経営陣による監視と管理重視の企業風土

取締役会は、適切かつ有効な内部管理体制の構築に最終的な責任を負っています。
また、取締役会と上級管理者は、高い職業倫理感を涵養(かんよう)し、内部管理重視の企業風土を醸成しなければなりません。

バーゼル銀行監督委員会の報告書「銀行組織における内部管理体制フレームワーク」(1998年9月)では、COSOのフレームワークにおける「統制環境」に位置づけられる構成要素として、「経営陣による監視と管理重視の企業風土」を掲げ、取締役会及び上級管理職向けに次の3つの原則を示しています。

原則1:取締役会

原則1:
取締役会は、

  1. 銀行の全体の企業戦略及び重要な方針を承認し、定期的に見直すこと
  2. 銀行が負っている主要なリスクを理解し、これらのリスクにつき受容できるレベルを設定すること、また上級管理職にこれらのリスクを識別、測定、モニタリング、コントロールするのに必要な手順を踏ませるようにすること、
  3. 組織構造を承認すること
  4. 上級管理職による内部管理体制の有効性についてのモニタリングが確実に行われるようにすること、

に関する責任を担うべきである。

取締役会は、適切かつ有効な内部管理体制が構築され、維持されることを確実なものとする最終的な責任を負っている。

 

取締役会は、上級管理職の倒置、指導及び監視を行い、全体の企業戦略と組織上の重要な方針、組織構造の承認と見直しに責任を負うものとされています。
また、適切かつ有効な内部管理体制の構築に最終的な責任を負うものとされていますが、その責任を果たしたというためには、上記の項目1.〜4.が実施されていることを証明できることが必要とされます。
ここでは、特に、取締役会で企業戦略と重要な方針を承認すること、それに上級管理職を通じて組織に内部管理を実施させ、その有効性を上級管理職にモニタリングさせ、報告を受けること、そのような体制について定期的に見直しをするというフィードバック・プロセス(PDCAサイクル)を働かせる必要があることがポイントとされます。
また、この報告書では、取締役会の業務の中に次のものが含まれるべきであるとされています。

  • 経営陣との内部管理体制の有効性についての定期的なディスカッション
  • 経営陣、内部監査人及び外部監査人による内部管理評価の適時の見直し
  • 監査人や監督当局により指摘された内部管理上の問題に関する勧告事項や指摘事項について、経営陣が適切なフォローアップを確実に行うようにするための定期的な努力
  • 銀行の戦略とリスク・リミットの適切性に関する定期的な見直し

ここでは、特に「経営陣、内部監査人及び外部監査人による内部管理評価」について、適時見直しを行うことが取締役会の業務であるとしている点が金融検査マニュアルにおける経営管理態勢の構成に関係するものとして注目されます。

 

原則2:上級管理職

原則2:
上級管理職は、

  1. 取締役会により承認された戦略及び方針を実行すること
  2. 銀行に生じるリスクを識別、測定、モニタリング及びコントロールするプロセスを構築すること
  3. 責任、権限及び報告の関係が明確に割り当てられた組織構造を維持すること
  4. 委譲された権限が有効に機能していることを確実なものとすること
  5. 適切な内部管理方針を定めること
  6. 内部管理体制の妥当性及び有効性をモニタリングすることに関する責任を担うべきである

 

原則2では、上級管理職の責任について説明しています。
上級管理職は、取締役会により承認された戦略及び方針に従って具体的に内部管理体制のプロセスを実行する責任を負っています。

特に重要なのは、最後の「内部管理体制の妥当性及び有効性をモニタリングする」という点になります。上級管理職は、現状に満足しているとモニタリングのセンシビティ(感度)が鈍りますので、絶えず問題点がないかどうかという支店で分析・評価していくことが必要です。

 

原則3:管理重視の企業風土

原則3:
取締役会と上級管理職は、高い職業倫理感を涵養(かんよう)し、あらゆる職階における職員に対して内部管理の重要性を強調・明示する風土を組織内に醸成する責任がある。
近郊組織のすべての職員は、内部管理プロセスにおける自らの役割を理解し、そのプロセスに十分に関与する必要があります。

 

原則3では、企業風土を醸成する責任が取締役会と上級管理職にあることを明示しています。
本報告書では、この原則の提示に続けて、「取締役会と上級管理職の言動は、銀行の管理重視の企業風土の品格、倫理及び他の側面に影響を及ぼす」と説明しています。
また、内部管理プロセスには全ての職員が関与するものであることを理解させる必要があるということを強調しています。
さらに、銀行組織は、不適切な業務へのインセンティブや誘惑を与える可能性のある方針や観光を避けなければならないとして、次のものを挙げています。

  • 業績の目標値や業務結果の過度の強調(とりわけ長期的なリスクを無視した、短期的な業績の目標値)
  • 短期的な実績を過度に重視する報酬体系
  • 実効性のない職責の分離(資源の乱用や著しくない実績の隠蔽を誘発)
  • 不適切なふるまいに対する過小なもしくは、極端に重い罰則

不備事例からの教訓

本報告書では、補足の論点として、「内部管理の不備事例から得られた監督上の教訓」が付されています。ここに挙げられた兆候が自社の業務の中にないかどうか、チェックする項目として参考になります。
この補足論点では、管理重視の企業風土が脆弱になったケースに共通する2つの要因として次のものを挙げています。

  • 収益重視で内部管理上の対応を怠るような管理職を昇格させ、報酬を与えた。
  • 責任の所在が不明確で、上級管理職による適切な監督や適時の報告がなされなかった(上級管理職は、現場がどのような仕組みで収益を得ているかわからなかった)。

さらに、リスク管理の企業風土を構築できない、特徴的に見られる管理体制の不備として次のパターンが挙げられています。

内部管理の不備事項

  • 管理を重視する企業風土を構築することについて経営陣が無関心である
  • 役割や責務が明確な形で割り当てられておらず、責任が暖昧になっている
  • 高い管理意識を維持するためのインセンティブが不十分である
  • 現在の管理体制は、単純な取引には十分機能するのだが、複雑な取引になると処理できない
  • 利益相反がある部署において職責が分離していない
  • 関連する職員が会社の方針を知らない
  • 問題が深刻化するまで、経営陣に伝達されない
  • 監査が厳密に行われていない

記事製作者

中小企業診断士 湯谷 一夫

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