バック・テスティング

バック・テスティングは、リスク管理モデルの精度を確認するために行います。

バック・テスティングとは

バック・テスティングとは、リスク管理モデルにより算出されたリスク量(ポートフォリオの価値の予想変化)を実際の損益と事後的に比較検証することをいいます。

バック・テスティングを行うことにより、リスク管理モデルの質や精度をチェックすることが可能です。バック・テスティングのプロセスには、大きく分けて以下の2つを挙げることができます。

  1. 融機関が、そのボートフォリオ上のリスクを計測・合算するVaR手法が、実際の損益の動きに比較して適当であるかどうかをチェックすること
  2. 論上と実際の損益を比較することで、金融機関のポジションのリスクを評価し管理するために使っているモデルが、すべてのリスク要因を一貫して、かつ完全にカバーしているかをチェックすること

上記のいずれの場合も、金融機関が行う損益計算がテストの基礎データとなります。
まず、実際の損益とVaR値とを対比してチェックを行い、さらに価格モデル及びリスク管理モデルから算出される理論上の予想損益値とポートフォリオの実際の価格変化との比較を行うことになります。
2.については、さらに理論上の損益を構成する個別の要素に分解することができます。すなわち、イールド・カーブ、ボラティリティ・カーブなどのパラメーターを個別に動かした場合の価値の変化を計算することによって、モデルが一貫して関連するすべてのリスク要因を捉えているかどうかを書く個別項目別に分析します。このプロセスは、リスク管理モデルの検証のみならず、収入源について、その所在や重要度合いを知ることもできます。

バック・テスティングの本質は、実際のトレーディング結果を、モデルによって導出されたリスク量と比較することにあります。例えば、バック・テスティングの結果、双方の計数が十分に似通ったものであれば、当該リスク管理モデルは精度面で問題がないと判断されます。反対に、双方の計数に相当な乖離がある場合には、リスク管理モデル自体もしくはバック・テスティングの前提条件に重大な問題が存在する可能性が高いということになります。
こうした2つの極端な事例の中間には、バック・テスティングの結果からだけでは簡単に結論づけられないグレーな領域が存在します。

 

BIS規制とバック・テスティング

バーゼル銀行監督委員会の自己資本比率規制では、市場リスクの計算方法として内部モデル方式による場合は、日次でバック・テスティングを実施し、リスク管理モデルの精度、妥当性を検証することが義務付けられています。

バック・テスティング・プログラムは、通常、金融機関の日々のVaR値と実際に生じた日々の損益(いわゆる日々のトレーディング損益)とを定期的に比較するものです。ほとんどの場合、VaR値の方がトレーディング損益に対し大きくなるはずですが、トレーディング損益がVaR値を超過した日数の観測日数全体に対する割合は、VaR値を算出する際の信頼水準に依存します。VaR値をトレーディング損益と比較することは、単純に言えば、例えば、リスク値がトレーディング損益を上回っている日数を数えることです。つまり、実際に生じたトレーディング損益がリスク値の範囲内に収まった日数の観測日全体に対する割合と、当初予想された信頼水準とを比較することによって、金融機関のリスク管理モデルの精度を検証することができます。

マーケット・リスク相当額の計算にVaRの内部モデルを採用する金融機関は、次の手続を実施することが求められています。

  1. 日次のリスク・エクスポージャーの尺度(日次VaR)は、損失が100営業日中1日以上その額を超えない(99%の信頼区間)と予想される損失額として定義される。
  2. 日次のリスク・エクスポージャーに√10を乗することで、信頼水準99%で保有日数10営業日のリスク・エクスポージャーを求める。
    √10が使われる理由は、VaRが損益分布の標準偏差の倍数とされているところ、時間の経過とともに線形に増加するのは、(標準偏差の2乗値である)分布の分散に対してであることからである。
  3. 過去60日の2.の平均を算出し、一定の定数kをかけたものを得る。kは、その銀行のVaR測定値の正確性によって決定されるものであり、バーゼル委員会ではkは最低3以上としている。
  4. 2.と3.の大きい方の額を選ぶ
  5. 最後に、VaRの測定値の正確性は、少なくとも3ヶ月ごとにバック・テスティングを実施することで図られる。実務的には、過去250営業日(1年)の実際のトレーディング結果が銀行の日次のVaR値と比較され、実際の損失がVaR値を上回った回数が記録される。
    もしこれが、4日以内であれば(グリーンゾーン)、銀行の内部計算は性格なものとされ、定数k=3が適用される。
    5日以上9日以内の場合(イエローゾーン)、内部モデルはチェックが必要とされ、その頻度と程度に応じて、追加的な自己資本が求められます(例:乗数k=3.50)。
    250営業日中10日以上の釣果が見られた場合(レッドゾーン)、内部モデルは不適当とみなされ、乗数は4以上が自動的に割り当てられる。

これを受けた金融庁の銀行向け自己資本比率告示(金融庁告示19号)では、次のように規程されています。

第274条(一般市場リスクを算出するリスク計測モデルの承認の基準)

  1. 金融庁長官は、一般市場リスクの算出について、第272条の承認をしようとするときは、定性的基準及び定量的基準に狄道するかどうかを審査しなければならない。
  2. 前項の「定性的基準」とは、次に掲げるものをいう。
    一 (略)
    ニ マーケット・リスク管理部署は、適切なバック・テスティング(第277条に定める要領
      で行う日ごとの損益とリスク計測モデルから算出される損益の比較の結果に基づき、リ
      スク計測モデルの正確性の検定を行うことをいう。次条第4項第6号において同じ。)
      及びストレス・テスト(リスク計測モデルについて、将来の価格変動に関する課程を
      上回る価格変動が生じた場合に発生する損益に関する分析を行うことをいう。)を
      定期的に実施し、それらの実施手続を記載した書類を作成していること。
    三 〜(以下、略)

 

第276条(内部モデル方式によるマーケット・リスク相当額)

  1. 内部モデル方式を用いて算出する一般市場リスク及び個別リスクに係るマーケット・リスク相当額は、次に掲げる額の合計額とする。
    ただし、バリュー・アット・リスクは一営業日に一回以上の頻度で計測するものとし、ストレス・バリュー・アット・リスクは一週間に一回以上の頻度で計測するものとする。
    一 次のイ及びロに掲げる額のうちいずれか大きい額
     イ 算出基準日のバリュー・アット・リスク
     ロ 算出基準日を含む直近60営業日のバリュー・アット・リスクの平均値に次条に定め
       る乗数を乗じて得た額
    ニ 次のイ及びロに掲げる額のうちいずれか大きい額
     イ 算出基準日のストレス・バリュー・アット・リスク
     ロ 算出基準日を含む直近60営業日のストレス・バリュー・アット・リスクの平均値に
       前号ロで使用した乗数を乗じて得た額
  2. (略)

 

第277条(乗数)

  1. 内部モデル方式における乗数は、次の表の上欄に掲げる超過回数(内部モデルを用いる部分について、算出基準日を含む直近250営業日の日ごとの損益(実際に発生した損益又はポートフォリオを固定した場合において発生したと想定される損益をいう。)のうち、その日ごとの損失の額が、保有期間を1日としてリスク計測モデル(追加的リスク計測モデル及び第302条の10第3項第3号に規定する包括的リスク計測モデルを除く。)を使用して算出した日ごとのバリュー・アット・リスクを上回る回数をいう。以下この条において同じ。)に応じ、同表の下欄に定める値とする。
    超過回数 乗数

    0
    1
    2
    3
    4
    5
    6
    7
    8
    9
    10以上

    3.00
    3.00
    3.00
    3.00
    3.00
    3.40
    3.50
    3.65
    3.75
    3.85
    4.00

  2. 前項の規程にかかわらず、超過回数が5以上10回未満であって超過が市場の特殊要因等に起因すると認められる場合には、当該超過回数以下の超過回数に係る乗数とすることができる。
  3. 内部モデル方式を用いている銀行は、超過回数が5回以上となったときは、その都度、直ちに、その旨を記載した届出書に超過回数が5回以上となった原因を分析した書類を添付して金融庁長官に提出しなければならない。

記事製作者

中小企業診断士 湯谷 一夫

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