計画から是正までのプロセス

内部監査を実施する過程は、大きく分けて4つのプロセス(①内部監査の計画、②内部監査の実施、③内部監査の結果報告、④問題点の是正)で構成されます。

内部監査は、当該企業の内部管理態勢(内部統制)全般にわたる広範囲が監査対象となりますので事前の計画の良し悪しが後続のプロセス、ひいては、内部監査全体の実効性に大きな影響を与えることになりますので十分な注意が必要となります。
また、より具体的な作業の流れを説明すると①内部監査の計画を策定し、②計画に従い自社の目指す目的を阻害するリスクを洗い出します。
③それに対応する内部統制を評価し、④残存するリスクが許容の範囲内であるかしかるべき基準に照らして問題の有無を判別した上で⑤原因を究明し、⑥改善を促します。

内部監査の着眼点の違い

従来実施されてきた検査では、本部等の所管部署が制定した規定や業務マニュアルにのっとって業務が行われているかチェック(準拠性の検証)して、担当社員の関連業務知識は、十分であるかを確認することだけで済ませたり、業務を導入した際の稟議書を形式的にチェックして済ませることが見受けられました。

一方、内部監査においては、業務を導入する際に管理プロセスが不十分であった場合のリスクに注目します。仮に相応のリスクが認められれば、内部監査手続きを実施します。内部監査実務プロセスについて、新商品・新規業務の導入を行う際の例を挙げて説明します。

大きな流れとしては、事前の準備とリスク・アセスメント(危険性や有害性の特定、リスクの見積り、優先度の設定、リスク低減措置の決定の一連の手順のこと)、被監査部門等へのインタビュー、資料の検討などを通じて、全般管理と個別管理それぞれに焦点を当てながら、内部管理態勢の構築面の全体を把握します。
さらに、内部管理の運用状況をサンプルで検証し、監査を進めていきます。そして、発見された事項と改善提案の取りまとめを行います。

ステップ1 監査要点

  • 新商品の導入に際し、信用リスクの存在等、リスク管理部門等によって適正に評価が行われているか。
  • 必要に応じて、法務担当部門、監査部門及びその他外部専門家の意見を踏まえた上で、リスクの評価結果を取締役会に報告し、承認を受けているか。

ステップ2 事前準備

  • 新商品導入にかかわる方針・手続規定(新商品導入の管理プロセスがわかるフローチャート等が望ましい)を所管部署から入手する
  • リスク管理部門から、過去半年に導入された新商品のリストを入手する。
  • 企画部から、過去半年に新商品が導入された際の稟議書を入手する。
  • 関係部署に当該サンプルにつき作成された一連の証拠類を入手する。
  • 関係部署の主要担当者と面談申込み日程を調整する。

ステップ3 監査手続

  • 新商品開発部署の担当者から、新商品導入の社内プロセスに関する情報を入手する。
  • 新商品導入の際のプロセスについて、関係部署の担当者にヒアリングを行うと共に関連資料の管理状態を監査(通査)します。
  • サンプルの新商品について、リスク管理部門、経理部門、法務部門及びコンプライアンス部門等において、どのような検討がなされたかヒアリングし、関連する資料の管理状態を監査(通査)し、所定のプロセスに準拠しているか検討する。

ステップ4 指摘事項

  • 新商品の導入に当たっての全社的なプロセスが明確に記録されていない。
  • サンプルの新商品Aについて、経理部門が監査法人と協議した事実が適切にきろくされていない。
  • サンプルの新商品Bについて、導入前のリーガルチェックで顧問弁護士の照会事項に対する所幹部からの回答がなく不完全であった。
  • サンプルの新商品Bについては、営業店に対し既存商品Yに準じた事務手続きが指示されていたが、新商品Bの内容と適合せず、顧客からの紹介に誤った説明をしてしまい苦情となった事例が見られた。

ステップ5 所見・改善提案

  • 企画部において、新商品開発・導入を全社的に管理するための組織として新商品導入委員会の設置を検討してはどうか
  • また、新商品開発・導入を全社的に管理するために、担当部署における手続き等具体的なプロセスを記録するべきである
  • 経理部門においては、新商品導入の際の監査法人との協議について、内容と結果を記録することを徹底すべきである
  • 法務・コンプライアンス部門においては、新商品導入前に個別商品に対応する必要な事務手続きを策定することを徹底すべきである

ステップ6 要フォローアップ事項

  • 新商品導入委員会の設置の検討、新商品開発・導入に関する手続き等のプロセスの記録に対する取り組みを決定し、提出していただきたい
  • 向こう半年間の新商品導入については、稟議書と関係部署で検討を加える際の関連資料の写しを提出していただきたい

 

内部監査を進める上でのポイント

  1. 金融検査マニュアルの該当するチェック項目は、監査上検証すべき命題である監査要点と位置付けられます。
  2. 監査要点を検証していく上で必要な事前調査として、新商品、新規業務導入の管理プロセスにかかわる資料やデータを被監査部門等から入手し、可能な限り事前検討(予習)を行います。
  3. 新商品、新規業務の導入に関するリスクにはどのようなものがあるか、リスクが発現した際の影響度合い(インパクト)、発生の可能性がどのくらいあるか、を事前に検討(リスクアセスメント)します。
  4. リスクが潜在している可能性がある箇所を重点的に検証していく監査手続を策定し、実施します。(リスクアプローチ)
  5. 監査手続を実施する上で、まず内部管理体制の構築面を理解把握する必要があります。
    例の場合、新商品、新規業務の導入のプロセス(各種手続)がどう構築されているかの全体像を把握します。
  6. プロセスを理解・把握した後に、内部管理体制の運用面について、統制手続がうまく機能しているかを中心に検証していきます。
    なお、運用面の検証は、通常、サンプリングによる試査のアプローチをとります。
    また、内部管理態勢の構築面、運用面を検証していくに当たっては、必要に応じて関連部署を横断的に見ていくことになります。
  7. 検証作業では、監査手続を実施して必要な監査証拠を入手します。監査手続の基本は、被監査部署等の担当者への質問になります。
  8. 監査要点や実施した手続及び発見された事項については、監査調書に記録し、監査報告書の報告内容のエビデンス(証拠)にします。
  9. 指摘事項には、内部管理態勢の構築面の事項と運用面の事項が含まれます。
  10. 監査結果に関する結論・所見を提示することはもちろんのこと、指摘事項が認められた場合は、必ず改善提案をします。
  11. 報告された指摘事項や改善提案については、事後のフォローアップ監査を実施します。

記事製作者

中小企業診断士 湯谷 一夫

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