個別の問題点(支払管理態勢)

支払管理における留意事項、特に、支払漏れや不当な不払い・支払遅延の防止等、契約者等保護の観点から重要な施策を解説します。

支払請求の受付等

  • 支払請求に関する説明・案内等
    発生した支払事由に適合した請求が遺漏なく行われるように、契約者に対し、支払請求手続の案内等として、十分かつ分かりやすい説明が行われる態勢が整備されている必要があります。

    支払管理部門は、支払請求手続の案内等として、契約者等に交付する書面や請求書等の帳票について、商品やサービスが多様化していることなどを踏まえ、請求漏れを未然防止するとともに、分かりやすい内容となるよう、見直しを適時適切に行う必要があります。

  • 代理人等による請求手続の整備
    支払管理部門は、受取人が支払請求を行えない場合、受取人に代わる代理人等が請求することができるような手続を整備しておく必要があります。
  • 請求の受付後の処理
    契約者等からの支払請求の受付後は、公平・公正に支払事由を検討し、その結果、相当期間の調査が必要となる際には、契約者等にその旨を通知する態勢が整備される必要があります。

 

事故の事実関係及び損害の調査・確認

  • 事故の事実関係の調査
    契約者等にとって、有利不利な事実を問わず、公平・公正に事実の調査を行う態勢(事後検証を含む。)を整備します。

    支払管理部門は、個別案件に関する事実関係の調査等について、迅速な支払に向けた適切な進捗管理を行います。

    自己の事実関係の確認にあたって、必要な同意を取得した上で、支払事由の有無の判断をするために十分かつ正確な調査を行う態勢を整備します。
    例えば、次のような確認を行っている必要があります。
    ・契約関係者や専門家等に対する確認等により正確な事実関係の確認
    ・災害等を原因とする事故の場合には、事後現場や警察署、目撃者等による正確な事実関係の確認等

    調査にあたっては、関係当事者及び第三者の名誉、信用、プライバシー等の権利を不当に損なうことのないように態勢を整備します。

  • 不適切な顧客対応の防止
    支払管理部門は、契約者等、事故の被害者、遺族等に対する不適切な対応を防止する方策を講じる必要があります。
    例えば、契約者等、事故の被害者、遺族等に対し、誤解を与える言動により和解を不当に勧めていないか。
  • 損害額の調査、決定
    損害額の調査、決定を適切に行う態勢が整備されているか。
    例えば、支払管理部門は、次の点に留意して管理する必要があります。
    ・専門家による損害額の調査を必要に応じ行っているか。
    ・支払金額の算出にあたっての算出根拠の明確化及びその妥当性の検証を行っているか。
    ・損害額決定に至るまでの未払金の管理を適切に行っているか。
    ・支払先(受取人など)の確認を行っているか。
  • 示談交渉
    示談交渉等について、例えば、次の点に留意して管理を行う態勢を整備する必要があります。
    ・過失相殺の適用について、十分に検討しているか。
    ・間接損害(代車費用、休業損害等)について、十分に検討しているか。
    ・訴訟事案の管理は適切に行われているか。

 

支払等の迅速性・適切性の確保

1.支払事由の管理

契約者等から請求が行われた案件以外にも、会社側において支払漏れを防止するための措置を十分に確保しておく必要があります。
特に留意すべき事例として、「契約の失効に伴う返戻金・契約満了に伴う返戻金の見落としによる支払漏れ」、「契約に付随する特約の見落としによる支払漏れ」が挙げられ、システムの整備等によりこれらを防止する必要があります。

2.相互牽制等

会社において、支払事務のシステム化をいかに進展させたとしても、支払の審査等に人の判断が介在する領域が残ることは現時点では否定できません。正確かつ公正な審査等が行われるためには、複数人あるいは複数部署による相互検証を行う態勢が必要となります。
もちろん、複数に寄る検証を行わないことが直ちに否定されるものではありませんが、その場合には、業務特性あるいは代替的な措置等により問題が生じないことについて、説明責任を果たすことが経営陣に求められることになると考えるべきです。

3.支払査定

契約者保護等の観点から、不払いの決定等については、必要に応じて「リーガルチェック等」、「医的判断等」、「外部の弁護士による意見書の取得」等、慎重な対応をとることが求められます。
なお、リーガルチェック等とは、コンプライアンス・チェックを含み、例えば、法務担当者、法務担当部署、コンプライアンス担当者、コンプライアンス統括部門又は社内外の弁護士等の専門家により内部規定等の一貫性・整合性や取引及び業務の違法性について法的側面から検証することをいいます。法律家の意見書を取得することと同義ではない点に留意が必要です。

4.不当な支払の防止

不払事由があるにも関わらず、恣意的(思いついたまま)に支払を行うことを防止する態勢となっている必要があります。
例えば、反社会的勢力等からの不当な請求等に対しては、コンプライアンス統括部門や顧客サポート等管理責任者等との連携の上、毅然とした対応が行われている必要があります。

5.不当な支払抑制・支払遅延の防止

前述のとおり、短期的な営業成績優先の経営姿勢から、不当な支払抑制や支払遅延は避けなければなりません。
そのため、会社として組織的な防止の仕組みを整備する必要があります。
例えば、次の点について、仕組みを構築する必要があります。

  • 不当な支払抑制を防止する態勢となっているか。
    例えば、支払の総額に上限枠を設ける又は合理的根拠なく支払単価を下げる等の不当な施策が実行されていないか。
  • 不当な支払遅延を防止する態勢となっているか。
  • 支払を据え置きすることについて、過剰な勧誘を行わないよう防止策を講ずる態勢となっているか。
  • 約款等で定められた調査機関等を経過した後の遅延利息が適切に支払われる態勢となっているか。
  • 複数回の請求や苦情がなければ支払わないなどの不当な取り扱いを防止する態勢となっているか。

6.期限等の管理

期限等の管理については、契約者保護の観点等から、保険会社側に不当に有利、あるいは恣意的な運営を回避するよう、社内手続を整備する必要があります。

7.契約者等への説明等

契約者等への不十分な説明は、苦情等への発展の可能性も高く、結果的に会社のみならず業界全体の信頼を損なうことにも繋がりかねません。特に、支払に日数を要する、あるいは不払いとする等のような顧客にとっては不利な扱いとなるケースに対しては、十分な説明・対応態勢を確保しておくことが重要です。
具体的には、顧客説明のための方針、規程、説明のためのマニュアル等でこれらの点を明示すること、社員などにこれらを周知し実践させること、実行状況を定期的に確認すること、といった取組が求められます。

 

支払管理の処理に係る記録等の保管

支払は、重要な機能であり、それが適切に行われたことを事後的に検証するためには、十分な記録・証跡が作成・保存される必要があります。
これらの記録については、その様式・雛形等をマニュアル等において明確化し、事後の確認において必要な情報が確実に保存されるよう手続を確立しておく必要があります。
また、部署内での定期点検等の仕組みを導入し、これらの記録の保存状況を自主的にチェックしていくといった取組も望まれます。

【保存すべき記録】

  • 調査の経過及び結果に関する記録
  • 契約者等との交渉の経緯に関する記録
  • 支払査定の記録
  • 請求放棄の処理に係る記録 等

記事製作者

中小企業診断士 湯谷 一夫

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