個別の問題点−債務者の実態把握に基づくリスク管理

【金融検査マニュアルにおけるチェック項目】

(ⅰ)健全な事業を営む先、特に、中小・零細企業等に対する円滑な資金供給の実 行に向けた健全な審査態勢が整備されているか。

(ⅱ)投機的不動産融資や過剰な財テク融資等の禁止、及び反社会的勢力に対する資金供給の拒絶など、健全な審査態勢が整備されているか。

(ⅲ)顧客からの新規融資や貸付条件の変更等の相談・申込みに対し、例えば、財務諸表等の表面的な計数や特定の業種であることのみに基づいて判断する等、機械的・画一的な判断を行うのではなく、顧客の事情をきめ細かく把握した上で対応しているか。

(ⅳ)顧客の技術力・成長性等や事業そのものの採算性・将来性を重視せず、担保や個人保証に過度に依存した対応を行っていないか。例えば、顧客の事業価値やキャッシュフローの見通し等を適切に検討することなく、融資額が不動産担保の処分可能見込額を超えるといった理由のみで融資を謝絶又は減額していないか。
また、過度に厳しい不動産担保の処分可能見込額のみを根拠として、融資を謝絶又は減額していないか。
さらに、担保価値の減少等を理由として、相当の期間を設けることなく、顧客の実情にそぐわない追加担保・保証を要求していないか。

(ⅴ)当局が定める金融検査マニュアルや当局が行う金融検査を理由に、新規融資の謝絶や資金回収を行うなどの不適切な取扱いを行っていないか。

(ⅵ)貸付条件の変更等を行った債務者について、債務者の実態を十分に把握した上で、適切な資金供給を行っているか。
貸付条件の変更等の履歴があることのみをもって、新規融資や貸付条件の変更等の相談・申込みを謝絶していないか。

本チェック項目では、個別案件の審査態勢における金融機関の健全性、誠実性が問われています。
単に法令を守るということ以上にエシックス(企業倫理)としてどうなのかが問われます。

(ⅱ)に例示されたケースでは、法令等遵守態勢、顧客保護等管理態勢の観点から問題視されることにもなりますし、風評リスク、訴訟リスクに繋がるものとして、過去においても問題とされた事例が少なくありません。

(ⅲ)、(ⅳ)、(ⅴ)、(ⅵ)は、金融円滑化推進に関連するチェック項目です。

(ⅲ)について、顧客からの新規融資や貸付条件の変更等の相談・申込みに対して、顧客の事情をきめ細かく把握した上で対応することが求められており、機械的・画一的な判断を行ってはなりません。

(ⅳ)についても、顧客の業務や財産等の実態把握をせずに、現時点における外形的・表面的な事象・数値等により過度の担保や保証を追求することがあってはなりません。
また、このように実態を把握することなく、融資額に対して担保価格が不足しているといった理由のみで融資を謝絶または減額等をすることは適切な対応とは言えません。

(ⅴ)について、金融検査マニュアルや当局が行う金融検査の結果を理由として、新規融資の謝絶や資金回収を行う等の不適切な対応をしてはなりません。

(ⅵ)について、金融円滑化監督指針におけるⅡ−1−2−2−(7)にもほぼ同じ内容の規程があります。
本チェック項目は、新規融資や貸付の条件変更に応じるか否かは、最終的に金融機関の個別の判断に委ねられますが、金融円滑化法の趣旨と制定の背景を踏まえて、金融機関に対して前向きに対応することを求めるという当局の意向が見られます。

記事製作者

中小企業診断士 湯谷 一夫

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