自己査定の内容-債権の分類方法(債務者区分)

【金融検査マニュアルのチェック項目】

  • 自己査定基準の適切性の検証
    原則として信用格付に基づき、債務者の状況等により次のように区分する。
  • 自己査定結果の正確性の検証
    債務者区分の検証は、原則として信用格付に基づき、債務者の状況等により正確に債務者区分が行われているかを検証する。
    なお、プロジェクト・ファイナンスの債権については、回収の危険性の度合いに応じて、見倣し債務者区分を付して分類を行うことに留意する。
    債務者区分は、債務者の実態的な財務内容、資金繰り、収益力等により、その返済能力を検討し、債務者に対する貸出条件及びその履行状況を確認の上、業種等の特性を踏まえ、事業の継続性と収益性の見通し、キャッシュ・フローによる債務償還能力、経営改善計画等の妥当性、金融機関等の支援状況等を総合的に勘案し判断するものである。
    特に、中小・零細企業等については、当該企業の財務状況のみならず、当該企業の技術力、販売力や成長性、代表者等の役員に対する報酎;:の支払状況、代表者等の収入状況や資産内容、保証状況と保証能力等を総合的に勘案し、当該企業の経営実態を踏まえて判断するものとする。
    また、当該債務者の親会社等の状況を勘案する場合には、単に親会社の財務状況が良好であるとの理由たけで債務者区分を決定することは適当ではない。
    なお、当該債務者の親会社等の支援を勘案する場合には、親会社等の支援実績、今後の支援見込み等について十分検討する必要がある。
    さらに、債務者が、法令等に基づき、国又は地方公共団体が民間金融機関の貸出に対して利子補給等を行うなどの政策金融(以下「制度資金」という。)を利用している場合には、債務者の財務状況等の検討に加え、制度資金の内容をも踏まえた上で、債務者区分の検討を行うものとする。

(注)「プロジェクト・ファイナンス」とは、例えば、ノン・リコース・ローンのように、特定のプロジェクト(事業)に対するファイナンスであって、そのファイナンスの利払い及び返済の原資を原則として当該プロジェクトから生み出されるキャッシュ・フロー(収益)に限定し、そのファイナンスの担保を当該プロジェクトの資産に依存して行う金融手法である。以下同じ。

(注)「債務者の実態的な財務内容」の把握にあたり、十分な資本的性質が認められる借入金は、新規融資の場合、既存の借入金を転換した場合のいずれであっても、負債ではなく資本とみなすことができることに留意する。
(注)「キャッシュ・フロー」とは、当期利益に減価償却など非資金項目を調整した金額をいう。以下司じ。
(注)上記の適用に当たっては、「金融検査マニュアル別冊[中小企業融資編]」を参照。

「債務者区分」とは、債務者の財務状況、資金繰り、収益力等により、返済の能力を判定して、その状況等により債務者を次の5つに区分することをいいます。
債務者の区分に当たっては、「自己査定結果の正確性の検証」の中にあるように、債務者の状況等を詳しく、正確に把握しなければなりません。

区分における債務者の現況

債務者格付 債務者の説明 債務者の現況等の概要
正常先 業務状況が良好であり、かつ、財務内容にも特段の懸念がないと認められる債務者 企業資質等が良好で、財務内容にも特段問題がなく、債務履行状況の確実性が十分である。
要注意先 金利減免、棚上げを行っているなど貸出条件に問題のある債務者。
元本返済もしくは、利息支払が事実上延滞しているなど履行状況に問題がある債務者の他、業務状況が低調ないし、不安定な債務者又は財務内容に問題がある債務者など今後の管理に注意を要する債務者
今後の事業継続性について、当面懸念がないであろうと客観的に判断されるが、業務状況等が不安定であり約定どおりに債務履行されていない。
破綻懸念先 経営難の状態にあり、今後経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者 現状、事業を継続しているが、実質債務超過の状態に陥っており、業務状況が著しく低調で貸出金が延滞状態にあるなど元金及び利息の最終の回収について重大な懸念がある。
したがって、損失の発生の可能性が高い状況で、今後経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる。
実質破綻先 法的・形式的には、経営破綻にはないが、深刻な経営状態で再建の見込みが立たず実質的に経営破綻に陥っている債務者 事業を形式的には継続しているが、財務内容において多額の不良資産を内包している。
あるいは債務者の返済能力に比して明らかに過大な借入金が残存し、実質的に大幅な債務超過の状態に相当期間陥っており、事業好転の見込みがない状態である。
破綻先 法的・形式的な経営破綻の事実が発生している債務者 破産、清算、会社整理、会社更生、和議、手形交換所の取引停止処分等の事由により経営破綻に陥っている。

 

各債務者区分についての「自己査定基準の適切性の検証」、「自己査定結果の正確性の検証」の検証内容は、次のとおりです。

1.正常先

【金融検査マニュアルにおけるチェック項目】

  • 自己査定基準の適切性の検証
    正常先とは、業況が良好であり、かつ、財務内容にも特段の問題がないと認められる債務者をいう。
  • 自己査定結果の正確性の検証
    上記に掲げる債務者が正常先とされているかを検証する。

 

2.要注意先

【金融検査マニュアルにおけるチェック項目】

  • 自己査定基準の適切性の検証
    要注意先とは、金利減免・棚上げを行っているなど貸出条件に問題のある債務者、元本返済若しくは利息支払いが事実上延滞しているなど履行状況に問題がある債務者のほか、業況が低調ないしは不安定な債務者又は財務内容に問題がある債務者など今後の管理に注意を要する債務者をいう。
    また、要注意先となる債務者については、要管理先である債務者とそれ以外の債務者とを分けて管理することが望ましい。

(注)「要管理先である債務者」とは、要注意先の債務者のうち、当該債務者の債権の全部又は一部が要管理債権である債務者をいう。以下同じ。

「要注意先」とされる債務者には、「要管理先である債務者」と「それ以外の債務者」があります。

「要管理先である債務者」とは、「金融機能の再生のための緊急措置に関する法律(金融機能再生緊急措置法)」及び施行規則の定めによる債権区分において「要管理債権」に区分された債権がある債務者をいいます。


【金融検査マニュアルにおけるチェック項目】

  • 自己査定結果の正確性の検証
    上記に掲げる債務者が要注意先とされているかを検証する。
    また、要注意先となる債務者について、要管理先である債務者とそれ以外の債務者を分けて管理している場合には、当該区分が適切かを検証する。
    さらに、債務者の財務状況等により判断すれば、破綻懸念先と判断されるものが、単に当該債務者の親会社等の財務状況が良好であるとの理由で債務者区分を要注意先としていないかを検証する。

イ. 創業赤字で当初事業計画と大幅な莱離がない債務者は、正常先と判断して差し
   支えないものとする。
   創業赤字で当初事業計画と大幅な元離がない債務者とは、当初事業計画が合理
   的なものであり、かつ、事業の進捗状況と当初事業計画を比較し、実績が概ね
   事業計画どおりであり、その実現可能性が高いと認められる債務者をいう。
   具体的には、黒字化する期間が原則として概ね5年以内となっており、かつ、
   売上高等及び当期利益が事業計画に比して概ね7割以上確保されている債務者
   をいう。
   なお、本基準は、あくまでも事業計画の合理’|生実現可能性を検証するための
   目安であり、倉IJ業赤字となっている企業の債務者区分を検討するに当たって
   は、本基準を機械的・画一的に適用してはならない。
   債務者区分の検討は、業種等の特性を踏まえ、事業内容、事業規模、キャッシ
   ュ・フローによる債務償還能力等のほか、債務者の技術力、販売力及び成長性
   等を総合的に勘案して行うものとし、本基準の要件を形式的に充たさない債務
   者を直ちに要注意先と判断してはならない。

ロ. 赤字企業の場合、以下の債務者については、債務者区分を正常先と判断して差
   し支えないものとする。
   なお、本基準は、あくまでも赤字企業の債務者区分を検証するための目安であ
   り、本基準を機械的・画一的に適用してはならない。
   債務者区分の検討は、業種等の特性を踏まえ、債務者の業況、赤字決算の原因
   企業の内部留保の状況、今後の決算見込み等を総合的に勘案して行うものとし
   本基準の要件を形式的に充たさない債務者を直ちに要注意先と判断してはなら
   ない。
   ・赤字の原因が固定資産の売却損など一過性のものであり、短期間に黒字化す
    ることが確実と見込まれる債務者。
   ・中小・零細企業で赤字となっている債務者で、返済能力について特に問題が
    ないと認められる債務者。

ハ. 「不渡手形、融通手形及び期日決済に懸念のある割引手形を有する債務者であ
   っても、債務者の収益及び財務内容を勘案した結果、債務者が不渡手形等を負
   担する能力があると認められる場合には、当該債務者は正常先と判断して差し
   支えないものとする。
   なお、上記のイからハに該当しない債務者については、上記に照らして要注意
   先に該当するかを検討するものとし、直ちに要注意先と判断してはならない。

(注)上記の適用に当たっては、「金融検査マニュアル別冊[中小企業融資編]」を参照。

債務者区分が「要注意先」である債務者については、この「自己査定結果の正確性の検証」で示されているように、当該区分でよいかどうか、要管理先かどうかの判断は正確になされているか、中小企業融資編の内容を反映したものとなっているかという点がポイントです。

 

3.破綻懸念先

【金融検査マニュアルのチェック項目】

  • 自己査定基準の適切性の検証
    破綻懸念先とは、現状、経営破綻の状況にはないが、経営難の状態にあり、経営改善計画等の進捗状況が芳しくなく、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者(金融機関等の支援継続中の債務者を含む)をいう。
    具体的には、現状、事業を継続しているが、実質債務超過の状態に陥っており、業況が著しく低調̅で貸出金が延滞状態にあるなど元本及び利息の最終の回収について重大な懸念があり、従って損失の発生の可能性が高い状況で、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者をいう。
  • 自己査定結果の正確性の検証
    上記に掲げる債務者が破綻懸念先とされているかを検証する。
    ただし、金融機関等の支援を前提として経営改善計画等が策定されている債務者については、以下の全ての要件を充たしている場合には、経営改善計画等が合理的であり、その実現可能性が高いものと判断し、当該債務者は要注意先と判断して差し支えないものとする。
    なお、本基準は、あくまでも経営改善計画等の合理性、実現可能性を検証するための目安であり、経営改善計画等が策定されている企業の債務者区分を検討するに当たっては、本基準を機械的・画一的に適用してはならない。
    債務者区分の検討は、業種等の特性を踏まえ、事業の継続性と収益性の見通し、キャッシュ・フローによる債務償還能力、経営改善計画等の妥当性、金融機関等の支援状況等を総合的に勘案して行うものとし、本基準の要件を形式的に充たさない債務者を直ちに破綻懸念先と判断してはならない。
    特に、中小・零細企業等については、必ずしも経営改善計画等が策定されていない場合があり、この場合当該企業の財務状況のみならず、当該企業の技術力、販売力や成長性、代表者等の役員に対する報酬の支払状況、代表者等の収入状況や資産内容、保証状況と保証能力等を総合的に勘案し、当該企業の経営実態を踏まえて検討するものとし、経営改善計画等が策定されていない債務者を直ちに破綻懸念先と判断してはならない。
    さらに、債務者が制度資金を活用して経営改善計画等を策定しており、当該経営改善計画等が国又は都道府県の審査を経て策定されている場合には、債務者の実態を踏まえ、国又は都道府県の関与の状況等を総合的に勘案して検討するものとする。

    イ. 経営改善計画等の計画期間が原則として概ね5年以内であり、かつ、計画の実
       現可能性が高いこと。
       ただし、経営改善計画等の計画期間が5年を超え概ね10年以内となっている場
       合で、経営改善計画等の策定後、経営改善計画等の進捗状況が概ね計画どおり
      (売上高等及び当期利益が事業計画に比して概ね8割以上確保されていること)
      であり、今後も概ね計画どおりに推移すると認められる場合を含む。
    ロ. 計画期間終了後の当該債務者の債務者区分が原則として正常先となる計画であ
       ること。
       たたし、計画期間終了後の当該債務者が金融機関の再建支援を要せず、自助努
       力により事業の継続性を確保することが可能な状態となる場合は、計画期間終
       了後の当該債務者の債務者区分が要注意先であっても差し支えない。
    ハ. 全ての取引金融機関等(被検査金融機関を含む)において、経営改善計画等に
       基づく支援を行うことについて、正式な内部手続を経て合意されていることが
       文書その他により確認できること。
       ただし、被検査金融機関が単独で支援を行うことにより再建が可能な場合又は
       一部の取引金融機関等(被検査金融機関を含む)が支援を行うことにより再建
       が可能な場合は、当該支援金融機関等が経営改善計画等に基づく支援を行うこ
       とについて、正式な内部手続を経て合意されていることが文書その他により確
       認でき国れば足りるものとする。
    ニ. 機関等の支援の内容が、金利減免、融資残高維持等に止まり、債権放棄、現金
       贈与などの債務者に対する資金提供を伴うものではないこと。
       ただし、経営改善計画等の開始後、既に債権放棄、現金贈与などの債務者に対
       する資金提供を行い、今後はこれを行わないことが見込まれる場合、及び経営
       改善計画等に基づき今後債権放棄、現金贈与などの債務者に対する資金提供を
       計画的に行う必要があるが、既に支援による損失見込額を全額引当金として計
       上済で、言今後は損失の発生が見込まれない場合を含む。
       なお、制度資金を利用している場合で、当該制度資金に基づく国が補助する都
       道府県の利子補給等は債権放棄等には含まれないことに留意する。

(注)上記の適用に当たっては、「金融検査マニュアル別冊[中小企業融資編]」を参照。

破綻懸念先については、「金融機関等の支援を前提として経営改善計画等が策定されている債務者については、以下の全ての要件を充たしている場合には、経営改善計画等が合理的であり、その実現可能性が高いものと判断し、当該債務者は要注意先と判断して差し支えないものとする」というただし書きによる要注意先へのランクアップルールの適用状況が妥当か注意が必要です。

 

4.実質破綻先

【金融検査マニュアルのチェック項目】

  • 自己査定基準の適切性の検証
    実質破綻先とは、法的・形式的な経営破綻の事実は発生していないものの、深刻な経営難の状態にあり、再建の見通しがない状況にあると認められるなど実質的に経営破綻に陥っている債務者をいう。
    具体的には、事業を形式的には継続しているが、財務内容において多額の不良資産を内包し、あるいは債務者の返済能力に比して明らかに過大な借入金が残存し、実質的に大幅な債務超過の状態に相当期間陥っており、事業好転の見通しがない状況、天災、事故、経済情勢の急変等により多大な損失を被り(あるいは、これらに類する事由が生じており)、再建の見通しがない状況で、元金又は利息について実質的に長期間延滞している債務者などをいう。
  • 自己査定結果の正確性の検証
    上記に掲げる債務者が実質破綻先とされているかを検証する。法的・形式的には経営破綻の事実は発生していないが、自主廃業により営業所を廃止しているなど、実質的に営業を行っていないと認められる場合に、当該債務者を実質破綻先としているかを検証する。

イ. 「金融機関等の支援を前提として経営改善計画等が策定されている債務者」の
   うち、経営改善計画等の進捗状況が計画を大幅に下回っており、今後も急激な
   業績の回復が見込めず、経営改善計画等の見直しが行われていない場合、又は
   一部の取引金融機関において経営改善計画等に基づく支援を行うことについて
   合意が得られない場合で、今後、経営破綻に陥る可能性が確実と認められる債
   務者については、「深刻な経営難の状態にあり、再建の見通しがない状況にあ
   る」ものとして、実質破綻先と判断して差し支えないものとする。
ロ. 「実質的に長期間延滞している」とは、原則として実質的に6カ月以上延滞し
   ており、一過性の延滞とは認められないものをいう。

実質破綻先については、法的・形式的には経営破綻の事実は発生していない債務者について、実質的にはどうか金融機関が判断する必要があり、判断の適格性が問われます。

 

5.破綻先

【金融検査マニュアルのチェック項目】

  • 自己査定基準の適切性の検証
    破綻先とは、法的・形式的な経営破綻の事実が発生している債務者をいい、例えば、破産清算会社整理、会社更生民事再生手形交換所の取引停止処分等の事由により経営破綻に陥っている債務者をいう。
  • 自己査定結果の正確性の検証
    上記に掲げる債務者が破綻先とされているかを検証する。
    ただし、会社更生法、民事再生法等の規定による更生計画等の認可決定が行われた債務者については、破綻懸念先と判断して差し支えないものとする。さらに、更生計画等の認可決定が行われている債務者については、以下の要件を充たしている場合には、更生計画等が合理的であり、その実現可能性が高いものと判断し、当該債務者は要注意先と判断して差し支えないものとする。
    更生計画等の認可決定後、当該債務者の債務者区分が原則として概ね5年以内に正常先(当該債務者が金融機関等の再建支援を要せず、自助努力により事業の継続性を確保することが可能な状態となる場合は、債務者区分が要注意先であっても差し支えない)となる計画であり、かつ、更生計画等が概ね計画どおりに推移すると認められること。
    ただし、当該債務者の債務者区分が5年を超え概ね10年以内に正常先(当該債務者が金融機関等の再建支援を要せず、自助努力により事業の継続性を確保することが可能な状態となる場合は、債務者区分が要注意先であっても差し支えない)となる計画となっている場合で、更生計画等の認可決定後一定期間が経過し、更生計画等の進捗状況が概ね計画以上であり、今後も概ね計画どおりに推移すると認められる場合を含む。
    なお、特定調停法の規定による特定調停の申立が行われた債務者については、申立が行われたことをもって破綻先とはしないこととし、当該債務者の経営実態を踏まえて判断するものとする。

破綻先については、「会社更生法、民事再生法等の規定による更生計画等の認可決定が行われた債務者については、破綻懸念先と判断して差し支えないものとする。さらに、更生計画等の認可決定が行われている債務者については、以下の要件を充たしている場合には、更生計画等が合理的であり、その実現可能性が高いものと判断し、当該債務者は要注意先と判断して差し支えないものとする」とある点に留意しなければいけません。

記事製作者

中小企業診断士 湯谷 一夫

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