経営陣の役割とクレジット・ポリシー

信用リスク管理態勢の構築は、経営陣が主導して行います。
融資戦略目標は経営方針に基づき策定し、自社における与信の考え方の基本方針として、「クレジット・ポリシー」を確立します。

経営陣の役割

経営陣は、主体的に信用リスク管理態勢の確立を推進しなくてはなりません。

リスク管理は、それ単体で存在するものではありません。
自社の経営方針や戦略の下でどのように業務を展開するかによって、当該業務によって生じるリスクをコントロールするために必要となるものです。
その意味で、融資・与信業務の取組方針を決定する経営陣の果たす役割が極めて重要になります。投融資の拡大を目指す業務推進の目標は、経営トップが決めるが、信用リスクの管理は所管部署に任せる、又は融資のことは全て融資部門長に一任するといった運営は認められるものではありません。

経営陣が信用リスク管理をリードしていくためには、まずは、取締役会を構成する一人ひとりの取締役が信用リスクに関する知見を十分に持つことが出発点になります。
取締役は、信用リスク管理の重要性を認識し、信用リスク管理の手法を十分理解した上で、課せられた役割を果たしていく必要があります。特に、信用リスク管理を担当する取締役は、一段と深い理解と認識が求められています。

【信用リスク管理について取締役が理解・認識すべき事項】

  • 信用リスクの管理手法及びモニタリング手法を理解すること
  • 信用格付・ポートフォリオ管理及び自己査定についての信用リスク管理上の必要性について認識すること
  • 償却・引当額の水準が信用リスクに見合った十分なものとなっているかを検証すること
  • 信用リスクの軽量化を経営に活用している場合は、軽量化の手法、データの整備状況、信用リスク量と自己資本との関係等の利用上の留意点について、理解していること

 

経営方針と融資戦略目標

信用リスク管理の実施に当って、金融機関全体の経営方針等に沿った融資戦略の目標を明確化することがその前提となります。
例えば、金融機関全体の経営方針として、「地元経済の活性化に貢献し、地元で活躍する中堅・中小企業に対して必要とされる金融サービスを提供する」とした場合には、このような経営方針は、当該金融機関の融資部門等の戦略目標に具体化し、反映されている必要があります。新規開拓や取引拡大を目指すターゲット顧客の業種、地理的な分布、信用供与のタイプ、期待収益率などに落とし込まれていなければならないということです。
なお、融資戦略の目標が特定の業種又は特定のグループなどに過度に集中していたり、当面の短期的な収益確保を目的としたものであったりしてはならないことは当然です。

 

クレジット・ポリシー

1.クレジット・ポリシーとは

信用リスク管理態勢の構築に当っては、まず、自社における与信の考え方の基本方針「クレジット・ポリシー」を確立する必要があります。
クレジット・ポリシーとは、各金融機関の定款・経営理念等を前提として、貸出業務における行動規範とすべき項目が具体的に明文化されている必要があります。
過去には、他行との貸出競争が激しくなったことを理由に審査基準を不当に緩めるなど、本来の銀行等の金融機関が果たすべき公共性の観点から不適切な与信が積極的に行われていた時期がありましたが、実は、こうした行動に対して大枠をはめるのがクレジット・ポリシーなのです。
クレジット・ポリシーとして、明文化された項目は、与信業務に携わる役職員に対して遵守を要求するものです。単なるお題目ではなく、意識すべき最重要の規範として十分に定着させなければなりません。

2.クレジット・ポリシーの内容

クレジット・ポリシーは、貸出に対する経営者の考え方そのものを示すものですから、各金融機関の社風や企業文化を強く反映します。そのため、各金融期間によって、それぞれ異なったものになるはずです。
ただし、一般的なクレジット・ポリシーの内容として、与信の基本姿勢・基本原則、法令等遵守のほか、取り扱う与信の種類、与信対象、与信の決裁権限、与信集中を調子するためのガイドライン等が挙げられます。
内部監査部門においては、クレジット・ポリシーの策定状況及び下位規程との整合性、遵守状況について検証することが求められます。

【クレジット・ポリシーの内容】

  • 融資の対象
  • 信用格付の基準
  • ポートフォリオの管理方針
  • クレジット・リミット
  • 決裁権限ほか

記事製作者

中小企業診断士 湯谷 一夫

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