償却・引当と金融検査

償却・引当結果の適切性の検証

償却・引当は、「自己査定→償却・引当→財務諸表の作成→自己資本比率の算定」というプロセスの中核として位置づけられており、適切に行わなければなりません。
正確な事故査定結果に基づいた償却・引当額の総額及びその水準の適切性を検証することが必要です。
特に、償却・引当額の総額が信用リスクに見合った十分な水準となっているかを重視して検証する必要があります。

金融検査間が行う償却・引当の適切性の検証に関して、金融検査マニュアルの資産査定管理態勢確認検査用チェックリスト「Ⅲ.自己査定結果の正確性及び償却・引当結果の適切性」では、次のように示されています。

 

償却・引当結果の適切性

【チェック項目】

(ⅰ)別表2に掲げる方法により、実際の償却・引当額の算定が償却・引当基準に則って適切に行
   われているか。
(ⅱ)償却・引当結果が不適切又は不正確であると認められる場合には、問題の原因(例えば、償
   却・引当基準に起因するものか、償却・引当額の算定の運用に起因するものかなどの把握・
   分析や必要な改善策の検討・実施が適時適切に行われているか。
(ⅲ)償却・引当額の算定を行う部門等に対して、必要な教育・指導が行われているか。

償却・引当結果の適切性について、次の2つの側面からチェックを行います。

  1. 償却・引当基準そのものに問題はないか
  2. 基準を適用して実施された償却・引当の算定プロセスに起因する問題点がなかったか

償却・引当については、別途解説する資産査定管理態勢の確認検査用チェックリスト「別表2」の項目に沿って、償却・引当基準の適切性と償却・引当結果の正確性について検証されることになります。
すなわち、上記1.、2.の2つの局面からその内容をチェックすることになります。
さらに、問題点が判明した場合、償却・引当のどの段階に原因があり、必要な教育・指導の態勢がどうであったかが問われてきます。

 

自己査定における分類と償却・引当基準

債務者区分、自己査定における分類と償却・引当基準の関係を概観すると、次の表のようになります。

【債務者区分・分類と償却・引当】

分類区分 償却・引当基準
正常先に対する債権

・債券の平均残存期間に対応する今後の一定期間における予想損失額を見積もることが基本である。
 ただし、今後1年間の予想損失額を見積もっていれば妥当なものと認められる。

・少なくとも過去3算定期間の貸倒実績率又は倒産確立の平均値に基づき、過去の損失率の実績を算出し、これに将来の損失発生見込に係る必要な修正を行い、予想損失率を求め、正常先に対する債権額に予想損失率を乗じて算定する。

要注意先に対する債券

・債権の平均残存期間に対応する今後の一定期間における予想損失額を見積もりことが基本である。
 ただし、要注意先に対する債権を信用リスクの程度に応じて区分し、当該区分毎に合理的と認められる。
 例えば、要管理先に対する債権について平均残存期間又は今後3年間の予想損失額を見積りその他要注意先に対する債権について平均残存期間又は今後1年間の予想損失額を見積もっている場合は、通常、妥当なものと認められる。

・少なくとも過去3算定期間の貸倒実績率又は倒産確立の平均値に基づき、過去の損失率の実績を算出し、これに将来の損失発生見込みに係る必要な修正を行い、予想損失率を求め、要注意先に対する債権に予想損失率を乗じて算定する。

・要管理先の大口債務者については、DCF法を適用することが望ましい。
 DCF法は、債権単位で適用することが原則であるが、債務者単位で適用している場合であっても、合理性があると判断されれば妥当と認められる。

破綻懸念先に対する債権 ・原則として個別債務者毎に破綻懸念先に対する債権の合理的と認められる今後の一定期間における予想損失額を見積り、予想損失額に相当する額を貸倒引当金として計上する。通常、今後3年間の予想損失額を見積もっていれば妥当なものと認められる。
 ー Ⅲ分類とされた債権額に予想損失率を乗じた額を予想損失額とする方法
   (合理的に見積もられたキャッシュ・フローにより回収可能な部分を除い
    た残額を予想損失額とする方法を含む。)
 ー 売却可能な市場を有する債権について、合理的に算定された当該債権の売
   却可能額を回収見込額とし、債権額から回収見込額を控除した残額を予想
   損失額とする方法
 ー DCF法
実質破綻先に対する債権 ・実質破綻先及び破綻先に対する債権については、個別債務者毎にⅢ分類及びⅣ分類とされた債権額全額を予想損失額として、予想損失額に相当する額を貸倒引
当金として計上するか、直接償却する。
破綻先に対する債権 ・実質破綻先と同様

 

【貸倒償却及び貸倒引当金の計上イメージ】

記事製作者

中小企業診断士 湯谷 一夫

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