顧客サポート等管理態勢

顧客サポート等管理責任者は、顧客からの問い合わせ、相談、要望及び苦情への対処が適切に対処されるよう、内部規程等や管理態勢を整備する必要があります。

顧客サポート等とは、顧客の相談・苦情等への対処のことを言います。
顧客サポート等管理責任者とは、顧客サポート等に係る情報を集約し、相談・苦情等に対する対応の進捗状況及び処理指示を一元的に管理する責任者を言います。

内部規定等の策定

1.顧客サポート等管理規程及び顧客サポート・マニュアルの整備・周知

顧客サポート等管理責任者は、顧客サポートを的確に実行するための実務手続を整備しなければなりません。したがって、まずは顧客サポート等の適切性、十分性を確保するための規程整備等の手当が必要な業務の所在、種類等を把握する必要があります。その上で、顧客保護等管理方針と整合的な顧客サポート等管理態勢の基本事項を定める「顧客サポート等管理規程」を策定する必要があります。

さらに、サポート対象となる顧客・取引・商品の範囲、管理方法など実務を円滑に行う上で不可欠な事項を明確に定めた「顧客サポート・マニュアル」を作成する必要があります。
また、「顧客サポート等管理規程」の最終承認は、リーガル・チェック等を経て取締役会等が行うことが求められます。
リーガル・チェック等に関しては、コンプライアンス・チェックを含み、例えば、法務担当者、法務担当部署、コンプライアンス担当者、コンプライアンス統括部門又は社内外の弁護士等の専門家により内部規定等の一貫性・整合性や取引及び業務の違法性について、法的側面から検証することを言います。

なお、「顧客サポート管理規程」、「顧客サポート・マニュアル」を形式的に必ず作成しなければならない訳ではありません。両者を一体化したり、コンプライアンス・マニュアル等に吸収したりすることも考えられます。
重要な点は、次の点を確保することです。

  • 経営陣の関与(取締役会等による承認)
  • 重要事項の明確な記載
  • 顧客サポート等を行う者に対する周知徹底
  • 顧客に対する適切かつ十分なサポート等の実施

2.顧客サポート等管理規程の内容

顧客サポート等管理規程には、業務の規模・特性に応じ、顧客サポート等の適切な管理を行うための組織体制、制限・役割等を明確に規定することが求められます。
特に次の点を考慮した内容とする必要があります。

  • 業務の範囲、量に見合った顧客サポート等管理体制
  • 担当者の適格性基準
    例えば、営業拠点等の内部管理事務、コンプライアンス担当等の経験年数や社内外の資格取得状況等の要件を設定
  • モニタリング手法
    顧客サポート等管理部門、コンプライアンス部門等によるモニタリング権限、手法、頻度等を規程
  • 反社会的勢力への具体的な対応方法
    例えば、複数名での対応、社外相談・通報先の確保等の基本原則を規定
  • 顧客情報の共有・利用に関する取決め
    個人情報保護法16条、23条(利用目的による制限、第三者提供の制限)、金融商品取引業等に関する内閣府令153条1項7号イ(顧客の非公開情報に関する同意書の取得)が参考になります。
  • 顧客サポート等管理に関する取締役会報告資料(定期)の雛形
  • コンプライアンス統括部門、契約管理部門、支払管理部門等との会合、提出、受取資料等

3.顧客サポート・マニュアルの内容

顧客サポート・マニュアルは、顧客サポート等を行う者が適切かつ十分な顧客サポート等を行うことができるように具体的かつ平易に記載することが求められます。
特に、次の点を考慮した内容とする必要があります。

  • 相談・苦情等の記録作成の基準
    ・例えば、①支払い条件に関する問い合わせは要記録、②営業所の所在地・営業時間等の確認に関する問い合わせは記録不要、など具体的な基準を設定
  • 相談・苦情等の受付、回答、確認手続
    ・現場(営業拠点等担当者)、職位者、顧客サポート等担当者(現場)、顧客サポート等管理部門など関係者の役割を明確化
    ・内部関係者(顧客サポート等管理部門、コンプライアンス統括部門、取締役会等)への情報伝達方法、基準の明確化
  • 相談・苦情等に関し顧客の納得を得るための対応
  • 相談・苦情等の解決基準
    ・例えば、顧客が「分かりました」、「納得しました」と発言した段階、同意書を受け取った時点等を相談・苦情の解決時点とする
  • 相談・苦情等が紛争となった場合の手続
    ・民事訴訟の提訴、警察署への相談等に関する手続と取組基準を明確化
  • 反社会的勢力への対応
    ・社外の相談・通報先(弁護士、警察、暴力追放推進センター等)の具体化
    ・現場対応の具体化(面談記録の作成、原則として先方を上回る人数で対応、私的情報(住所、電話番号等)の守秘等
  • 犯罪被害の防止、相談手続
    ・例えば、ケース・スタディにより不審な取引等を具体的に解説

 

顧客サポート等の実施

1.顧客サポート等に係る管理体制の整備

顧客サポート等管理責任者は、顧客サポート等の実効性を担保すること、すなわち、各業務部門や営業拠点等の担当者(相談・苦情等への対応を行う者)が顧客に対して適切かつ十分な対応を実施できるようにするために、顧客サポート等管理規程、顧客サポート・マニュアル等の通知方法の工夫(通知書の配布、Eメール送信、イントラネットへの掲示等)や研修の実施等に取り組むことが求められます。
また、顧客サポート等の一環として、金融ADR制度への適切な対応のための態勢整備が必要となります。

2.相談窓口の充実等

顧客サポート等管理責任者は、相談・苦情等担当部署が窓口機能を十分に果たすことができる体制を整備する必要があります。
例えば、相談・苦情対応マニュアルの作成、研修の実施、業務内容(質、量)の分析とそれに見合った人員体制の構築などが求められます。
また、電話、FAX、郵便、ウェブサイト(パソコン用、携帯電話用)、店頭など相談・苦情等を受け付ける多様なチャンネルを確保することも重要ですが、その際、「何度かけても通じない」、「折り返し連絡がこない」、「たらい回しにされる」等のトラブルが生じないように相談・苦情等の受付・対応状況のモニタリング体制を構築することと、それに基づく的確な組織・人員配置が必要です。

なお、コールセンター業務等を外部委託する場合には、マニュアルの配布、研修の実施等により、自社と同等のサービス水準を維持することが求められるほか、自社と委託先の業務を明確に分け、的確に法令違反(無資格者による業務等)を防止することも重要です。

3.顧客サポート等の適切性

現場(営業拠点等)で顧客サポート等を的確に行うためには、まず関係者の役割と一連の業務プロセス(相談・苦情等の受付、担当部署への連絡、回答、内部の確認手続)を明確に定める必要があります。
現場の担当者は、マニュアルを精読したり研修を受講したりしても、全ての相談・苦情等に対し、その場で的確に対応できるわけではないため、会社内部での連絡・相談体制の整備が重要となります。
こうした後方支援態勢が不十分な場合、相談・苦情等の「たらい回し」や「長期未済案件」が生じやすくなりますので、注意が必要です。

また、会社に対して様々な方法で反社会的勢力が近づいてくる可能性があります。
通常の相談・苦情等と嫌がらせ・圧力を区別するための基本的考え方や対応方法について、マニュアルに記述するとともに、弁護士、警察、暴力追放推進センター等との現場レベルでの連携についても顧客サポート等管理責任者が明確に指示することが求められます。

4.記録、保存及び報告

相談・苦情等に的確に対応するためには、実態把握が極めて重要となります。
したがって、顧客サポート責任者は、統一的な手続、基準に基づき組織全体から情報を収集するために、次の点を明確にし、周知徹底を図ることが必要になります。

  • 相談・苦情等の記録作成の基準
    ・例えば、①保険金等の支払条件に関する問い合わせは要記録②営業所の所在地・営業時間等の確認に関する問い合わせは記録不要、など具体的な基準を設定
  • 相談・苦情等の受付、回答、確認手続
    ・現場(営業拠点等担当者)、職位者、顧客サポート担当者(現場)、顧客サポート等管理部門など関係者の役割を明確化
    ・内部関係者(顧客サポート等管理部門、コンプライアンス統括部門、取締役会等)への情報伝達方法、基準の明確化
  • 相談・苦情等の解決基準
    ・例えば、顧客が「分かりました」、「納得しました」と発言した段階、同意書を受け取った時点等を相談・苦情等の解決時点とする

また、顧客サポート等管理責任者からの取締役会等、コンプライアンス統括部門、内部監査部門等への報告手続、基準を定めることも重要です。

5.相談・苦情等の原因分析及び改善の実施

顧客サポート等の品質向上を図るためには、相談・苦情等の調査・分析が不可欠であり、相談・苦情等の発生原因を把握することが極めて重要なポイントになります。
調査・分析結果に基づく改善策の実施は、取締役会等及び関連部署を含め全社的な態勢として取り組んでいく必要があります。

6.顧客サポート等に関するモニタリングの実施

顧客サポート等管理責任者は、顧客サポート・マニュアルの遵守状況のモニタリング方法、項目、頻度等を定める必要があります。
モニタリングにあたっては、コンプライアンス統括部門、内部監査部門等と連携し、現場に過度な負担のかからない効果的な入手方法を導入する必要があります。
また、モニタリングの結果を態勢強化につなげるための不備事項に係る是正指導権を明確にすることも重要です。
なお、コールセンターについては、電話の受付状況、顧客の待ち時間等をモニタリングする体制(データ分析システム)を整備することも考えられます。

7.取締役会等への報告態勢

顧客サポート等管理に関する取締役会等(取締役会、各種重要会議、代表取締役、業務執行取締役)への報告手続、内容を書面で明確にする必要があります。定期報告事項については、書面の雛形を作成し、報告頻度を定めることが望まれます。
また、緊急連絡を要する事項、方法(電話連絡、Eメール等による書面の配布、会議の臨時招集等)についてもあらかじめ定めておく必要があります。

8.監査役への報告態勢

監査役がその機能を十分に発揮できるよう、監査役への報告事項、方法等を定める必要があります。
また、取締役会の支持による能動的な報告だけでなく、監査役の求めによる報告、資料提出等にも積極的に応じることが重要です。

 

評価・改善活動

顧客サポート等管理責任者は、顧客サポート態勢の改善を図るため、その機能状況を検証し、規程類、組織体制、情報伝達体制、研修、モニタリング方法等を適宜見直す必要があります。
コンプライアンス統括部門、内部監査部門等からの私的を踏まえ改善策の立案・実施に取り組むことは当然ですが、顧客サポート等管理責任者が自ら所管業務の実態を把握し、能動的に問題点の改善を図る態勢を定着させることが重要です。
また、顧客サポート等管理責任者は、自らの職務権限を超えるような重要な課題に対処するために、取締役会等への提言機会を確保することも大切です。

記事製作者

中小企業診断士 湯谷 一夫

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