監査手続の実施に当たっての留意事項

監査手続を行う際に担当者として、留意しておくべき事項を紹介します。

内部監査における「正当な職業上の注意」

内部監査の担当者は、内部監査を実施するに当たり「正当な職業上の注意」を払う必要があります。

正当な職業上の注意とは、「同一又は類似の状態において、合理的慎重かつ有能な内部監査の担当者について期待される注意と技能の適用を要求するもの」です。
したがって、正当な職業上の注意は、絶対的に誤りのないこと、ずば抜けて高い能力を備えていることを意味するものではありません。
ただし、内部監査の担当者として求められる注意の水準は、実施中の監査の複雑さに対して見合ったものでなければいけません。
意図的な悪行、間違いや怠慢、非能率、浪費、精度の不適切性及び利害の不一致の可能性について、内部監査の担当者は、最新の注意を払うことが求められます。
また、内部監査の担当者は、異常な事項が最も起こりそうな状態や活動にも最新の注意を払う必要があります。
さらに、不適切な管理手段を明らかにし、一般に認められた手続や実務への準拠を促すための改善を勧告しなければなりません。

監査手続の実施範囲、深度

監査手続を行う範囲や深度については、内部統制に関連する次の要素を考慮して決定する必要があります。

  • 業務リスク、内部統制リスク、残存リスクの大きさ
  • 内部監査の目的
  • 経営陣の期待・要請
  • 内部監査対象項目の重要性
  • 証拠能力
  • 前回の内部監査における検証作業の範囲・深度と結果
  • 内部監査の担当者の勘
  • 作業実施にかかるコストと作業結果から得られる効果
  • 監査証拠の入手の容易性・可能性
  • 監査実施のタイミング

例えば、証拠能力については、外部から入手した取引報告書(原本)等は、証拠能力が高く、内部で作成された資料・コピー等は証拠能力が低いとみなされます。
したがって、内部統制リスクが高い項目については、入手可能であれば、外部証拠を直接入手する「確認」という監査手続を適用することになります。
また、前回の内部監査時に時間をかけて詳細に検証した項目について、特に問題となる事項が検出されず、現時点においても前回監査時から統制手続に特段の変更がなく、監査上の重要性が低いと判断される場合には、簡素なヒアリングと分析的手続のみで終了されることも考えられます。

内部監査の進め方・まとめ方における留意点

内部監査を行う前に準備を周到に行ったとしても、実際の内部監査の作業に着手すると目先の事象にとらわれて何をやろうとしているのか混乱したり、監査手続の意図が監査チームの中で十分に共有できていない状況が発生する可能性があります。
こうした場合には、常に監査目標や監査要点に立ち戻ること、現在行っている作業が内部監査全体の中でどのような意味を持つのか、立ち止まって再確認することが大切になります。
また、実際の内部監査における作業の中盤には、各監査要点について監査対象の核となる文書を特定して監査をまとめることが重要です。当初設定した監査目標及び監査要点に対応する監査結果の項目、監査証拠を揃えていくことになります。

被監査部門等とのやり取りにおける留意点

内部監査は、被監査部門等の理解と協力が得られないと内部監査の効果がまったく上がらないという状況になりかねません。こうした事態を避けるためには、例えば次のような説明を行い協力を引き出していく努力が必要となります。

  • 内部監査は、被監査部門等の各担当業務のアラ探しや問題の摘発をすることが目的ではなく、被監査部門等における業務が適切に行われていることの確認や構造上の問題点等を改善するために協力する機能であること。
  • 内部監査は、自社の発展のために必要な要改善事項を事実と客観的な分析に基づき、経営陣に報告する機能であること
    (多くの被監査部門等は、経営陣に訴えたいことがあるものの直接はできない状態であるという問題意識等をいくつか抱えていると考えられます)

被監査部門等の担当者の対応には、いくつかパターンがありますが例えば、実態を相当フランクに説明してくれるパターンと丁寧な説明ではあるものの当たり障りがない説明に終始するパターン等があります。
前者の場合には、担当者の説明を裏づける客観的な情報を入手して、担当者の単なる主観や不平不満のコピーではない客観的な分析を目指すようにします。
後者の場合には、内部監査が被監査部門の担当者の言明に依拠する部分が多く、担当者の説明の記録を監査の判断根拠として残すことを説明し、説明と実態が一致していることを監査日程の後半や取りまとめの過程で再確認していくようにします。

記事製作者

中小企業診断士 湯谷 一夫

コンサルティングのご依頼などサービスの詳細は、次のバナーをクリックしてください。  

コメントを残す