方針の策定

取締役は、経営方針に則り「顧客保護等管理方針(顧客保護及び利便の向上に向けた管理の方針)」を決定しなければなりません。

取締役の役割・責任

取締役は、会社の顧客の保護及び利便の向上の重要性を十分に認識し、顧客保護等を重視する必要があります。
まずは、顧客保護等の重要性に関して、取締役会を構成する各取締役の認識の共有化を図ることが必要です。

特に顧客保護等管理の担当取締役は、顧客保護等管理の重要性を十分に理解し、この理解に基づき当該会社の顧客保護等の現状を的確に認識し、適正な顧客保護等管理態勢の整備・確立に向けた方針及び具体的な方式を検討します。
また、取り扱う商品や対象とするマーケット、主な販売チャネルなど、当該会社の規模・特性を十分考慮した方針及び具体的な方策を検討します。

「顧客保護等」の内容として次の類型があります。
しかし、取組内容や基準が詳細に示されているものではありませんので、各会社が自らの経営方針や業務内容等を踏まえて顧客保護等管理態勢を整備することになります。
その際には、「顧客が会社と対等の立場で取引が行えるような前提条件を整備すること」という考えが1つの指針になると考えられます。

顧客は、資力、知識、経験等の面で会社より弱い立場にあり、様々な取り組みによって両者の格差の解消を図ることが求められます。顧客利便に配慮を欠く事態も各会社の立場が優位であることからこそ生じ得ることであり、顧客保護等の様々な手続を通して対等な関係構築を図ることが肝要です。

【顧客保護等の類型】

  1. 契約の成立、料金の収入、契約内容の変更、解約その他の保険契約の管理が迅速かつ適切に行われることの確保
  2. 料金の返戻金の支払が迅速かつ適切に行われることの確保
  3. 顧客からの問い合わせ、相談、要望、苦情及び紛争への対処が適切に処理されることの確保
  4. 顧客の情報が漏えい防止の観点から適切に管理されることの確保
  5. 会社の業務が外部委託される場合における業務遂行の適格性を確保し、顧客情報や顧客への対応が適切に実施されることの確保
  6. 当該会社又はグループ関連会社による取引に伴い顧客の利益が不当に害されることのないよう利益相反の管理が適切に行われることの確保
  7. その他会社の業務に関し顧客保護や利便の向上のために必要であると会社において判断した業務の管理が適切になされることの確保

担当役員の職責をいわゆる執行役員が担っている場合については、次の点等を総合的に検証した上で、担当取締役に求められる役割及び責任を十分果たしているか検証する必要があります。

  • 取締役会により、担当取締役と実質的に同等の権限が付与されている
  • 責任の所在が明確化されている
  • 業務執行について、取締役会による十分な監視が行われている

さらに、「モニタリング」とは、単に監視するだけでなく、警告、提案、指示など問題の抑止活動を含みます。

 

顧客保護等管理方針の整備・周知

取締役会は、経営方針に則り、「顧客保護等管理方針」を決定し、これを組織全体に周知することが求められています。
なお、方針は、単年度でも複数年度でも、取締役会により方針として策定されるものを指し、コンプライアンス・プログラムの中に含めているとしても方針として取り扱うことは可能と考えられます。

管理方針は、「顧客第一主義」等の抽象的な概念にとどまることなく、契約管理、支払管理、顧客の相談・苦情等の対処(顧客サポート等)、顧客情報管理、顧客関連業務に係る外部委託管理などを含んでいる必要があり、取締役会での議論を経て決定することが求められています。
なお、「顧客保護等管理方針」を取締役会で決定する前に、その原案を常務会、経営会議、コンプライアンス委員会など多数の取締役、経営幹部が参加する重要会議で議論することは妨げられません。
また、取締役会は、顧客保護等管理方針を制定するだけでなく、組織全体に「周知」する責任を負います。これは、取締役会が顧客保護管理方針等を組織に浸透させるための仕組みや計画の決定に関与し、その実施状況をモニタリングすべきことを意味します。

 

方針策定プロセスの見直し

顧客保護等管理に限ったことではありませんが、方針は一度策定すればそれで済むという性質のものではありません。「定期的に又は必要に応じて随時」方針策定プロセスそのものの見直しを行うことが求められます。
取締役会は、顧客保護等管理部門をはじめとする各部門からの報告や各部門に指示した調査結果等を踏まえ、適時適切に方針の見直しを図る必要がありますが、併せて、方針を策定するプロセス自体も見直す必要があります。
取締役会は、こうした見直しの実効性を担保するために、プロセスの明確化(文書化)を図り、定期的な検証を求められると言えます。

見直しサイクルの「定期的」については、特段年数の定めがあるものではありませんが、見直しのプロセスが有効に機能しているかという観点から判断します。

記事製作者

中小企業診断士 湯谷 一夫

コンサルティングのご依頼などサービスの詳細は、次のバナーをクリックしてください。  

コメントを残す