以外の場合は3年程度としているかを検証する。

破綻懸念先に対する債権についてDCF法に基づいて貸倒引当金を計上する場合には、要注意先に対する債権にDCF法を用いる場合に準じた検証を行うことになります。

2.実質破綻先及び破綻先に対する債権に係る個別貸倒引当金及び直接償却

【金融検査マニュアルのチェック項目】

  • 償却・引当基準の適切性の検証

    実質破綻先及び破綻先に対する債権については、個別債務者毎にⅢ分類及びⅣ分類 とされた債権額全額を予想損失額として、予想損失額に相当する額を貸倒引当金として計上するか、直接償却する。

  • 償却・引当結果の正確性の検証

    質破綻先及び破綻先に対する債権について、償却・引当基準に基づき、Ⅲ分類及びⅣ分類とされた債権額を予想損失額として、貸倒引当金として計上するか又は直接償却しているかを検証する。
    なお、Ⅲ分類及びⅣ分類とされた債権額全額を予想損失額としているか、回収が確実と見込まれる部分を全てⅡ分類とし、Ⅲ分類とされた額からさらに回収見込額を控除していないかを検証する。

     

実質破綻先ならびに破綻先に対する債権についての償却・引当に係る検証のポイントを示しています。
実質破綻先、破綻先に対する債権は、個別債務者毎にⅢ分類及びⅣ分類とされた債権額を予想損失額として、これに相当する額を貸倒れ引当金として計上、または直接償却しなければなりません。

3.特定海外債権引当勘定

【金融検査マニュアルのチェック項目】

  • 償却・引当基準の適切性の検証

    特定海外債権引当勘定については、特定国の財政状況、経済状況、外貨繰りの状況等に応じて対象となる国が決定され、当該国の外国政府等、外国の民間企業及び海外の日系企業等に対する債権のうち特定海外債権引当勘定の対象となる債権が明確である必要がある。
    また、対象となる債権に、特定国の財政状況、経済状況、外貨繰り等を起因とする将来発生が見込まれる予想損失率を乗じた額を予想損失額とし、当該予想損失額に相当する額を特定海外債権引当勘定に計上する。

  • 償却・引当結果の正確性の検証

    特定海外債権引当勘定については、対象国、対象債権、予想損失率及び予想損失額の算定方法が合理的なものであるかを検証する。特に予想損失率の算定方法は、債権売買市場における特定国の債権の売却可能額、信用格付業者による当該国の格付等を斟酌し、合理的なものとなっているかを検証する。特定海外債権引当勘定は、預金担保や対象国以外に居住する者による保証及び保険で保全されている等により回収が可能と見込まれる債権、現地通貨建債権、ストラクチャー上、トランスファーリスクが回避されている債権を除いた債権に、特定国の財政状況、経済状況、外貨繰り等を起因とする将来発生が見込まれる予想損失率を乗じた予想損失額として計上しているかを検証する。
    具体的には、正常先に対する債権及び要注意先に対する債権のうち、特定海外債権引当勘定の対象となるものについて、一般貸倒引当金に加え、対象国の財政状況等による予想損失率を債権額に乗じた予想損失額を引当金として計上しているかを検証する。
    また、破綻懸念先、実質破綻先及び破綻先に対する債権のうち、特定海外債権引当勘定の対象となるものについて、個別債務者毎の財務状況等による予想損失額に加え、当該債務者の債権のうち当該予想損失額を除いた部分に対象国の財政状況等による予想損失率を乗じた予想損失額を特定海外債権当勘定又は個別貸倒引当金に計上しているかを検証する。

平成11年4月、カントリー・リスクの評価基準の整備とその評価に基づく適切な引当金の計上が事務ガイドラインに明記されたことから、特定海外債権引当勘定に関する取決めが日本公認会計士協会の「実務指針」(銀行等監査特別委員会報告4号)に盛り込まれています。

4.貸倒引当金の総額の適切性の検証

【金融検査マニュアルのチェック項目】

  • 償却・引当結果の正確性の検証

    倒引当金の総額が被検査金融機関の信用リスクの程度に応じた十分な水準となっているかを検証する。

(注)貸倒引当金の総額に関する基準は、今後、償却・引当に関する告示を変更した場合には、所要の見直しを行うこととする。

貸倒引当金の総額は、平均的にその発生が見込まれる信用リスクとしてE L (Expected Loss)に対して十分な水準となっている必要があります。

記事製作者

中小企業診断士 湯谷 一夫

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