与信集中とポートフォリオ管理

過去に金融機関が破綻した原因としては、与信が集中したことが挙げられます。
なお、融資案件での個別審査では、与信集中リスクを回避できません。
そのため、ポートフォリオ管理が重要になります。

リスク集中防止の必要性

個別の融資案件に関する審査をどれだけ厳正化しても、与信先の業界構成を全体として見た場合、特定の業種や分野に偏っていると、景気の変動、経済の構造的な変動により金融機関が多額の損失を被る可能性が高くなります。
国内、海外を問わず与信の集中が金融機関の経営破綻の原因となった例は数多く見られます。
例えば、わが国では、バブル期に土地関連取引に係る不動産業、建設業、ノンバンクの3業種向けの融資が集中し、バブル崩壊によって、巨額の不良債権を抱えることとなりました。
また、米国の金融機関は、1970年代以降、ラテン・アメリカの累積債務国問題、LBO(Leveraged buy-out)関連の融資、商業用不動産融資、サブプライム問題と数度にわたる危機を経験しています。

こうした教訓から、与信について、債務者別、産業別、地域別、格付別などの集中度合いを定期的にチェックすることにより(内容は、役員にも報告)、特定分野への過度の与信集中によるリスクの拡大を回避するポートフォリオ管理が極めて重要になります。

 

ポートフォリオ管理の方法

ポートフォリオによるリスク分散の考え方は、リスク管理の基本として頭では理解しやすいですが、与信管理の実務として実施していくには困難を伴います。

ある特定分野への与信が高収益で遅滞の可能性も低く有望との判断に基づいて積極的に進める段階では、これを抑制することには相当の抵抗感があるものです。
過去の例を見ても、遅滞が発生し始めた時期になって、気づいてみればすでに与信の集中が進行し手遅れとなって問題化した例が多いのです。
また、与信業務の場合、相手方(与信供与先)がいますので、例えば、既にある特定分野への与信集中が判明した場合であっても、状況の改善、解消には相応の機関が必要となりますし、最悪の場合には、認識されているが改善する手立てがないという状況もあり得ます。
したがって、クレジット・ポリシーとして、事前に重要なリスク分野(例えば、不動産業に対する融資、国別融資等)の与信基準やリミットを設定しておくことが極めて重要なのです。

与信ポートフォリオのリスク集中のモニター

与信ポートフォリオ全体に関わるリスク集中の状況をモニターする部門は、与信ポートフォリオを業種別、国別、地域別、資金使途別、融資形態別、企業規模別、信用格付別等に分類し、融資の特定分野への集中状況、特定分野への貸出の急増、遅滞の発生等をモニターし、組織全体における信用リスクの増減状況を分析し、分析結果を経営者に定期的に報告する機能を担っています。

与信ポートフォリオ全体の管理

与信ポートフォリオ全体を管理する部門は、リスク分野毎の融資残高の推移をモニターし、当該分野へのリスクが高まる次の事態が予想される場合等には、経営者にはかり、当該分野への融資のリミット設定、特別の厳格な承認基準・手続を課すことが必要です。そして、その分野への新規融資の抑制、回収を確実化する措置をとることになります。

  • 融資残高の異常な伸び
  • 融資全体に占める割合が適正な水準を超える場合
  • 当該分野における遅滞・貸倒れの発生に増加の兆候が見える場合
  • 経済環境の変化等

ポートフォリオのグルーピング

ポートフォリオをグルーピングする場合には、共通のリスク要因により、財務状態が影響を受ける融資先をまとめることがポイントになります。
例えば、過去の累積債務国向け融資では、メキシコ、ブラジル、アルゼンチンへの貸付を別々のリスク・カテゴリーとして管理していた銀行が多かったのですが、結果的にこれらの国々のリスクは、同一のものでした。
また、企業活動は、業種の概念を超えて変化することもありますので業種分類が適切かどうか見直すことも必要です。
それぞれの金融機関において、専門的な目で債務者の最適なグループ化を研究し、リスクリミットの定め方についてもキメの細かい工夫を行っていくことが、与信ポートフォリオ管理を進めていく上で必要となります。

 

大口融資の規制・管理

与信リスクの集中は、一債務者、一関連企業グループに対する過度の融資を行うことによっても生じます。
バブル期には、一債務者に巨額の資金を貸し出し、それが焦げ付くことによって多額の損失を招いた例が多く見られました。

一債務者、一関連企業グループに対する与信限度については、銀行法に大口融資規制の規程があります。
しかし、これは、あくまで、法律上の最低限守るべき基準を定めたものに過ぎず、各銀行では、それぞれの経営方針の下、法律の枠内でさらにキメの細かい与信限度枠を定めていく必要があります。
なお、名義分割や迂回融資を防ぐ観点から、融資限度枠は、一債務者当りの枠の他に、債務者の関連グループ全体に対するもの、及び銀行の関連グループ全体から相手グループ全体に対する枠を設定する等、「グループ管理」を徹底させることが重要です。

記事製作者

中小企業診断士 湯谷 一夫

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