市場業務の概要

市場業務として、トレーディング業務、バンキング業務について解説します。
バンキング勘定の市場リスク管理が重要となります。

金融機関における市場業務(トレーディング業務とバンキング業務)

金融機関における市場業務の概要について、整理します。

金融機関における市場業務は、市場において短期的な売買を行うことで収益をあげることを目的とする業務である「トレーディング業務」と、中長期的な視点から収益を得る目的で行われる業務である「バンキング業務」の2つに大別できます。

トレーディング業務とバンキング業務の違いは、次の点が異なります。

  1. 目的
  2. 勘定区分
  3. BISの自己資本比率規制の対象か否か
    (ただし、為替リスク及コモディティ・リスクについてはバンキング勘定のもとも参入)

なお、市場業務として執行する取引種別(為替取引、資金取引、デリバティブ取引、債券取引など)から見た場合には、トレーディング業務とバンキング業務の区別はありません。

トレーディング業務に関わる資産・負債は「トレーディング勘定(特定取引勘定)」として区分経理され、他方、これに該当しない伝統的な預貸金の資産・負債やALM(資産・負債管理)に関わる市場取引については、「バンキング勘定(非特定取引勘定)」で経理されます。
我が国では、自己資本比率規制が導入された当時、トレーディング勘定には、時価評価が求められていましたが、バンキング勘定は自己評価されていませんでしたので、両勘定を厳密に区分する必要性が高く、特定取引勘定を設置するには、当局による認可を要し、相応のリスク管理態勢が必要とされていました。その後、バンキング勘定においても金融商品時価会計が導入されたことから、銀行法が改正され、2002年2月より特定取引勘定の設置は当局届出事項に変更されています。

  トレーディング業務 バンキング業務
目的 短期的な売買を行うことで収益を上げること 中長期的な視点から収益を得ること
勘定区分 特定取引勘定 バンキング(非特定取引)勘定
BIS自己資本比率規制 マーケット・リスク相当額算出対象 原則として、算出対象外
(為替リスク、コモディティ・リスクを除く)
主な取引等 為替取引、資金取引、デリバティブ取引、債券取引など 同左
預金、貸出金、株式、債券投資

 

 

バンキング勘定の市場リスク

バンキング勘定には、預金や貸出等の伝統的な業務が含まれており、バンキング勘定の主な市場リスクとしては、預金や貸出等の資産・負債の金利期間ミスマッチによる金利リスク、債券投資に係る金利リスク、政策保有株式の株式リスク及び外貨建て取引・貿易為替取引に伴う為替リスクを挙げることができます。
また、バンキング勘定では、金融機関全体のALM(資産・負債管理)に伴う取引及び流動性リスク管理のための資金繰り業務としての短期金融市場での取引を実施しており、これに係るリスク管理も必要となります。

金融機関にとっての市場リスクを概観すると、主要行ではバンキング勘定の政策株式リスクと金利リスクが大きな部分を占めており地域金融機関では、さらに市場リスクの大半がバンキング業務に所在しています。
その意味で、金融当局の関心も、保有株式の状況や債券投資、特に、仕組債や証券化商品、ヘッジ・ファンド、プライベート・エクイティ、不動産ファンド、従来の金融商品とはリスク特性とは異なる「オルタナティブ投資」等に向けられてきています。

市場業務や市場リスク管理態勢に対する内部監査を行う場合には、自社の市場業務としてどこの部署でどのような業務を行っており、どこの部門に市場リスクがあるのかを的確に把握することが重要なポイントとなります。

記事製作者

中小企業診断士 湯谷 一夫

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