主要な監査手続

内部監査における監査手続には、何の制約もありません。
どのような手続・技術を用いて内部監査を実施するかは、担当者に委ねられているのです。
重要なのは、どのような手続や技術を使用したかではなく、自社の内部管理態勢(内部統制)の抱えるリスクを的確に指摘し、経営陣や被監査部門の理解を得て改善を促すような監査結果(監査指摘事項)を導くための内部監査でなければならないということです。
そのためには、一般的にどのような監査手続・技術があるのか、状況に応じて適切なツールを用いることができるように、内部監査の担当者は、業務知識として習得しておく必要があります。

監査手続の種類

監査手続の種類として、例えば、関係監査の分野では、次の手続が挙げられています。(日本公認会計士協会 監査基準委員会報告書 第31号「監査証拠」)

監査手続は、これらに限られるものではありませんが、ここに挙げた監査手続の概要を理解しておくことは、内部監査の担当者にとっても非常に有益です。

  • 記録や文書の閲覧
  • 有形資産の実査
  • 観察
  • 質問
  • 確認
  • 再計算
  • 再実施
  • 分析的手続き

監査証拠の入手のための8つの監査手続

1.記録や文書の閲覧

紙媒体、電子媒体又はその他の媒体による企業内外の記録や文書を確かめる監査手続です。

記録、文書の内容又は情報源によって、さらに企業内部の記録や文書の場合には、当該文書の作成にかかわる内部統制の有効性によって、監査人が閲覧により入手する監査証拠の証明力が異なります。
運用評価手続として実施する記録や文書の閲覧の例としては、承認の有無を確かめることにあります。
なお、記録や文書の閲覧には、「証憑突合」、「帳簿突合」が含まれます。

例えば、株券や債券などの持ち分、権利等を示す文書は、資産の実在性を直接に示す監査証拠となります。
ただし、同文書からは、必ずしも所有権又は評価に関する監査証拠を入手できるとは限りません。
また、契約書を閲覧し、契約条件等を検討して、収益の認識についての会計方針の適用に関する監査証拠を得られることもあります。

2.有形資産の実査

監査人自らが現物の資産を確かめる監査手続です。

有形資産の実査からは、資産の実在性に関する証明力のある監査証拠を入手できますが必ずしも資産にかかわる権利と義務又は評価に関する監査証拠を入手できるわけではありません。
通常、個々の棚卸資産の実査は、実地棚卸の立会において併せて実施されます。

3.観察

業務処理のプロセスや手続を確かめる監査手続です。

観察には、施設や設備の視察、建設業における現場視察等も含まれます。
また、運用評価手続や実証手続として実施されると共にリスク評価手続としても実施されます。

観察では、プロセス又は手続の実施についての監査証拠を入手できます。
しかし、観察を行った時点のみに関する監査証拠であることや観察されているという事実により影響を受けることに注意しなければならない。
「立会」は、観察の一種であり、企業が実施する棚卸資産の実地棚卸状況を確かめる監査続となります。

4.質問

監査人が経営者、従業員又は外部の関係者に問い合わせて、説明又は回答を求める監査手続です。

質問は、監査の全過程で使用されます。
ただし、質問に対する回答のみでは、十分かつ適切な監査証拠となり得ないことが多いため、質問以外の監査手続の実施により補完する必要があります。

質問には、書面による質問と口頭による質問があります。
なお、質問に対する回答を評価することが不可欠であることに留意します。
例えば、質問に対する回答から、経営者が内部統制を無視する可能性に関する情報を入手した場合、監査人は、実施する手続を修正したり、監査手続を追加して実施することが必要になります。

監査人は、十分かつ適切な監査証拠を入手するために、質問に追加して他の監査手続を実施する場合があります。通常質問のみでは、財務諸表項目レベルの重要な虚偽の表示を発見するための十分かつ適切な監査証拠を入手できません。
さらに、質問のみでは、内部統制が有効に運用されているかどうかを確かめるためには、十分とはいえません。
質問を通じて入手した監査証拠を裏付けることは、特に重要です。
経営者の意志に関連した質問に関して、経営者の意思を裏付ける方法は限定されており、経営者の意思を実行に移した過去の実績、戦略等を選択した理由、その実行可能性などから判断します。
質問に対する口頭の回答を確認するためには、経営者から書面を入手します。例えば、重要な事項について、質問以外の監査手続では十分かつ適切な監査証拠が入手できない又は他の監査証拠の証明力が低い場合、経営者からの書面を入手することで証拠の証明力を高めるようにします。

5.確認

質問の一種であり、勘定残高とその明細に関連する情報又は現在の契約条件等について、監査人が企業の取引等の第三者に対して問合せを行い、その回答を直接入手し評価する監査手続です。
例えば、監査人は、債務者に対して、債権の直接確認を行います。

確認は、主に、勘定残高とその明細に関連する情報について、頻繁に使用されますが同情報以外にも使用されます。例えば、監査人は、契約条件や企業が第三者と行った取引について確認を行います。この場合、契約が変更されたかどうか確認し、変更されていれば、変更されている内容について問合せを行います。
また、確認は、一定の条件が付いていないことを確認します。例えば、収益認識に影響する付帯契約が付いていないことに関する監査証拠の入手に利用されます。

6.再計算

記録や文書の計算の正確性を監査人自ら研鑽し確かめる監査手続である。
例えば、企業から電子ファイルを入手し、その集計の正確性について、監査ツールにコンピュータを利用するCAAT(Computer Assisted Audit Techniques)によって照合する等、ITを利用することにより実施します。

7.再実施

企業が内部統制の一環として実施している手続又は内部統制を監査人自ら実施することによって確かめる監査手続です。
手作業又はCAATによって実施します。

8.分析的手続

監査人が財務データ相互間又は財務データ以外のデータと財務データとの間に存在する関係を利用して推定値を算出し、推定値と財務情報を比較することによって財務情報を検討する監査手続です。
推定値には、金額のほか比率、傾向等が含まれます。
また、重要な差異の調査は不可欠でであることに注意が必要です。

記事製作者

中小企業診断士 湯谷 一夫

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