経営陣の責務(内部統制システムの整備)

経営陣の責務として、内部統制システム(内部管理態勢)を構築することは、取締役の善管注意義務・忠実義務の内容をなします。
また、会社法においても取締役会の専決事項として、内部統制システムの基本方針を決定することが定められています。

内部統制システムに関する裁判所の判断

平成7年に発生した大和銀行ニューヨーク支店事件に関わる株主代表訴訟の大阪地裁による平成12年9月20日の第一審判決において、リスク管理体制を含む内部統制システムの構築が取締役の責務であることが明確に判示されました。
取締役会に各取締役を監視する責任があるということは当然の前提として審理が進められ、各取締役は、相互に監視する義務を有し、リスク管理に遺漏なきように努力することが求められています。
結果的に、当時の経営陣は職務を怠っていたとして、一部の取締役に損害賠償の支払が命じられました。

この裁判は、平成13年12月までに高裁レベルでの和解が成立しましたが、平成14年4月の神戸製鋼所株主代表訴訟事件における和解に際しての神戸地方裁判所の初見と合わせて、経営陣はリスク管理体制を含む内部統制システムを整備する義務を負うということが以後、司法判断として定着しました。

現在では、内部統制システムの構築は、取締役の善管注意義務・忠実義務の内容をなすものであるということが広く一般に理解されています。

 

法定された内部統制システムの整備

平成18年5月に施行された会社法では、内部統制システムの基本方針を決定することが取締役会の専決事項であって、これを代表取締役等に委ねることができないことが明確に規程されました(会社法362条4項6号)。
さらに、大会社においては、この体制整備の決定について取締役会決議を行うとともに、決議された内容を事業報告で開示することが定められています。

会社法362条

4 取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。

一 重要な財産の処分及び譲受け
二 多額の借財
三 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
四 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
五 (略)
六 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
七 (略)

5 大会社である取締役会設置会社においては、取締役会は、前項六号に掲げる事項を決定しなければならない。

同条の4項6号を受けた会社法施行規則100条1項では、「業務の適正を確保するための体制」として次のものを列挙しています。

  • 取締役の職務の執行に関わる情報の保存及び管理に関する体制
  • 損失の危険の管理に関する規程その他の体制
  • 取締役の職務の執行が非効率的に行われることを確保するための体制
  • 使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制
  • 当該株式会社並びにその親会社及び小会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制

これらの規程により、リスク管理、コンプライアンスやグループ管理を含む内部統制に関わる体制を整備しなければならないことが法的な義務として明確化されたことが大きなポイントとされます。

記事製作者

中小企業診断士 湯谷 一夫

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