自己査定に係る金融検査

自己査定に係る金融検査は、「自己査定基準の適切性」、「自己査定結果の正確性」という切り口から検証されます。

自己査定結果の正確性の検証

自己査定は、「自己査定→償却・引当→財務諸表の作成→自己資本比率の策定」というプロセスの起点と位置付けられており、適切に行う必要があります。
したがって、自己査定基準の適切性及び自己査定結果の正確性のみならず、償却・引当額の総額及びその水準の適切性を検証することが必要であり、特に償却・引当額の総額が信用リスクに見合った十分な水準となっているかを重視して検証する必要があります。

金融検査官が行う自己査定結果の正確性の検証に関して、金融検査マニュアルの資産監査管理態勢確認検査用チェックリスト「Ⅲ.自己査定結果の正確性及び償却・引当結果の適切性」では、次のように示されています。

  1. 別表1に掲げる方法により、実際の自己査定が自己査定基準に則って正確に行われているか。
  2. 自己査定結果が不適切又は不正確であると認められる場合には、問題の原因(例えば、自己査定基準に起因するものか、自己査定の実施に起因するものかなど)の把握・分析や必要な改善策の検討・実施が適時適切に行われているか。
  3. 第一次査定部門及び第二次査定部門等の自己査定実施部門に関し、必要な教育・指導が行われているか。

 

自己査定の実施内容については、別途解説する「自己査定の内容」で後述する資産査定管理態勢の確認検査用チェックリスト「別表1」の項目に沿って、自己査定基準の適切性と自己査定結果の正確性について検証します。
すなわち、

  1. 自己査定基準そのものに不都合な点がないか
  2. 基準に問題はないが、その適用が誤っており、結果として実施された自己査定の正確性が損なわれていないか

という、2つの局面から自己査定の内容をチェックすることになります。

さらに、問題点が判明した場合、自己査定の一次査定・二次査定等のどの段階に原因があり、必要な教育・指導の態勢がどうであったかが問われてきます。

また、平成19年2月の改定金融検査マニュアルと同時に出された通達「自己査定、償却・引当及び自己資本比率の正確性及び適切性の検証に関する留意事項について」(平成19年2月16日金検80号)では以下の項目に留意するものとされています。

  1. 基準日
    自円沓定結果の正確性の検証を行う基準となる日(以下「基準日」という。)は、原則として、検査実施日(予告検査の場合は予告日。以下同じ。)の属する決算期(中間決算を含む。以下同じo)の直前期の決算期末日とする。
    ただし、検査実施日が直前期決算の決定のための取締役会等の開催日以前となる場合は、前々期の決算
    期末日とする。基準日の決定は、被検査金融機関の資産内容、検査期間等を総合的に勘案して判断することとする。具体的には、検査期間中に決算取締役会等が開催されることか見込まれ、かつ、被検査金融機関の資産内容等から判断して直前決算期における自己査定結果の正確‘性の検証を行うことが必要と認められる場合は、基準日は直前期の決算期末日とする。
  2. 抽出基準
    抽出基準については、被検査金融機関の規模、資産内容、前回検査の結果、検査人員、検査期間等を総合的に勘案のうえ、主任検査官が決定するものとする。
    また、主任検査官は、被検査金融機関の資産内容に特に問題がなく、前回検査の結果が良冒好であると認められる場合には、検査の効率化の観点から、原則として債務者への与信額が5,000万円又は被検査金融機関の資本の部合計(会員勘定合計)の1%のいずれか小さい額未満の債務者については自己査定結果の正確性の検証を省略することができるものとする。
    さらに、これに加え、必要に応じ、抽出率を下げることができるものとする。
    なお、主任検査官は、立入検査開始後においても、検査の実効性確保の観点から、必要に応じ、抽出基準を変更できるものとする。
  3. 具体的な検証方法等
    (1)検証の範囲
       正確性の検証の範囲は、上記②の抽出基準に基づき抽出された基準日における資産とし、特に被検査金融機関の自己査定により債務者区分が正常先以外とされた債務者に対する債権について、重点的に正確性の検証を行うものとする。
       また、被検査金融機関の自己査定基準の検証の結果、被検査金融機関の抽出基準に問題があり、債務者区分が正常先以外となるべきものが正常先とされているおそれがある場合は、債務者区分が正常先とされた債務者に対する債権についても、重点的に正確‘性の検証を行うものとする。

    (2)具体的な検証方法
       被検査金融機関の自己査定により、債務者区分が正常先以外とされた債務者に対する債権については、被検査金融機関が自己査定の際に使用した資料(ワークシート等)により、自己査定基準に基づき正確に自己査定が行われているかどうかを検証する。具体的には、債務者区分、分類区分及び分類金額が正確かを検証する。

      ①仮基準日において自己査定を行っている場合の取扱いについては、仮基準日での資料により
       仮基準日時点での債務者区分、分類区分及び分類金額が正確かを検証する。
       次に、仮基準日から基準日までに修正を行う場合の基準が明確に定められ、かつ、その基準
       が合理的であるかを検証し、当該基準に従い葦仮基準日から基準日までの間に、自己査定結
       果について必要な修正が行われているかを検証する。
       また、仮基準日が決算期末日の3カ月以内となっていない場合には、特に仮基準日から決算
       期末日までの事象の変化に伴う必要な修正が適正に行われているかを検証する。
       なお、仮基準日から基準日までに修正を行う場合の基準が合理的であるかどうかの判断は、
       被検査金融機関の資産規模、業務内容及び償却・引当額に与える影響等を総合的に勘案のう
       え行う。

     ②決算期末日以降の後発事象については、上記2の抽出基準により一定基準に該当するものの
      抽出を求め、その内容を精査の上、当該決算期に反映しているかどうかを検証する。決算期
      末日以降の後発事象の検証に当たっては、上記①と同様に、後発事象の見直しについての基
      準が合理的であるかどうかの検証を行う必要があることに留意する。重要な後発事象(第一
      事象)は当該決算期に反映する必要があることから、被検査金融機関の資産規模等を勘案の
      上、重要と思われる後発事象が発生しているものの、当該決算期に反映していない場合には
      会計監査人の意見を確認するものとする。

 

自己査定の正確性の判断

自己査定の正確性については、金融庁の通達「自己査定、償却・引当及び自己資本比率の正確性及び適切性の検証に関する留意事項について」(平成19年2月16日金検80号)によれば、次のように判断するものとしています。

自円査定の正確’性の検証の結果、被検査金融機関の自己査定結果が次に掲げるものとなっている場合には、不正確であるとの指摘を行うものとする。
なお、自己査定の正確性の判断は、検査実施日時点での債務者の財務状況等により判断するものではなく、仮基準日又は基準日時点での状況等により判断することに留意する。

(1)自己査定基準の適切性に問題があり、その結果、仮基準日時点又は基準日時点での債務者区
   分、分類区分又は分類金額が誤っていると認められる場合
(2)被検査金融機関が自己査定の抽出基準に従って抽出し、自己査定を行い分類しているものに
     ついて
  ①基準日時点で自己査定を行っている場合で、基準日時点の債務者区分、分類区分及び分類金
   額が誤っていると認められる場合
  ②仮基準日時点の自己査定を基準日時点の自己査定としている場合で、仮基準日時点の債務者
   区分、分類区分及び分類金額が誤っていると認められる場合
  ③仮基準日時点での自己査定は正確であるが、債務者の状況、貸出金の返済状況、担保評価額
   債権金額等、その後の状況に重要な変化があり、自己査定基準に照らせば、基準日時点での
   見直しが必要と認められるが、所要の見直しが行われておらず、基準日時点の債務者区分、
   分類区分及び分類金額が誤っていると認められる場合
(3)上記(2)以外で主任検査官が特に抽出を指示したものについて分類対象と判断される場合
   ただし、被検査金融機関が一定金額以下の債権について抽出対象としていない基準を定めて
   おり、被検査金融機関の資産規模、資産内容及び償却・引当額に与える影響等を総合的に勘
     案し、当該基準が合理的と認められる場合を除く。

自己査定の正確性の判断にあたって、不正確とされる原因として、(1)では、自己査定基準の適切性に問題がある場合について示しており、(2)では、自己査定基準はよいが、それに従って実施された自己査定結果が正しくない場合として3つのケースが挙げられています。

記事製作者

中小企業診断士 湯谷 一夫

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