監査の実施

監査役は、積極的に法令で定められた監査の職務を行わなければなりません。

監査方針及び監査計画の策定

【金融検査マニュアルにおけるチェック項目】

監査役は、取締役が適切な内部管理態勢を整備し適切に連用しているかを監視し検証する観点から、監査すべき事項を特定し、監査方針及び監査計画を策定しているか。

内部管理態勢、すなわち内部統制の整備は、取締役の善管注意義務の内容を構成するものととらえられていますので、その構築・運用状況は、監査役監査の対象となります。

(社)日本監査役協会の監査役監査基準では、監査役の職務の一つとして、「監査役は、取締役が、内部統制システムを適切に構築、運用しているかを監視し検証する」ことが挙げられています。(監査役監査基準18条2項2号)。

したがって、監査役は、このような状況を踏まえた監査事項の特定監査方針及び監査計画の策定を行う必要があります。

 

監査の実効的実施

【金融検査マニュアルにおけるチェック項目】

監査役及び監査役会は、付与された広範な権限を適切に行使し、会計監査に加え、業務に関する監査を実効的に実施しているか。監査役会が設けられている場合であっても、各監査役は、あくまでも独任制の機関として、自己の責任に基づき積極的な監査を実施しているか。

わが国の監査役は、独任制の機関であり、単独でその権限を行使できる特徴を持っています。
監査役会は、監査の職務の執行に関する一定の事項について、決議できますが、監査役の権限を行使を妨げることはできません。

会社法における監査役監査は、会計監査を含む業務監査を行うことを本則として会社法381条1項で規定し、例外的に公開会社でない株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く)では定款の定めにより会計監査に限定できるものとしています(会社法389条1項)。金融機関は、銀行法により監査役会設置会社もしくは委員会設置会社でなければなりませんので(銀行法4条の2)、金融機関の監査役は会計監査を含む業務監査を実施することになります。

 

子会社に対する調査

【金融検査マニュアルにおけるチェック項目】

監査役は、取締役による企業集団の業務の健全性確保のための職務執行状況を監査する観点から、企業集団内において適切な内部管理態勢が整備されているかに留意し、子会社の経営管理態勢及び内部管理態勢の状況等について、必要に応じて調査等を行っているか。

会社法の定めにより、取締役会が決議すべき業務適正を確保すべき体制の一つとして、「当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適性を確保するための体制」が挙げられています(会社法362条4項6号、会社法施行規則100条1項5号)。
このことを踏まえて、監査役は、その職務を行うため必要があるときは、監査役設置会社の子会社に対して事業の報告を求め、またはその子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができます。(監査役の子会社調査権、会社法381条3項)。
ただし、子会社に正当な理由があるときは、子会社は報告又は調査を拒むことができるものとされています(同条4項)。

 

取締役会等への出席等

【金融検査マニュアルにおけるチェック項目】

監査役は、取締役会に出席し、必要に応じ意見を述べるなど、取締役の職務執行状況について適切に監査を行っているか。
また、監査役は、必要に応じ、取締役会以外の取締役会等に出席し意見を述べる等、適切な監査のための権限行使を行っているか。

会社法383条では、「監査役は、取締役会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない」として、監査役に取締役会への出席義務があることを規定しています。
本チェックリストでは、会社法の定めに加えて、経営会議、常務会などの重要会議(取締役会以外の取締役会等)にも、必要に応じて出席して意見を述べることが監査役に対して求められています。

 

外部専門家の活用

【金融検査マニュアルにおけるチェック項目】

監査役及び監査役会は、その機能発揮の補完のために、必要に応じ、弁護士・公認会計士等の外部の専門家を活用しているか。

監査役会は、会計監査人からの報告を受領する権限を有しています。
これは、会計監査人がその職務を行うに際して、取締役の職務遂行に関し、不正行為または法令もしくは定款に違反する重大な事実があることを発見したときは、その会計監査人は、これを監査役会に報告しなければなりません。
また、監査役会は、会計監査人に対する報告請求権を持っています。これは、監査役と会計監査人との連携、協力によって情報収集力を強化することを目的としています。

監査役としての機能を発揮するためには、専門知識を要する場合もあり、弁護士等の専門家を活用することも必要です。ここでいう外部の専門家は、弁護士に限定されるものではなく、コンサルタント会社や各種のアドバイザーも含まれます。
ただし、金融や各種業務に精通した専門家であることが必須の要件であると言えるでしょう。

 

会計監査結果についての検証

【金融検査マニュアルにおけるチェック項目】

監査役及び監査役会は、会計監査人による会計監査のプロセス及び監査結果が相当なものであるか否かをチェックし、場合によっては、会計監査人の交代等について適切に提言する等の措置を講じているか。

監査役会は、外部監査を行っている会計監査人の監査の方法と結果とが適正かどうかを判断しなくてはなりません。
したがって、監査役として、会計監査人の監査の方法と結果について、常にその相当性について、明確な判断を下し、意見を述べうるような調査をし、情報を入手していなければならないのです。
判断の結果、相当性に看過しがたい問題がある場合には、会計監査人の交代等を含めて是正策を講じる必要があります。

会社法では、監査役会は、取締役が会計監査人を選任・解任・再任しないことについて同意もしくは、請求を行うことができる旨、規定されています(会社法344条)。

 

違法行為等の阻止等

【金融検査マニュアルにおけるチェック項目】

監査役は、取締役が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は法令若しくは定款に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく取締役会に報告しているか。
また、監査役が、取締役の法令・定款違反行為により当該金融機関に著しい損害が生ずるおそれがあると認めるときは、当該行為を阻止するため、適切な措置を講じているか。

監査役は、取締役の違法行為や定款違反行為をチェックする責任を負っています。
すなわち、会社法385条1項において、「監査役は、取締役が監査役設置会社の目的の範囲外の行為その他法令もしくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をする恐れがある場合において、当該行為によって当該監査役設置会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができる」と規定されています。

 

社外監査役

【金融検査マニュアルにおけるチェック項目】

社外監査役は、自らの立場を活かしつつ、監査機能を十分発揮しているか。特に非常勤社外監査役の場合には、監査機能の発揮のため、常勤監査役との意思疎通・連携等を十分に図っているか。

社外監査役は、社外の人間として、当該金融機関としがらみなく、客観的・中立的な立場で当該金融機関の内部管理状況を検証できるメリットがあります。
そうした立場を十分に活かしつつ、適切な監査が行われることを期待しているわけです。社外監査役は、監査体制の独立性及び中立性を一層高めるために法令上の選任が義務づけられていますが、社内情報の収集の点では常勤監査役に比べてハンディキャップを負っていますので、相互の意思疎通・連携を図ることが重要です。

会社法によると「監査役会設置会社においては、監査役は、3人以上で、その内半数以上は、社外監査役でなければならない」と規定されています(会社法335条3項)。
この社外監査役とは、「株式会社の監査役であって、過去に当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)若しくは執行役又は支配人その他の使用人となったことがないものをいう」と定義されています(会社法2条16号)。

記事製作者

中小企業診断士 湯谷 一夫

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