監査計画の策定と承認

年度監査計画の策定

年度毎にリスク・アセスメントに基づいた年度監査計画を策定する必要があります。
策定する年度監査計画は、監査の実施計画だけでなく内部監査部門の業務計画としての側面があります。

年度監査計画において策定すべき項目

3月期決算の企業の内部監査部門であれば、年明けの1月から2月にかけてリスク・アセスメントを実施した上で年度監査計画の原案を策定することになります。
年度監査計画においては、主に次の項目を策定します。

  • 内部監査年度基本方針・施策
  • 監査目標と業務範囲の設定
  • 個々の内部監査に関するアプローチ
  • 内部監査の年間スケジュール
  • 内部監査の品質管理に関する取り組み
  • 業務の効率化に関する取り組み
  • 内部監査の要因計画(専門教育、研修等を含む)
  • 予算計画

実際の年間内部監査実施スケジュールを立案する際には、各被監査部門等の繁忙期を考慮することも欠かせません。
なお、オンサイト・フォローアップ(フォローアップ監査)についても計画に盛り込みます。

年度監査計画の承認

年度監査計画は、内部監査部門長の責任の下で案を取りまとめ、取締役会等の承認を得るようにします。
自社の法令遵守、顧客保護等及びリスク管理態勢のうち、どの領域を優先して内部監査で実態を確認していくのか、初期に経営陣が認識しておくことは極めて重要なポイントとなります。
この年度監査計画の承認は、内部監査部門の人員や予算などの監査資源の確保に対する経営陣のコミットメントという側面もあります。

さらに、取締役会により承認された内部監査の実施であるということが被監査部門等の協力を獲得しやすくし、円滑な内部監査の実施に繋がるという意味合いもあります。

 

内部監査実施計画の策定と承認

個別の内部監査実施計画は、年度監査計画を元に事前調査を行った上で策定します。

内部監査実施計画において策定すべき項目

内部実施計画は、一般に個別の内部監査に係る計画・現場作業・報告の責任者となる社員によって原案が作成されます。
作成担当者は、年度監査計画で策定された監査目標、業務範囲、深度、アプローチ、スケジュール等を踏まえて、内部監査実施計画原案を作成していきます。
内部監査実施計画は、個別の内部監査における次のプロセスを示した企画書であると言えます。

個別の内部監査のプロセス(準備から監査報告まで)

  • 監査及び事前調査通知の発送
  • 事前調査に向けた準備
  • 事前調査
    (被監査部門等の業務の理解把握とリスク・アセスメント)
  • 監査実施計画の策定
    (監査手続プログラム、担当者、日程等の確定)
  • 監査の実施
    (事実検証、ヒアリング、問題点の特定とリスク分析)
  • 報告事項の作成
  • 被監査部門等との講評会
  • 監査報告書の作成と提出

内部監査実施計画策定のための事前調査

1.事前調査の目的

内部監査実施計画を策定するに当っては、被監査部門等の業務の状況を理解するとともに監査で検証すべき重点領域を把握します。
また、被監査部門等からの意見や提案が得られるように事前調査を実施します。
なお、事前調査の主な目的として、次の目的があります。

  • 被監査部門等の業務の状況を理解すること
  • 事前リスク・アセスメントを実施し、監査の過程で検証すべき監査要点、重点をおくべき領域等を把握すること
  • 監査のために利用する情報を取得すること
  • 追加的な監査が必要か決定すること

内部監査が目指すのは、経営レベルのモニタリング機能として意味のある作業を実施して、建設的な改善提案をまとめることによって、関係部署、関係者の期待に応えることになります。
期待に応えるために、どのようなアプローチでかかる目標を追求していくかは、被監査部門等の業務状況によって異なります。
事前調査は、被監査部門等の業務に対する最善の監査アプローチを決定していくための情報を収集するプロセスであり、内部監査プロセス全体の中で重要なものと言えます。

2.入手すべき情報

事前調査において、被監査部門等から入手すべき情報は、次の情報が挙げられます。

  • 業務内容と組織体制
    (組織図、権限規定、経営レベルの各種委員会への関与等を含む)
  • 業務計画と各種施策の状況
  • 各種方針・手続規程の概要
  • 経営管理情報(各種報告、リスク管理委員会等の情報)
  • 業務に関連する外部要因の情報
  • 当局検査・外部監査等の範囲、提出資料の概要と結果
  • 過去の内部検査・監査における改善提案に対する取組み、事故等の記録
  • 所管する業務にかかわる主要なリスクに関する説明
  • その他被監査部門等の業務に関連する情報

内部監査実施計画の策定

事前調査で収集した情報に基づき、内部監査実施計画をまとめていきます。
内部監査実施計画に記載する内容は、実施する内部監査の監査対象やアプローチにより異なってきますが、一般的に次の様な項目があります。

1.被監査部門等の業務に関する主要な情報

被監査部門等の業務に関する主要な情報は、主に事前リスク・アセスメントの根拠として、監査の全体計画におけるリスク・アセスメントで使用した属性に関するデータや業務の主要な情報ほかをコンパクトにまとめるとよいでしょう。

2.事前リスク・アセスメントの結果

事前リスク・アセスメントの結果としては、4つのリスクの状況や収益獲得上のリスク等をまとめます。

3.監査目標・要点、監査アプローチ、監査手続

個別の内部監査のプロセスにおいて、事前リスク・アセスメントとともに、もっとも重要な監査目標・要点、監査アプローチや監査手続を設定するプロセスを説明します。

内部監査業務の計画は、次のような監査業務手続を含み、作成されるべきであるとされています。(IIA「実践要綱」項番2200-1より)

【監査業務手続書】(内部監査プログラム)

  • 個々の業務(監査)の目標(監査目標)
  • 技術的要件・目標・リスク・プロセス・検証する取引を識別
  • 必要なテストの性質と範囲を記述
  • 個々の業務の実施において、情報を収集・分析・解釈・文書化するための内部監査人の手続を文書化
  • 個々の業務の実施中、適切と認められる場合には、内部監査部門長(CAE)又はその氏名を受けた者の承認のもと、プログラム修正の実施

監査要点は、金融検査マニュアルのチェック項目や他の解説等を手がかりに事前リスク・アセスメントの結果を踏まえて、検証すべき項目を設定します。

監査手続については、設定された監査要点を設定された時間内に検証していくために実施すべき手続、適用すべき監査技術等を記載します。
また、監査手続の文書化にも留意が必要になります。内部監査実施計画段階では、実施すべき手続を検討し、監査手続書(「監査(手続)プログラム」とも呼ばれます)にまとめることが必要になります。

監査手続書は、監査人が監査対象の拠点に出向く往査時に手続を実施した監査担当者名及び関連監査調書の番号を記入することにより、監査調書全体の目次の役割も果たします。

4.監査実施に必要な監査資源の決定(チーム編成等)

必要な内部監査要員の人数と経験の程度は、被監査部門等の規模や取引件数、内部監査の難易度、求められる専門性、時間的制約に基づき決定します。

まず、主査の他、主要な担当者を各人の知識、技能、習熟度を踏まえて決定します。
その上で、その他のチームメンバーを各人の知識、技能、習熟度、さらにOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)の必要性、メンバーのキャリア・パスを踏まえて決定します。
万が一、高度な専門知識が要求される場合や監査人員がどうしても揃わない場合には、外部の監査資源(コソーシング、アウトソーシング)の利用を検討します。

5.監査日程(内部監査の実施、結果とりまとめ、報告)

内部監査においては、内部監査実施前のプロセスに十分な時間をかけることが重要になります。

事前調査から内部監査実施計画の取りまとめには、例えば、1か月程度をかけて、この間同時に、被監査部門等の責任者や連絡窓口担当者との間で監査日程、必要資料、作業場所等について事前打ち合わせを行います。

被監査部署に出向いて内部監査を実施するための日数は、特別なものを除けば、比較的大掛かりな内部監査で3週間から1か月程度の時間が妥当になるでしょう。
しかし、監査日程を計画する時は、予想外の事態発生に備えて、多少のゆとりをもたせることが必要になります。例えば、予備日的な日程を確保するなどです。

一方で監査結果のとりまとめには、適時性が要求されます。

監査日程の例は、次のとおりです。

6.関係部署、関係者とのコミュニケーション

内部監査実施計画を取りまとめる過程で、被監査部門等に関係する担当役員、部門責任者とは必ず面談を持つべきです。面談の際の話題として次の事項が挙げられます。

  • 事前調査、事前リスク・アセスメントの結果
  • 計画された監査目標、監査要点、監査の実施時期
  • 内部監査担当者とその経歴
  • 内部監査過程におけるコミュニケーションの撮り方(方法、時期、出席者を含む)
  • 担当役員、部門責任者等の関心・要望
  • 監査報告書作成やフォローアップのプロセス

面談で討議された事項の要約は、文書化し、関係者に配布すると共に監査調書として保管しておきます。
可能であれば、事前調査段階で経営陣の関心・要望等を確認する機会があった方が良いところです。

被監査部門とのコミュニケーションについては、最終の報告時に限られることなく、内部監査の節目節目で進捗状況の報告や意見交換を行う機会を設定しておくとよいでしょう。
また、必要に応じて外部監査人ともコンタクトを撮って計画中の内部監査の分野に関して外部監査人が実施した作業の範囲と結果をヒアリングします。

7.監査結果の伝達方法(監査報告書の提出など)

監査結果をどのような方法(講評会から監査方っく書作成までのプロセス、結果の評価の仕方、監査報告書の様式等)で、いつ(例えば、講評会から何日後)、誰に伝達するか(被監査部門等の責任者、担当役員、経営レベルの委員会、取締役会等)、フォローアップをどのようにするか等を決定・確認しておく必要があります。
これらの事項も内部監査実施計画の段階において文書化して、現実的と考えられる程度で被監査部門等の責任者へ伝達する必要があります。

現場作業の最終日ないし現場作業終了後すみやかに被監査部門等の管理責任者と講評会を持ち、問題点や勧告内容、改善計画・スケジュールについて、十分話し合って同意を得るようにします。
監査報告書は、なるべく内部監査終了後1か月以内に提出するようにします。

内部監査実施計画の承認

内部監査実施計画は、内部監査の実施に当たって、内部監査部門長等、内部監査の実施権限を持つ者の承認を受け、その旨を記録しておかなければいけません。

内部監査が終了した時点で、計画と実際の内部監査実績との比較(所要時間、プログラム修正の有無、予算・実績比較、次回以降の内部監査への引き継ぎ事項等)を行い内部監査部門長に提出します。

提出された監査実施計画書は、監査手続書・監査報告書と共にデータベースにファイルして記録に残し、個別内部監査の事後評価、内部監査活動の年間評価等に際し、分析の対象にします。
こうした一連の文書は、内部監査機能の質の向上、プロセスの改善、内部監査員の評価・育成にとって重要な基礎データとなります。

監査実施計画の様式例

監査実施計画の様式も年度監査計画と同様に、企業によって様々です。
参考として、(社)内部監査協会の内部監査実務全書で紹介されている内部監査計画書の例、内部監査実施計画の任意フォーマットの例をご紹介します。

記事製作者

中小企業診断士 湯谷 一夫

コンサルティングのご依頼などサービスの詳細は、次のバナーをクリックしてください。  

コメントを残す