内部規程・組織体制の整備

取締役会等は、信用リスク管理部門を設置して、管理者や担当者を配置し、信用リスク管理規程を承認します。
また、取締役会等への報告・承認・監査役への報告の体制を整備します。
内部監査部門は、信用リスク管理態勢の内部監査を実施する必要があります。

 

内部規程の整備・周知

【金融検査マニュアルのチェック項目】

取締役会等は、信用リスク管理方針に則り、信用リスク管理に関する取決めを明確に定めた内部規程(以下「信用リスク管理規程」という。)を信用リスク管理部門の管理者(以下本チェックリストにおいて単に「管理者」という。)に策定させ、組織内に周知させているか。
取締役会等は、信用リスク管理規程についてリーガル・チェック等を経て、信用リスク管理方針に合致することを確認した上で承認しているか。

信用リスク管理規程の制定とその周知に関して示されています。

「取締役会等」とありますので、取締役会自体だけでなく、取締役会から権限委譲を受けた他の経営レベルの会議体などが信用リスク管理規程の策定を指示することが認められています。

取締役会等について

金融検査マニュアルの「本マニュアルにより検査を行うに際しての留意事項」において、次のように記載されています。

「取締役会等」には、取締役会のほか、常務会、経営会議等の、経営陣レベルによって構成される経営に関する事項を決定する組織(以下「常務会等」というo) も含む。
なお、「取締役会等」の役割とされている項目についても、取締役会自身において決定することが望ましいが、常務会等に委任している場合には、取締役会による明確な委任があること、常務会等の議事録の整備等により事後的検証を可能としていることに加え、取締役会への結果報告や常務会等に監査役の参加を認める等の適切な措置により、十分な内部牽制が確保されるような態勢となっているかを確認する必要がある。

リーガルチェック

信用リスク管理規程(案)は、信用リスク管理部門の管理者が立案した上で、法令諸規則や他の関連する内部規程との整合性を確認するリーガル・チェックを受けなければなりません。

ここで示されている「リーガル・チェック等」に関しては、金融検査マニュアルの「本マニュアルにより検査を行うに際しての留意事項」において、次のように記載されています。

「リーガル・チェック等」とは、コンブライアンス・チェックを含み、例えば、法務担当者、法務担当部署、コンブライアンス担当者、コンプライアンス統括部門又は社内外の弁護士等の専門家により内部規程等の一貫性・整合性や、取引及び業務の適法性について法的側面から検証することをいう。

 

取締役会等では、信用リスク管理規程の内容について、取締役会が決定した信用リスク管理方針に合致していることを確認した上で、これを承認します。
さらに、「信用リスク管理規程」は、関係する必要な組織内に周知されていなければなりません。

 

信用リスク管理部門の態勢整備

【金融検査マニュアルのチェック項目】

(ⅰ)取締役会等は、信用リスク管理方針及び信用リスク管理規程に則り、信用リスク管理部門を設置し、適切な役割を担わせる態勢を整備しているか。

(ⅱ)取締役会は、信用リスク管理部門に、当該部門を統括するのに必要な知識と経験を有する管理者を配置し、当該管理者に対し管理業務の遂行に必要な権限を与えて管理させているか。

(ⅲ)締役会等は、信用リスク管理部門に、その業務の遂行に必要な知識と経験を有する人員を適切な規模で配置し、当該人員に対し業務の遂行に必要な権限を与えているか。

(ⅳ)締役会等は、信用リスク管理部門について営業推進部門等からの独立性を確保し、牽制機能が発揮される態勢を整備しているか。

ここでは、信用リスク管理部門の体制整備に関する取締役会等の役割について示しています。
(ⅰ)から(ⅳ)の中で、(ⅱ)に関しては、その主語が「取締役会」となっていることに留意しなければなりません。これは、会社法362条および363条において、「重要な使用人」、「業務執行取締役」の氏名が、「取締役会」によるものとされていることに対応すると考えられます。

信用リスク管理部門は、営業推進部門等に対して牽制機能を発揮できる態勢とすることが極めて重要なポイントになります。
なお、金融検査マニュアルにおける「信用リスク管理部門」とは、①審査部門、②与信管理部門、③問題債権の管理部門という3つの部門を総称したものとされています。

信用リスク管理部門の人員体制については、「適切な規模で配置し」とありますが、どの程度の陣容であれば、「適切な規模」と言えるかという判断は、信用リスク管理部門の機能が十分発揮できるかという観点から、各金融期間の経営陣が自ら判断することになります。

【参考】金融検査マニュアルにおける、信用リスク管理部門のあり方に関する注釈

「信用リスク管理部門を独立した態様で設置しない場合(例えば、他のリスク管理部門と統合した一つのリスク管理部門を構成する場合のほか、他の業務と兼担する部署が信用リスク管理を担当する場合や、部門や部署ではなく責任者が信用リスク管理を担当する場合等)には、当該金融機関の規模・特性及びリスク・プロファイルに応じ、その態勢のあり方が十分に合理的で、かつ、機能的な側面から見て部門を設置する場合と同様の機能を備えているかを検証する。」

この注釈からも明らかなように検査マニュアルで示された「部門」の位置づけを自らの組織体制に当てはめて検討していく場合には、検査マニュアルにおいて当該部門に求められている「機能」が何であるか、十分に把握・理解した上で、自らの組織体制における各部署の業務分掌とギャップがないか、利益相反する立場とならないか、見ていく必要があります。

また、(ⅲ)に関して次のような注釈が付されています。

「人員の配置及び権限の付与についての権限が取締役会等以外の部署・役職にある場合には、その部署・役職の性質に照らし、牽制機能が働く等合理的なものとなっているか否かを検証する。」

ここでの基本は、信用リスク管理部門が営業推進部門灯に対する牽制機能を確保することですので、信用リスク管理部門の人員配置等について営業推進部門の意向が働く余地があってはなりません。

 

営業推進部門等における信用リスク管理体制の整備

【金融検査マニュアルのチェック項目】

(ⅰ)締役会等は、管理すべき信用リスクの存在する部門(例えば、営業推進部門等)に対し、遵守すべき内部規程・業務細則等を周知させ、遵守させる態勢を整備しているか。例えば、管理者に営業推進部門等が遵守すべき内部規程・業務細則等を特定させ、効果的な研修を定期的に行わせる等の具体的な施策を行うよう指示しているか。

(ⅱ)締役会等は、管理者又は信用リスク管理部門を通じ、営業推進部門等において、信用リスク管理の実効性を確保する態勢を整備しているか。

信用リスクに直面している現場の担当者が信用リスク管理の重要性を意識して業務を行うことを徹底させる必要があります。

本チェック項目において、「営業店等の現場の担当者は、内部規程・業務細則の内容を十分理解したうえで与信業務を行っており、信用リスク管理の実効性は確保されている」ということを取締役会の立場からどのように担保しているかが問われています。

そのため、人材育成、職員に対する教育・研修が重要となります。
ここに示された「管理者」は、前に述べられているように「信用リスク管理部門の管理者」を指していますが、人事部門等とも連携した施策の実施が求められます。
「遵守すべき内部規程・業務細則等」には、信用リスク管理方針が反映されており、信用リスク管理規程とも整合性のとれたものでなければなりません。

 

取締役会等への報告・承認態勢の整備

【金融検査マニュアルのチェック項目】

取締役会等は、報告事項及び承認事項を適切に設定した上で、管理者に、定期的に又は必要に応じて随時、取締役会等に対し状況を報告させ、又は承認を求めさせる態勢を整備しているか。
特に、経営に重大な影響を与える事案については、取締役会等に対し速やかに報告させる態勢を整備しているか。

取締役会等に対する報告事項、取締役会等の承認事項は、信用リスク管理規程等の内部規程で適切に規程しておく必要があります。
信用リスク管理に最終的な責任を負う経営陣に適時・適切に正確な情報が伝達されなければ、判断を誤ることになりかねません。

特に、経営に重大な影響を与える事案については、危機に直結しますので、迅速に報告する必要があります。
この場合、緊急性が高いことから、取締役会といった必要に応じて開催される会議体に対する報告というよりも、経営の執行に責任を負い取締役会の招集権を持つ代表取締役、業務執行取締役を報告先として特定してあらかじめ内部規程で明確に定めておくことが、より望ましいものと思われます。

また、ここでは「取締役会等」とありますので、開催頻度の高い、常務会、経営会議、リスク管理委員会など同期的な運用が可能な会議体を報告先として必要な意思決定を行うことも選択肢の1つとなります。
その場合には、取締役会の決定による権限の付与(あるいは委任)を事前に行い、その事実を関係する内部規程に明記しておく必要があります。

 

監査役への報告態勢の整備

【金融検査マニュアルのチェック項目】

締役会は、監査役へ直接報告されるべき事項を特定した場合には、報告事項を適切に設定した上で管理者から直接報告を行わせる態勢を整備しているか。

監査役がその機能を十分に発揮できるよう、信用リスク管理に関しても他のカテゴリーのリスク管理と同様に、監査役に対して適切な情報が報告される態勢を整備する必要があります。

明確に「取締役会」が主語になっている理由として、会社法施行規則100条3項3号において、「取締役及び使用人が監査役に報告をするための体制その他の監査役への報告に関する体制」を整備することは取締役会の責務とされているためです。

なお、本チェック項目に関しては「このことは、監査役が自ら報告を求めることを妨げるものではなく、監査役の権限及び活動を何ら制限するものではないことに留意する」 という脚注があります。これは、会社法で定められた監査役の権限を制約するものではないことを注記しているものです。

 

内部監査実施要領および内部監査計画の策定

【金融検査マニュアルのチェック項目】

取締役会等は、内部監査部門に、信用リスク管理について監査すべき事項を適切に特定させ、内部監査の実施対象となる項目及び実施手順を定めた要領(以下「内部監査実施要領」という。)並びに内部監査計画を策定させた上で承認しているか。
例えば、以下の項目については、内部監査実施要領又は内部監査計画に明確に記載し、適切な監査を実施する態勢を整備しているか。

  • 信用リスク管理態勢の整備状況
  • 信用リスク管理方針、信用リスク管理規程等の遵守状況
  • 業務の規模・特性及びリスク・プロファイルに見合った信用リスク管理プロセスの適切性
  • 信用リスク評価の限界・弱点を踏まえた運営の適切性
  • 信用リスク評価方法(手法、前提条件等を含む。)の妥当性
  • 信用リスク評価で利用されるデータの正確性及び完全性
  • ストレス・テストにおけるシナリオ等の妥当性
  • 内部監査及び前回検査における指摘事項に関する改善状況

信用リスク管理に対する内部監査部門のあり方について、取締役会等が行うべきことが示されています。
内部監査部門が信用リスク管理態勢に関して内部監査を実施する場合に不可欠な事項は、あらかじめ内部監査実施要領、内部監査計画に記載しておく必要があります。
取締役会等は、内部監査実施要領・内部監査計画にここに挙げられた項目が記載されていることを確認した上で、それらを承認しなければなりません。

次の点が内部監査の監査対象として、明示されていることが注目できます。

  • 信用リスク「管理態勢」の整備状況
  • 信用リスク評価方法の妥当性

つまり、管理態勢である組織体制のあり方や権限の所在、人員の充実度合いや研修等の全般的状況についての内部監査が求められています。
また、理数系のセンス、検証能力を必要とする項目が含まれています。これに対応できる人材を内部監査部に配置することが望まれます。

金融検査マニュアルでは、「内部監査計画については、その基本的事項について、承認すれば足りる」と注釈が記載されていますが、これはあくまでも「取締役会」が内部監査計画について基本的事項の承認を行うことを指しており、例えば、業務監査委員会のような「取締役会等」に該当する組織については、委任された権限にしたがって、さらに詳細な取極めについても、その内容を確認して必要な承認を与えることが望まれます。

 

内部規程・組織体制の整備プロセスの見直し

【金融検査マニュアルのチェック項目】

締役会等は、定期的に又は必要に応じて随時信用リスク管理の状況に関する報告・調査結果等を踏まえ、内部規程・組織体制の整備プロセスの有効性を検証し、適時に見直しているか。

金融検査マニュアルでは、各プロセスにおける「見直し」の工程が強調されています。
本チェック項目でも、内部規程・組織体制の整備という信用リスク管理態勢の中核をなす項目について、改善に向けたPDCAのサイクルを回すための見直しが取締役会等により実施されているかどうかを確認する必要があります。
「定期的に又は必要に応じて随時」の見直しが求められていますので、望ましくは少なくとも年1回、その間にも、その必要性が認められた場合には随時、見直さなければなりません。

取締役会等のメンバーは、報告を受けた信用リスク管理の状況に関する報告・調査結果から内部規程・組織体制上で改善すべき点がないかどうか、日頃から注意を払う必要があります。

記事製作者

中小企業診断士 湯谷 一夫

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