リスク管理の基本方針の策定

リスクを定義し、特定した次のステップは、特定したリスクを管理するためのフレームワークを設計します。設計が決定すれば、その設計にしたがって、リスク管理体制を構築し実行することになります。

【リスク管理のフレームワーク】

 

リスクとリターンは、トレードオフの関係にあるため、多くの収益を得ようとするならば、リスクを取らなければなりませんし、リスクを取りたくないのであれば、少ない利益で我慢しなければいけません。
経営陣は、企業にとっての収益源である「リスク」について、どのようにリスクを取っていくのかを明確にするために、リスク管理に関する基本方針を打ち出す必要があります。このリスク管理の基本方針は、経営方針や戦略目標と合致したものでなければなりません。

経営方針と戦略目標の明確化

リスク管理を実践するにあたっては、次のようなステップで取り組む必要があります。

  1. 経営陣のリスク管理に対する十分な理解・認識を確保する
  2. 組織の経営方針と戦略目標を明確にし、方針と目標に沿ったリスク管理を行う

通常、収益とリスクは表裏一体であり、より多くの収益を獲得するためには、それに見合ったリスクをとらなければならないケースが多くあります。
したがって、取締役会は、組織の経営方針や戦略目標において、どの程度の収益を目標とするか、収益目標を達成するためにはどの程度のリスクを取るか、ということを明確にさだめていなければなりません。収益確保を優先しているにも関わらず、リスク管理を軽視したものであってはなりません。

収益とリスクのバランスを無視した組織運営では、収益のみに囚われ、リスク管理を軽視する組織風土が醸成されてしまいます。その結果、収益拡大に伴うリスクの増大に目がいかなくなり、リスクが顕在化してしまった場合には、企業価値に大きなダメージを与えることになります。

 

リスク管理の基本方針の策定

1.リスク管理の基本方針

経営陣によるリスク管理に対するコミットメントを組織内に周知徹底させるためには、リスク管理の基本方針の活率が不可欠となります。
リスク管理は、本質的にトップダウンの性質を持っているため、リスク管理の基本方針は、組織の経営方針や戦略目標等に配慮して、経営陣によって承認される必要があります。
「リスク管理の基本方針を確立する」、「リスク管理の基本方針を明文化、規程化する」ことは、リスク管理体制を構築するためのスタートラインであると同時に、組織の役職員一人ひとりに対する周知徹底の手段にもなります。リスクに対する経営陣の哲学や行動様式等をリスク管理の基本方針として定め、組織内に周知徹底することで、リスクに対する認識を醸成させることが重要なのです。

取締役会は、各部門の戦略目標、その下で管理すべきリスクの種類、そのリスクを管理するための組織体制、管理に関する権限、実際に管理するための手続等について決定し、それらをリスク管理の基本方針に落とし込まなければなりません。そして、その基本方針を明文規定として決定するわけです。

リスク管理の基本方針によって、新しい金融商品の取引開始やポートフォリオの管理など、組織全体のリスクのコントロールに関して、組織上の手続が明確に定めなくてはいけません。
なお、リスク管理の基本方針や手続は、組織全体に共通するものに合わせて、適切に組織内の個別の部署又は個別の関連会社にも適用される必要があります。同方針及び手続は、リスク管理に関わる各種決定に関するアカウンタビリティ(説明責任)の体系を定めることになります。具体的には、業務運営のあり方、許可された金融商品、ヘッジ戦略、ポジション・テイクの機会などを明示的に規程しなければなりません。
また、リスクに関する方針の中では、定量化が可能であれば、許容可能なリスクの水準を規定する定量的な数値が示される必要があります。さらに、こうした上限額は、特定の金融商品、ポートフォリオ、業務毎に設定されていなければなりません。

2.リスク管理の基本方針の定期的な見直し

リスク管理の基本方針や手続は、1回承認すればよいというものではありません。リスク管理の内容と水準については、定期的又は必要に応じて見直す必要があります。

実務においては、例外的な取引が発生する可能性がありますが避けることはできません。よって、異例取引等に対する特定の承認手続をリスク管理上、明確化しておく必要があります。
しかし、異例な取扱が状態化すると、リスク管理手続が抜け穴だらけになってしまい機能しなくなります。これを回避するためには、業務や取引の実態を分析し、全てのリスクに関する基本方針や手続の定期的な見直しを実施して、必要に応じた改正を行っていく必要があります。

 

記事製作者

中小企業診断士 湯谷 一夫

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