EaR(Earning at Risk:アーニング・アット・リスク)

資産・負債の将来的な動きを予想した上で期間損益の下方リスクを確立論的に把握する手法であるEaR(アーニング・アット・リスク)を解説します。

EaRについて

金利リスクの管理においても、前述したVaRを応用する金融機関が多くみられますが、VaRはマチュリティ・ラダー分析、デュレーション・ギャップ分析と同様に、ある1時点における資産・負債データに基づいた静的な分析であり、資産・負債の動きを考慮した動的な分析を行うことは不可能です。この問題を解決するために考案された手法がEaR(Earning at Risk:アーニング・アット・リスク)と呼ばれる金利リスク計測手法です。

EaRは、資産・負債の将来的な動きを予想した上で、ある確率のもとでの損益のブレの下方リスクを示す指標で、次のように定義されます。

EaR(Earning at Risk:アーニング・アット・リスク)

ある将来期間、例えば、今後5年間のフューチャー・バリュー(期間収益)の類型額の変動を、リスク管理の基軸に捉え、それを確立得t期に表記することで、最悪シナリオの最大損失額を確立論的に把握する手法

EaRは、銀行のバンキング勘定の金利リスクを網羅・包含するために必要な「取引の継続性」をリスク計量モデルに明確に取り入れることを目的としたものです。
例えば、貸出金の期日が3か月であっても、その約7割は借り換え(ロール・オーバー)されるということをモデル化することです。これは、将来の資産・負債の動きを動的に把握することに他なりません。

 

EaRのモデル構造

市場リスク計測手法としてみた場合、EaRには次のようなモデル構造の特徴があります。

  • 将来市場金利の確率変動モデル
  • 市場金利と各種指標金利間の関連分析
  • 期間収益シミュレーションモデル

EaRは、将来の時系列での金利推移パターンを無数に発生させ、その際の期間収益の分布状況を計測するものです。金利シナリオをどのように発生するかによって、リスク量も変わってきますので、将来の予想分布として合理的な説明ができることがポイントとなります。
発生モデルの形成・選択においては、①恣意性の排除、②モデルの現実説明性という2点について注意しなければなりません。

能動的なALMコントロールへの活用を目的とした場合、EaRモデル構築の重要なポイントの1つとして、バンキング勘定の金利リスクを長短金利ミスマッチ・リスク、ベーシス・リスクなどの因子別に捕捉することが挙げられます。
因子別の分析、構造把握により、どのような取引(オペレーション)を実施すべきか客観的な意思決定の導出に役立てることができます。
長短金利ミスマッチ・リスクにおいては、金利相互間のベーシス・リスク(スプレッド・リスクと同義)を除去した長短ミスマッチの骨格構造から生じるリスクを捕捉します。
また、指標金利観のベーシス・リスクには、代表的なものとして、短期プライム・レートとTIBOR等の市場金利、流動性預金金利や定期預金金利と市場金利、等、様々なものがあります。さらに、ベーシス・リスクを分析する上では、例えば、市中金利の変更と金融機関の短期プライムレートの改定に時間差があるなど、指標金利相互間の準連動性の統計解析、モデル化も重要になります。

 

記事製作者

中小企業診断士 湯谷 一夫

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