監査役の監査環境の整備

法律に定められた監査役監査が適切に行われる環境を整備することは、会社法上、監査役のみならず、取締役会の責務とされています。

金融検査マニュアルは、原則として、会社法上の監査役(会)設置会社である銀行を念頭に記述されています。
委員会設置会社である金融機関や協同組織金融機関では、監査委員会あるいは、監事・監事会に与えられた権限と責任に応じた対応となります。

監査環境の整備

【金融検査マニュアルにおけるチェック項目】

監査役は、その職務を適切に遂行するため、取締役、会計監査人、 内部監査部門、コンブライアンス統括部門の管理者、子会社の取締役等との間の緊密な連携を図り、定期的な報告を求める等、情報の収集及び監査の環境の整備に努めているか。

監査役は、取締役の職務の執行を監査するとされています(会社法381条1項)。そのために必要とされる情報収集、監査環境の整備を図る必要があります。
会社法施行規則105条2項では、監査役は、その職務を適切に遂行するため、取締役等との意思疎通を図り、情報の収集及び監査の環境の整備に努めなければならないことが規定されています。

 

監査役会の機能

【金融検査マニュアルにおけるチェック項目】

監査役会を設置している場合、監査役会は、各監査役の権限行使を妨げない限度において、監査役や他の関係者から監査に関する重要な事項について報告を受け、協議及び決議を行っているか。

会社法では、大会社(公開会社でないもの、及び委員会設置会社を除く)は、監査役会及び会計監査人を置かなければならないものと規定しています(会社法328条1項)。
監査役会は、全ての監査役で組織され、次の事項の決定の職務を行います。

  1. 監査報告の作成
  2. 常勤の監査役の選定及び解職
  3. 監査の方針、監査役会設置会社の業務及び財産の状況の調査の方法その他の監査役の職務の執行

ただし、3.の決定は、監査役の権限の行使を妨げることはできないものとされています(会社法390条1項、2項)。
また、監査役は、監査役会の求めがあるときは、いつでもその職務の執行の状況を監査役会に報告しなければなりません(会社法390条4項)。

 

監査業務の補佐態勢

【金融検査マニュアルにおけるチェック項目】

監査役は、監査役及び監査役会を補佐する適切な人材を、適正な規模で確保しているか。
また、監査役及び監査役会を補佐する者は、監査役の補佐業務の遂行に関し、取締役及び取締役会からの指揮命令を受けない等の態勢となっているか。

監査役設置会社である金融機関では、監査役室、監査役会事務局などを設置しているところが少なくないと思われます。そのため、このチェック事項では、監査役及び監査役会を補佐する者に対する配慮を求めています。
監査役会の業務は、非常に広範かつ多岐に渡る業務を監査対象としなければならないため、監査役会を補佐する適切な人材を適正な規模で確保することが重要なポイントとされます。
ここで問題となるのは、「適切な人材」の属性です。
特に中小規模の金融機関のように人的資源の限度のある組織では、内部監査部門のメンバーが監査役会を補佐しているケースもあります。監査役が取締役の業務執行を監査するのに対して、内部監査部門は、取締役会の指揮命令系統に帰属するものであることから、内部監査部門の担当者が監査役の補佐に従事することは理念的に問題があります。もっとも、金融機関の業務執行における内部統制の状況(内部管理態勢)に対するモニタリングの役割を担う監査役と内部監査部門が多くの情報を共有することは、機能を高めるといった実質的な意味で有益なことと考えられます。

会社法362条4項6号では、取締役会は、株式会社の業務の適正を確保するために必要な体制の整備を行うべきことが定められていますが、監査役設置会社である場合には、次の体制も含まれるものとされています(会社法施行規則100条3項)。

  • 監査役がその職務を補助すべき使用人を置くことを求めた場合における当該使用人に関する事項
  • 監査役の職務を補助すべき使用人の取締役からの独立性に関する事項
  • 取締役及び使用人が監査役に報告をするための体制その他の監査役への報告に関する体制
  • その他監査役の監査が実効的に行われることを確保するための体制

 

独立性の確保

【金融検査マニュアルにおけるチェック事項】

監査役及び監査役会は、組織上及び業務の遂行上、独立性が確保される態勢となっているか。特に、監査役の調査権限及び報告権限を妨げることや、監査費用支出に不合理な制限を設けることを排除し、監査役の独立性を確保しているか。

「独立性」には、次の意味合いが含まれています。

  1. 監視する対象から制約されずに自ら判断を下すことができる
  2. 監視に対する対象に自ら指示することができる

ここでは、監視の対象は取締役会になるため、監査役及び監査役会は、取締役会から制約されることなく判断を下し、取締役会に対して指示を下すことができなければなりません。

監査役全員で組織する監査役会を設けることが義務づけられることとなったのは、監査役会が十分にその職務権限を行うには、取締役会から、任命、報酬、職務権限の行使等において独立性を重視しなくてはならないでしょう。
なお、会社法上、監査役がその職務の執行について、会社に対し費用等の請求をした場合には、当該請求に関わる費用又は責務が当該監査役の職務の執行に必要でないことを証明した場合を除き、会社はこれを拒むことができないものとされています(会社法388条)。

記事製作者

中小企業診断士 湯谷 一夫

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