主要な監査手続のポイント(分析的手続・その他の監査手続)

内部監査で用いられる主要な手続のうち、特に重要な次の監査手続のポイントをご紹介します。

  • ヒアリング(質問・確認)
  • 通査・査閲
  • ウォークスルー(視察)
  • 分析的手続

分析的手続

財務に関連する情報の相互の関連性や財務情報との非財務情報との関連性を調査し、情報同士の整合性が取れているか、矛盾するところや異常なところがないか等を確かめる監査手続です。

分析的手続の意義

分析的手続は、内部監査でも会計監査と同様にかなり重要視される監査手続であり、監査の過程で収集した情報を能率的かつ効果的に評価するための手段といえます。
分析的手続は、問題点を明らかにしますが、特に次のようなことを確認するのに役立ちます。

  • 予想されない差異
  • 予想されているにもかかわらず差異がない場合
  • 潜在的な誤謬(ごびゅう)
  • 潜在的な異常や違法行為
  • その他の通常でないあるいは、繰り返されない取引や事象

分析的手続は、金額、数量、比較、百分率を用いて行うことになります。場合によって、比率分析、趨勢(すうせい)分析(成長率や伸び率等の分析のこと)、回帰分析、合理性テスト、期間比較、予算・予測や外部の経済情報との比較等を行います。分析手続の具体的な適用としては、次のものが挙げられます。

【分析的手続の具体的な適用例】

  • 当期の情報と前期の類似情報との比較
  • 当期の情報と予算又は予測との比較
  • 財務的な情報と適切な非財務情報との関連の調査
    (例えば、記録された給与支出を平均従業員数の変化と比較する)
  • 情報の要素間での関連の調査
    (例えば、記録された支払利息の変動と関連する負債総額の変化)
  • 他の組織体の類似情報との比較
  • 業界の類似情報との比較

分析的手続を用いるに当たって注意すべき点は、分析結果はこうなるものであろうというような仮説をもって、その妥当性を判断できるだけの知識と経験が必要になることです。
例えば、人件費について、1人当たりの給与が700万円との情報を人事部門から入手したとします。帳簿に記録されている人件費総額を平均従業員数で割った結果は、700万円になるはずだ。という前提で分析的手続を実施し、分析結果が500万円だった場合には、分析方法の再検討も含めた追加の監査手続を実施してその結果の妥当性を判断することが必要になります。

分析的手続の実施局面

分析的手続は、内部監査の様々な局面で実施することになります。
さらに、被監査部門における管理プロセスに組み込むことも考えられます。
例えば、次のような場面で実施します。

監査実施計画の立案時

分析的手続は、内部監査の担当者が個別の状況に照らしてどのような監査手続を実施する必要があるかを把握するために実施されます。
例えば、金融機関全体の日計表、営業店ごとの日計表、子会社等の財務情報を用いて、金融機関、営業店又は子会社等として重要な項目、リスクのある項目は何か、それは内部監査の対象とするべき項目か、等を判断するための1つの材料として使用するために実施します。
したがって、有効かつ効率的な内部監査を実施するために分析的手続を必ず実施します。

内部監査の実施時

監査結果を裏付けるために情報を検証し、評価する過程において、分析的手続を用いることが望まれます。
分析的手続を用いる程度を決定する際には、次のような要素を考慮します。これらの要素を考慮して評価した後、内部監査の担当者は、監査目標を達成するために必要に応じて追加的な監査手続を検討し、実施します。

  • 検証対象領域の重要性
    (例)人件費が金融機関又は営業店・子会社等の経営上、監査上重要な項目であるかどうか
  • 内部統制システムの妥当性
    (例)人件費に関して人事部門と経理部門の内部統制システムに問題はないかどうか
  • 財務情報、非財務情報の入手可能性、信頼性
    (例)人事部門から1人当たり給与、平均従業員数の情報が入手できるか、入手できた場合にそれが信頼しうるものかどうか
  • 分析的手続により推測される結果の精度
    (例)分析結果である1人当たり人件費の計算方法は妥当なものかどうか、嘱託・臨時従業員の扱いをどうするか
  • 業界情報の入手可能性と比較可能性
    (例)業界での1人当たり人件費の情報が入手できるかどうか、入手できた場合に単純に比較してよい情報かどうか
  • 監査結果を裏付けるための監査手続実施の程度
    (例)個々の従業員について、給与明細等を入手して監査手続を実施する必要があるかどうか、分析的手続以外の監査手続を省略してもよいかどうか

被監査部門における活用

分析的手続のアプローチを被監査部門等における日常の各種検証に取り入れることは、管理プロセスの強化に役立ちます。
なので、内部監査において現状の管理態勢に不具合を発見した場合、改善提案の内容として被監査部門の管理プロセスに分析的手続を追加することを提案することも考えられます。

その他の監査手続

必要に応じて適宜実施するその他監査手続として、「リパフォーマンス」があります。
リパフォーマンスには、「突合・照合」、「リコンシリエーション」、「計算チェック」等があります。
これらは、それぞれ独立した監査手続として扱われる場合もあります。
リパフォーマンスは、主に定量的な検証を要する内部監査で用いられます。

突合・照合

各種資料の内容と関係する資料を照らし合わせて、合うべきデータが合っているかを確認する監査手続です。
例えば、総勘定元帳と補助元帳の残高が合っているか照らし合わせたり、補助元帳と別途作成した資料のデータが合っているかを照らし合わせたりすることです。

リコンシリエーション

突合・照合の延長線にある監査手続で、突合・照合の結果、差異が生じているものについて、差異の原因分析を行うことが含まれます。
また、被監査部門等が実施していない作業も含まれます。
例えば、人事部門で作成された人件費に関する資料と補助元帳との間で不一致が生じていることが判明した場合、その差異について、人事部門や経理部門にヒアリングを行ったり、追加資料の提出を求めたりして、差異の内容を明らかにして差異の妥当性を判断します。

リコンシリエーションは、内部統制のプロセスの1つでもありますが、内部監査で実施するリコンシリエーションは、必ずしも被監査部門で実施されているリコンシリエーションにとどまる必要はありません。

計算チェック

検算をする監査手続です。
入手した情報について、集計が合っているか、タテ・ヨコの計算があっているかを内部監査の担当者が実際に計算して確かめます。コンピュータで自動集計された記録をエクセル等にダウンロードする方法や内部監査の担当者が作成したプログラムで自動集計の結果が正確かどうか確かめる方法もあります。

記事製作者

中小企業診断士 湯谷 一夫

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