財務諸表を使って経営の状態を分析する

損益計算書と貸借対照表は、単に確定申告のための書類ではありません。
その数字を分析することで、対策を行う必要性がある部分を洗い出すための情報としても活用することができるのです。

損益計算書を見て、利益がプラスかマイナスであるかを確認するのは重要なのですが、減少傾向だと現在は、問題がなくても将来問題となる可能性が高いです。
早期に問題となりそうな部分を見つけて改善を図るためには、原因を特定する必要があります。
利益があっても非効率な活動をしているなら、改善してより効率化を図る必要があります。特に経営資源が限られている中小規模の会社であれば、限られた資産をより効率的に活用して売上を上げないとそれ以上成長することが難しくなってしまいます。
これらの判断をするためには、損益計算書、貸借対照表を活用して傾向や原因がある箇所を特定することができるようになります。

分析には、主に3つの観点で分析を行うことができます。

  • 現状保有している資産がどの程度利益を生んでいるのか、売上高に対してどの程度利益があるか、収益性を見る分析
  • 売上高をあげるために現在保有している資産をどのくり活用できているか、効率性を見る分析
  • 事業活動を健全に行っているか、安全性を見る分析

 

収益性の分析

総資産利益率(ROA:Return on Asset)

売り上げが上昇しても利益が上がっていなければ、ビジネスとしては、良い結果とはいえません。
また、利益に対してもどの程度、経営資源を使用して実現したかは重要です。
例えば、50万円の売り上げを上げるために49万円の費用を使ってしまっては、たった1万円の利益しかありません。
これでは、100万円の利益を上げるためには、4,900万円も必要になってしまいます。
中小企業など規模が小さい会社は、大企業と比較して利用できる経営資源が限られています。
そのため、限りある経営資源をいかに効率的に活用して利益を上げているかは重要なポイントになってきます。
現在保有している資産に対してどの程度利益を生み出せたのかを確認できる指標が総資産利益率(ROA)です。

総資本利益率(ROA)(%)=利益 / 総資産 ×100

この指標は、資産に対する利益の割合であるため、規模が異なる企業間の比較にも活用することができます。

自己資本利益率(ROE:Return on Equity)

自己資本利益率は、株主から出資された資本がどの程度利益を生み出しているかを表す指標になります。

自己資本利益率(ROE)(%)=利益 / 自己資本 ×100

総資本利益率(ROA)よりも自己資本に焦点を当てていますので自己資本利益率(ROE)が良いということは、出資者にとっては、出資額に対して利益率がよいので、出資時より価値を高めていることになりますし、配当を出しているのであれば、より大きなリターンが期待できます。
反対にビジネスを行う側から見ると出資をしてもらいやすい状態になるということになります。

売上高利益率

売上高に対する利益率を表す指標になります。
利益は、売上総利益、営業利益、経常利益を使用します。

売上高利益率=利益 / 売上高

売り上げに対する利益の割合になりますので、競合他社の数値との比較、過去の数値との比較によって、あなたのビジネスの利益律が相対的に良いのか悪いのかを確認します。
特に、過去の数値を分析して減少傾向になるようであれば、原因を分析して改善の検討をするなどの対応が必要になります。

 

効率性の分析

利益を出すためには、売り上げ原価を下げるか、売り上げを上げる必要があります。
そのうち、売り上げを上げるためには、限られた経営資源をいかに効率的に活用するかによって、売り上げを伸ばせるかに影響があります。

資産回転率

現在のビジネス活動において、資産をどの程度効率的に使えているか見る指標として、売り上げを上げるために資産を何回利用したかを確認する指標として、資産の回転率を表す指標になります。
資産としては、総資産、固定資産、有形固定資産などを利用します。

資産回転率(回)= 売上高 / 資産

 

安全性の分析

ビジネスを行っていく上で、効率的に利益を上げていたとしても財務状態が健全ではなく倒産のリスクが高くては、長期的に問題があります。財務状態が悪いと信用が低下することになりますので、借入が難しくなったり、日々の資金繰りが悪化するような状態になりかねません。

当座比率

短期的な支払(買掛金など)に対する資金がどの程度あるかを表す指標となります。

当座比率(%)= (流動資産ー棚卸資産) / 流動負債 ×100

流動資産から棚卸資産を引いたものを当座資産といいます。
売却しなければ現金化できない棚卸資産は、流動資産から除くことでより厳密に短期の支払能力を表すことができます。
当座比率が100%以下であると短期的な支払(支出)過多となっている状態といえますので短期的な支払資金の確保が必要となる可能性があります。

自己資本比率

長期的な安全性を確認するためには、総資産に対する自己資本の比率を確認します。

自己資本比率(%)=自己資本 / 総資産 ×100

自己資本は、返済の義務がありませんので自己資本比率が高いということは、返済義務がある他人資本の影響が少ないか、利益が留保されているといえますのでより安定した財務状態であるといえます。

固定長期適合率

固定資産を返済不要な自己資本と長期的に返済する長期借入でどの程度まかなえているかを確認する指標となります。

固定長期適合率(%)=固定資産 / 自己資本+長期借入 ×100

固定資産への投資は、金額が大きくなりがちなので自己資金のみで行うことは少ないのではないでしょうか。
一般的には、固定資産への投資は、長期借入を活用して行うことが多いです。そのため、固定資産は、自己資本と長期の借入によって、まかなっているといえます。
しかし、過剰な投資をしてしまった場合は、自己資本と長期借入だけではまかなうことができなくなり短期的な資産も活用することになります。そうすると短期的な支払のための資金も使ってしまうこととなり、資金がショートしてしまう可能性が高まってしまいます。

 

これらの指標は、単独で分析することはできません。単独では、単にあなたの事業の結果でしかないため、良いのか悪いとはいえないです。
では、分析するためには、どのように活用していけば良いかというと過去の数字と比べたり、将来の予測値との差を比較することで有効活用できると考えています。
ゆっくりとした変化は、気づきにくい可能性がありますので、月間の数値で確認するなどして短いサイクルで傾向を把握することが必要になります。
また、情報が入手できるのであれば、同業他者や業界標準の値と比較して分析することで特段大きく異なった数値がないか確認できれば、異常値の発見につながります。
もちろん、事業の戦略によって、費用や収益の構造は同じではありませんので、必ずしも異常とはいえない可能性があるため、注意が必要です。

記事製作者

中小企業診断士 湯谷 一夫

コンサルティングのご依頼などサービスの詳細は、次のバナーをクリックしてください。  

コメントを残す