資金繰り管理部門の役割・責任

資金繰り運営にあたる資金繰り管理部門の役割・責任を説明します。

適切な資金繰り運営・管理

【金融検査マニュアルのチェック項目】

資金繰り管理部門は、流動性戦略、流動性リスク管理方針、流動性リスク管理規程等に基づき、当該金融機関のリスク・プロファイル等の内部環境、経済や市場等の外部環境等の情報を収集、分析し、適切な資金繰り運営をおこなっているか。
なお、この運営に当たっては、資産・負債の両面から流動性についての評価を行うとともに、調達可能時点と金額、担保差入可能時点と金額などの流動性の確保状況を把握しているか。

資金繰り管理部門の役割として、最低限求められることは、自社が外部から調達しなければならない額の資金を適時適切に確実に調達・確保するということです。そのために、必要とされる内外の定性的・定量的情報を収集して自社の方針及び内部規程に則って業務運営にあたります

 

資金繰り表の作成

【金融検査マニュアルのチェック項目】

資金繰り管理部門は、拠点毎及び通貨毎の日次の資金繰り表並びに週次、月次及び四半期ベースの資金繰り見通しを作成しているか。

全社的な資金のの出入り見込みを集約した資金繰り表を作成することは、資金繰り管理の基本になります。資金繰り表の作成要件は、本来、自社の内部管理用あるいは必要に応じた当局報告用のニーズに合致するかどうかで決まります。
金融検査マニュアル等に記載があるから作成するという性格のものではありません。

 

資金繰りへの影響の把握

【金融検査マニュアルのチェック項目】

資金繰り管理部門は、必要に応じて以下の管理等を行うことにより資金繰りへの影響を早期に把握しているか。

  • 大口資金移動の集中管理
  • 市場性資金の調達管理
  • 運用・調達の通貨別・商品別・期間別の構成の管理
  • 担保繰りの管理
  • 預金等の期落ち管理
  • 契約上の受信枠及び与信枠の残高管理
  • 支払準備資産の管理
  • キャッシュの管理(ATM等を含む。)
  • 各国通貨毎の資金繰りの管理
  • 各国通貨間の融通も考慮した資金繰りの管理等

資金繰りに大きな影響を与えやすい項目を列挙しています。自社にとって重要な事項が、管理項目から欠落していないか確認することがポイントになります。

 

運用予定額・調達可能額の把握

【金融検査マニュアルのチェック項目】

資金繰り管理部門は、営業推進部門等の報告等を踏まえ、運用予定額(ローン・保障等の実行予定額)、調達可能額(インターバンク市場やオープン市場における調達可能額、預金受入・解約見込額等)を把握しているか。運用予定額、調達可能額を的確に把握するため、営業推進部門等から必要な報告・情報を適時に受けているか。
なお、運用予定額、調達可能額を把握するにあたっては、以下の項目について、考慮しているか。

  • オフ・バランス取引
  • コミットメント・ライン
  • 当座貸越契約
  • 実態に応じた運用機関の把握(例えば、形式的には、短期の運用となっているが、実態は長期の運用となっているものなど)
  • 特定先への調達依存状況(集中リスク)
  • 日銀への調達依存状況
  • 資金繰りのひっ迫度(例えば、平常時、懸念時、危機時等)
  • 預金の払戻し等に対する支払い準備資産(手許預金、預け金等)

資金繰り管理で重要な資金繰り表の作成に関して各種取引をどのように記載するかの留意点が列挙されています。
ポイントは、取引の実態に応じて入手金の金額(運用予定額・調達可能額)、時期を適切に把握することです。
恒常的に外部から資金調達を行わなければならないマネー・ポジションの金融機関にあっては、調達額になんらかのリミットを設けて適切に管理することが求められます。

 

流動性危機管理

【金融検査マニュアルのチェック項目】

金繰り管理部門は、流動性危機時において、有価証券の処分など資金調達のための資産の流動化が円滑に行えるよう、常時、取引環境を踏まえて適切に対応しているか。

資金繰りを改善させるには、

①金融機関にとっての負債(預金、外部からの調達資金等)の増加
②資産の減少を図ること

が必要です。資産の売却、流動化、資産担保借入など、どのような手段が実現可能であるか、資金化までにどの程度の期間を要するのか、検討しておくことが重要です。

 

流動性リスクのコントロール及び削減

【金融検査マニュアルのチェック項目】

  1. 資金繰り管理部門は、流動性戦略、流動性リスク管理方針、流動性リスク管理規程等に基づき、流動性リスクをコントロールしているか。
  2. 資金繰り管理部門は、限度枠を遵守する運営を行っているか。

方針及び手続(policies and procedures)に従って資金繰りリスクをコントロールする実務にあたることは資金繰り管理部門の役割です。流動性リスク管理部門は、この資金繰り管理部門のコントロール状況をモニタリングします。

1.流動性危機時の調達手段の確保

【金融検査マニュアルのチェック項目】

資金繰り管理部門は、国内外において即時売却可能あるいは、担保として利用可能な資産(国債など)の保有残高や円投入、円転換等による調達可能時点・金額を常時把握するとともに、各中央銀行、市中金融機関から調達が行えるよう借入枠を設定するなど、危機時を想定した調達手段を確保しているか。

ポイントは、資金繰りがひっ迫した場合のアクションプランとして金融機関の資産の中で資金調達手段となり得るものがどれだけあるのかを把握し、流動化・資金化が容易な順に順位を付けておき、資金繰りひっ迫時にどのように行動するかをあらかじめ定めておくことです。
特に米ドル等、外貨建ての資金調達手段の確保については、過去、1997年秋のわが国金融危機時に海外市場で「ジャパン・プレミアム」がつけられて邦銀の資金調達が困難となり、国内の円を米ドル外貨に交換して海外支店等へ送金(円投入)して資金繰りにあてた経緯もあり、十分留意して必要な手立てを事前から準備しておく必要があります。

2.流動性リスク管理部門への報告

【金融検査マニュアルのチェック項目】

資金繰り管理部門は、当該金融機関のリスク・プロファイル等の内部環境、経済や市場等の外部環境等の情報を収集及び分析した結果並びに資金繰りの状況及び予測について、流動性リスク管理部門に対し、定期的に又はひっ迫度の状況に応じて随時、報告しているか。

資金繰り操作の実務を担う資金繰り管理部門からミドル・オフィスである流動性リスク管理部門へ適時適切に報告・連絡されるような体制を整備することが必要です。

 

取締役会等への報告

【金融検査マニュアルのチェック項目】

資金繰り管理部門は、資金繰りの状況及び予測について、代表取締役及び担当取締役に対し、定期的に又はひっ迫度の状況に応じて随時、報告しているか。
また、取締役会等に対しても定期的に又は必要に応じて随時、報告しているか。
さらに、取締役会等は、報告を受けた内容が流動性リスク管理方針を遵守したものであることを検証しているか。

資金繰り管理部門からの報告の頻度、あるいはひっ迫度の判断を具体的に誰が行うか(代表取締役、担当取締役、取締役会、取締役会等のいずれか)については、流動性リスク管理態勢の確認検査用チェックリストでは必ずしも明示されていないため、経営判断に委ねられていると考えられます。この点は、自社の流動性リスク管理規程で規定することになります。

ひっ迫度の度合いが高まるほど、資金繰り管理部門から代表取締役及び担当取締役への報告頻度を高める必要があります。
また、取締役会等による報告内容の検証について、どのようになされているか説明できるように手続を決めておかなければなりません

記事製作者

中小企業診断士 湯谷 一夫

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