金利リスクの計測手法

代表的な金利リスクの計測手法と、それぞれの特徴について説明します。

金利リスクの計測

VaRが登場する以前から、金融機関の抱える金利リスクについては、単純なものから比較的複雑なものまで様々な計測手法が用いられてきました。
さらに、近年では、VaRの手法を発展させたEaRを金利リスク管理に用いる金融機関もあります。

今回は、次の代表的な金利リスクの計測手法について説明します。

  • マチュリティ・ラダー分析
  • デュレーション・ギャップ分析
  • BPV(ベーシス・ポイント・バリュー)
  • GPS(グリッド・ポイント・センシティビティ)

 

マチュリティ・ラダー分析

資産・負債の各項目について金利改定時期(現在の適用金利の期日)に応じてあらかじめ定めた区分に従って集計し、各区分における資産と負債との差額(ギャップ)を算出する方法です。
次の表は、マチュリティ・ラダーの一例です。

マチュリティ・ラダー分析では、各金利改定時期について資産・負債の加重平均残高と平均金利を算出することが一般的ですが、これによって各区分のギャップ・ポジションのコストや期間損益の概算見込みを立てることができます。

  1M 2M  
資産計(平残)(コスト) 1,000百万円
1.500%
1,500百万円
1.625%
・・・
負債計(平残)(コスト) 2,000百万円
0.950%
1,500百万円
1.025%
・・・

 

例えば、上記の例では、期間1か月(1M)のところで1,000百万円の負債超のポジションがあり、この区分だけを捉えてポジション解消を行おうとすると、1,000百万円の資産積み上げが必要となります。
また、資産・負債がマッチングしている1,000百万円の部分については、

1,000百万円×(1.500%-0.950%)×1か月/12か月=0.46百万円

が期間収益となります。

また、期間2か月(2M)では、資産・負債が同額となっていますので、金利差の分、

1,500百万円×(1.625%-1.025%)×2か月/12か月=1.50百万円

の収益計上が見込まれることになります。

マチュリティ・ラダー分析は、金利リスクの所在を把握するのに有益であり、報告用として金利ミスマッチを視覚的にとらえた次のような図を作成することも一般的です。

 

マチュリティ・ラダー分析によって金融機関の金利期間による調達・運用構造を把握することができます。
例えば、上図では、1年以内の短期で資金を調達し、4年以上の中長期で運用をしている構造となっています。したがって、この金融機関は、短期金利が上昇すると調達金利が上昇してしまい収益が減少し、長期金利が上昇すると金利上昇によって資産価値が下落するという金利リスクを負っていることが分かります。

マチュリティ・ラダー分析は、計算が容易で、かつ金利リスクの所在を視覚的に把握可能なため、その他のリスク管理手法が進んだ現在においても多くの金融機関で用いられています。しかしながら、マチュリティ・ラダー分析は、次のような問題点があります。

マチュリティ・ラダー分析の問題点

  • 金利リスクは、期間が長いほど大きくなるにも関わらず、短期と長期を同等に評価する誤解を与えやすいこと
  • 金利期間の区切り方によって金利リスクの所在が変化すること
  • 時価変動による損益の影響に関する情報を与えないこと

 

デュレーション・ギャップ分析

デュレーション・ギャップ分析は、マチュリティ・ラダー分析の欠点に対して改良を行った分析手法になります。
デュレーション・ギャップ分析は、資産・負債の金利感応度であるデュレーション(市場金利が1単位動いたときに、どれだけの資産・負債の価値変動を与えるかを示した感応度指数)を計算して、資産・負債のデュレーション・ギャップを把握し、金利リスクを管理するアプローチです。

デュレーションは、金利がある単位動いた時の価値変動ですから、将来的に金利上昇または下落による損失や収益の減少を回避するためには、資産と負債のデュレーションを一致させればよいことになります。これを、デュレーション・マッチングといいます。

しかしながら、デュレーション・ギャップ分析は、デュレーションという指標に依拠していることやデュレーションはあくまで現在の資産・負債に対して計算されることを等から次のような問題があります。

  • デュレーションは、イールド・カーブの平行移動を前提に計算されているため、実際のイールド・カーブの変動が異なる場合、数値にズレが生じること
  • デュレーションは、1時点における資産・負債の状況に基づく静的な分析であり、将来の資産・負債の変化を考慮した動的な分析ではないこと

BPVとGPS

1.ベーシス・ポイント・バリュー(BPV)

ベーシス・ポイント・バリュー(BPV)とは、すべての期間にわたる市場金利(イールド・カーブ全体)が1ベーシス・ポイント(=0.01%)上昇した場合におけるポートフォリオの現在価値の減少額をいいます。

先ほどの3年物利付債券の場合を例にとると、次のようになります。

期間(t) 1年目 2年目 3年目 累計
キャッシュフロー(rt) 103  
ディスカウント・ファクター
(DF=1/(1+rt)^t
1/1.02=0.9804 1/(1.025)2=0.9518 1/(1.03)3=0.9151  
現在価値(PV) 2.94 2.86 94.26 100.06
利子率
Rt=rt+0.01%
2.01% 2.51% 3.01%  
DF’=1/(1+Rt)^t 0.9803 0.9516 0.9149  
1b.p.上昇後の現在価値PV’ 2.94 2.85 94.23 100.02
BPV       0.04

 

2.グリッド・ポイント・センシビリティ(GPS)

グリッド・ポイント・センシビリティ(GPS)とは、ある特定の1期間の市場金利が1ベーシス・ポイント(=0.01%)上昇した場合におけるポートフォリオの現在価値の減少額をいいます。

BPVは、イールド・カーブ全体が一様に変化することによる現在価値の変化を見るものでしたが、グリッド・ポイント・センシビリティでは、さらに、どの期間の変動要因が現在価値に影響を与えるか、より詳細に把握することができます。

記事製作者

中小企業診断士 湯谷 一夫

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