リスク計測の評価指標(リスク感応度、ボラティリティ、下方リスク)

市場リスクは、定量的に計測された指標をもとに管理されます。

リスク計測に用いられる評価指標は、リスク感応度、ボラティリティ、下方リスクの3種類に分類されます。
まず、3つのリスク指標について、定義、算出方法、長所短所について解説します。

リスクの評価指標

近年、市場リスクの管理は定量的に示された指標を元に行われています。これまでに、リスクを定量的に示すための評価指標として、多くの指標が提案されてきました。
それらを、リスク評価単位の視点から、おおよそ次の3つのグループに分類できます。

  • リスク感応度(エクスポージャー)
    基準となる経済指標や市場指標(市場金利、為替レート、株式指数など)が1単位変動すると、ポートフォリオの収益がどのくらい変動するかを示した値。
  • ボラティリティ
    将来の収益率分布の標準偏差もしくは分散。
  • 下方リスク(ダウンサイドリスク)
    将来の収益率分布の下方部分にだけ注目し、最悪どのくらいの損失がでるかを示した値。例えば、「1%の確率で起こる最大損失額」といった値で示される。VaRは、典型的な下方リスク指標である。

 

リスク感応度(エクスポージャー)

リスク感応度とは、「市場指標の変動が、どの程度のポートフォリオの価値の変動をもたらすか」という指標です。リスク計測の分野では、エクスポージャーとも言います。
ある市場指標の値とポートフォリオの価値(損益)が正比例する(線形の)関係にある場合、リスク感応度は次のようになります。

E=⊿P/⊿X

ただし、E:リスク感応度    
    P:ポートフォリオの価値
    X:市場指標      

このリスク感応度の算式において、⊿(デルタ)は各変数の変化量(差分)を示しています。
また、市場指標Xは、リスク計測の分野では、リスク・ファクターといわれますが、様々なものが用いられています。市場指標Xとして何を用いるかによってリスク感応度の性質が変わり、必要に応じて上記の式に変更が加えられます。
例えば、債券についてXに金利を用いた場合、リスク感応度Eは、債券のデュレーションを表し、また、株式についてXにTOPIXなどの株式インデックスを用いた場合には、リスク感応度Eは、株式シングル・インデックス・モデルのベータ(β)となります。
さらに、オプション取引の場合には、Xを原資産の価格とすると、リスク感応度Eは、オプションのデルタを表すことになります。

計算式が異なる例として、金利リスクのコンベクシティやオプションのガンマなどがあります。
オプション取引の場合、原資産の市場価格のみならず時間の経過や金利水準など様々な要因(リスク・パラメーター)によってオプションの価値(=オプション料)が複雑に変化するため、リスク感応度としても、デルタのほか、ガンマ、ベガ、セータ、ローなどがあります。(それらの定義は、後述の表を参照)

金融検査マニュアルの確認検査用チェックリストでは、オプション取引について、特にベガ・リスク(ボラティリティの大きさの変動がオプションの現在価値に影響を与えるリスク)、ガンマ・リスク(デルタの値の変動、すなわち、原資産価格の変動の速さがオプションの現在価値に影響を与えるリスク)をリスク管理対象とすべきか検討されるというチェック項目が置かれています。

【オプションリスク・パラメーター】

    オプション料の変化
デルタ=ーーーーーーーーー
    市場価値の変化

    デルタの変化
ガンマ=ーーーーーーーーー
    市場価格の変化

    オプション料の変化
ベガ =---------
    ボラティリティの変化

    オプション料の変化
セータ=---------
    期日までの期間の変化

    オプション料の変化
ロー =---------
    金利の変化

 

ボラティリティ

ボラティリティとは、将来の収益分布の標準偏差(又は、分散)のことであり、金融資産のリスクを計測するために最も一般的な指標です。
ポートフォリオの価値や証券価格など、将来の変動が不確実な場合、将来の値は、確率分布で表現され、ボラティリティは、数学的にはこの確率分布の標準偏差を言い、データの散らばり具合を示すものです。

ボラティリティが大きい(高い)ということは、近い将来に上昇するか下降するかはわからないが、いずれにしても上下に大きく振れる確率が高いことを意味しています。反対に、ボラティリティが小さい(低い)場合には、安定的な値動きが想定されることになります。
過去の市場価格データに基づいて算出されたボラティリティを「ヒストリカル・ボラティリティ」といいます。

ボラティリティの単位は、データの単位と同じになります。
データが収益率の場合、ボラティリティの単位も収益率となり、データが価格の場合には、ボラティリティの単位も価格となります。したがって、ボラティリティの数値を利用する際には、収益率と価格のどちらに基づくボラティリティか留意する必要があります。

 

下方リスク(ダウンサイドリスク)

ボラティリティは、資産価値の将来における確率分布の広がり(標準偏差)、不確実性があることを広くリスクとして捉えた指標になります。
しかしながら、一般に投資家がリスクと考えるのは、損失につながる資産価値の下落であって、資産価値が高まることをリスクと認識することは稀です。
そこで、分布の低い方、つまり、収益率・将来の資産価格の下落する方向に着目した指標として「下方リスク」があります。

下方リスクは、将来の不確実性に対応した「確率分布」と損失の「発生確率」という2つの要素から構成されます。この2つの要素が与えられたとき、損失確率に応じた下方リスクとしての損失額が算出されます。
ただし、算出過程での変数に収益率を用いた場合には、下方リスクの単位も金額ではなく収益率となります。
また、場合によっては、損失額そのものではなく、平均値からの距離を下方リスクということもあります。このように、下方リスクの捉え方にはいくつかの種類があります。
VaRha、ある損失確率が与えられた時の最大損失額であり、下方リスクの代表的な指標になります。市場リスク計測の場合、実務的には損失確率を1%か5%とする例が多いです。

記事製作者

中小企業診断士 湯谷 一夫

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