信用リスク管理態勢の基本的な考え方

信用リスク管理を内部統制のフレームワークの一環として捉え、与信方針、与信戦略に従って信用リスク管理プロセスを構築します。

フレームワークの必要性

信用リスクは、金融機関の本業に関わる主要なリスクであり、従来からその管理が行われてきましたが、1980年代の米国の金融機関や、わが国の金融機関のバブル期以降における与信管理の失敗に見られるように、伝統的な与信管理手法が十分なものとは言えないことは明らかです。

わが国では、1998年に自己査定制度が導入され、その翌年には金融検査マニュアルが公表されたことから、現在では、これらに則った信用リスク管理の態勢を整備することは、金融機関の役職員にとって当然のことのように感じるかもしれません。
しかしながら、それは決して金融当局の監督に従わなければならないからという理由ではないはずです。一度原点に立ち返り、なぜ、そのような態勢づくりが求められているのか、金融機関は自ら定めたリスク許容度の範囲内に信用リスクを納めるために、どのようにするべきかという考え方を確認しておく必要があります。

内部統制のフレームワークについて、信用リスク管理においても、組織的に実施するためには、包括的なフレームワークとして管理プロセスを機能させていくという考え方が不可欠になります。
すなわち、COSOの内部統制のフレームワークに当てはめると、「業務目的」が該当し、業務の有効性と効率性を目指す内部統制の一環として「信用リスク管理態勢」のプロセスを捉えることが求められます。

 

信用リスク管理体制のポイント

先進的な金融機関で採用されている信用リスク管理の体制に共通する重要なポイントとして、次の項目が挙げられます。

  1. 信用リスク管理を内部統制フレームワークの一環として捉える
    信用リスクに関わる書各手続を相互に関連させ、全体としての信用リスク管理プロセスを構築し、フレームワークとして捉えます。
  2. 与信戦略、与信方針の確立
    与信戦略・与信方針を明確に策定することにより、金融機関の信用リスク管理に関する基本的な考え方を組織全体に浸透させ、統一的な視点に立って与信業務プロセスを構築させていくことが可能となります。
  3. 信用リスク管理プロセスの構築
    与信戦略・与信方針に基づき信用リスk管理に関する一連のプロセスを構築することが重要となります。
    このプロセスには、「リスクの識別、評価、モニタリング、コントロール」が含まれます。
    より具体的には、「入口調査、信用格付に基づく自己査定、中間管理、償却・引当、自己資本と対比したリスク管理」となります。
  4. リスク管理を支えるインフラの整備
    リスク管理のための業務を有効に運営するために、組織体制、リスク分析・計測手法、システム等の側面からこれを支える基盤が必要となります。
    具体的には、明確な方針と手続、有効な相互牽制・監視を行う組織体制、リスク測定の手法、トップマネージメントへの報告態勢、ITシステムなどが挙げられます。

特に、与信を供与する部署と信用リスク管理を担当する部署の職責分離を明確にした体制づくりが極めて重要です。

 

【信用リスク管理のフレームワーク】

 

信用リスク管理プロセスを構築するメリット

信用リスク管理のプロセスを構築することによって得られるメリットは、次の点が挙げられます。
このようなメリットを持つプロセスを構築することの重要性を認識することができるか否かが、信用リスク管理の鍵となります。

  • 従来、個別に行われてきた各手続が、与信戦略、与信方針の下、信用リスク管理という1つの視点で統一して運用されます。
  • プロセスの中で信用格付、自己査定基準、各種リスク管理規程が一体となって、リスクを大きいものから順位づけして管理していくことが可能となります。
  • これまでの与信管理態勢において、重複していた作業を整理、統合することができます。
  • 改善プロセスを組み込み、与信管理の高度化を図るメカニズムを構築することができます。

 

【信用リスク管理プロセスの構成(例)】

  • 与信管理と与信方針(Credit Strategy and Credit Policy)
  • ポートフォリオ管理(Portfolio Management)
  • リレーションシップ管理(Relationship Management)
  • 問題債権管理(Problem Loan Recovery)
  • クレジット・レビュー(Credit Review)
  • 経営情報システム(Management Information System)
  • 組織体制と人的資源(Organized Structure and Human Resources)

 

フレームワークを構成するこれらの項目は、相互に深く関連しており、どれか一つが欠けても十分なリスク管理を行うことは不可能です。単に個々の手続論としてではなく、包括的な内部統制のフレームワークを意識した信用リスク管理態勢の構築が求められているということに注意が必要です。

記事製作者

中小企業診断士 湯谷 一夫

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