内部監査部門の役割・責任

内部監査部門は、法令等を遵守し、顧客保護等及びリスク管理状況を把握した上、頻度及び深度等に配慮した効率的かつ実効性のある内部監査を実施する必要があります。

内部監査実施要領の策定

【金融検査マニュアルにおけるチェック項目】

内部監査部門は、監査すべき事項を適切に特定し、内部監査の実施対象となる項目及び実施手順を定めた内部監査実施要領を策定し、取締役会等による承認を受けているか。内部監査実施要領は、本マニュアルに含まれる事項を網羅し、実効的な監査を行いうるものとなっているか。
また、内部監査部門は、必要に応じ、内部監査の実施対象と実施手順の細目を記載した内部監査実施細則を策定しているか。

「内部監査規程」が内部監査部門の組織体制に関わる社内規程であるのに対して、「内部監査実施要領」、あるいは、その下位規程として位置づけられる「内部監査実施細則」は、内部監査の実施プロセスに関わる規程です。

「内部監査実施要領」については、取締役会等(取締役会もしくは内部監査委員会など)によって承認されたものである必要があります。

 

内部監査計画の策定

【金融検査マニュアルにおけるチェック項目】

内部監査部門は、被監査部門等における経営相談・経営指導等をはじめとした金融円滑化、法令等遵守、顧客保護等及びリスク管理の状況を把握した上、頻度及び深度等に配慮した効率的かつ実効性のある内部監査計画を立案し、重点項目を含む基本的事項について取締役会等の承認を受けているか。
また、子会社等の業務について、法令等に抵触しない範囲で監査対象としているか。内部監査の対象とできない子会社等の業務並びに外部に委託した業務については、当該業務の所管部門等による管理状況等を監査対象としているか。

内部監査計画の策定は、各部門の法令等遵守、顧客保護等及びリスク管理の状況を把握(リスク・アセスメント)した上で実施しなければなりません。
その結果、残存するリスクに応じて内部監査の頻度を調節することが考えられます。
現実問題として、内部監査部門の人員をいかに拡充したところで、あらゆる部門の全ての業務に対して詳細な内部監査を行うことは困難ですから、メリハリをつけ、リスクの程度に応じて監査を行う必要があります。
内部監査計画は、リスクの管理状況やリスクの種類や程度を勘案したものでなければならないのです。その上で、内部監査部門は、重点項目を含めた内部監査の基本事項について、取締役会等の承認を得る必要があります。

 

内部監査の実施

【金融検査マニュアルにおけるチェック項目】

(i)内部監査部門は、内部監査実施要領及び内部監査計画に基づき、各被監査部門等に対し、頻度及び深度等に配慮した効率的かつ実効性ある内部監査(例えば抜き打ちとするなど)を実施しているか。

内部監査部門は、策定し、承認された内部監査実施要領、内部監査計画に基いて各被監査部門が有するリスクや内部統制の状況に応じて監査の頻度や深度を調整した、効率的かつ実効性のある内部監査を実施する必要があります。
こうした効率的かる実効性のある内部監査を実施していくためには、個々の内部監査において実地監査に入る前の事前準備段階で相応の労力が必要となります。


【金融検査マニュアルにおけるチェック項目】

(ii)内部監査部門は、内部監査規程等に基づき、同一の内部監査の従事者が連続して同一の被監査部門等の同一の監査に従事することや内部監査の従事者が直前に従事していた被監査部門等の監査を行うことを回避するなど公正な内部監査が実現できるように努めているか。

実施する内部監査の公正性を確保するためには、一人の内部監査担当者が連続して被監査部門の同一の業務に対する監査を行ってはいけません。

管理の基本の一つとして、「目を変える」という原則があります。
どうしても人間は、一つの見方に偏りがちになるので、人を替えてチェックさせる手法が有効です。
また、被監査部門との馴れ合いは回避しなければなりません。
たとえ小規模の企業であるからといって、無条件でこの要件の緩和が許されるものではありません。
同じ担当者が連続して監査することのリスクを勘案し、監査要員を確保することは、経営者の責務です。


【金融検査マニュアルにおけるチェック項目】

(iii)内部監査の従事者は、内部監査で実施した手続、把握した問題点等を正確に記録しているか。
また、内部監査の従事者は、内部監査実施要領及び内部監査計画に基づき、遅滞なく、内部監査で発見・指摘した問題点等を正確に反映した内部監査報告書を作成しているか。

内部監査においては、内部監査が適正に行われたことを説明できるように、実施した手続、把握した問題点の記録を監査調書として保存することが重要になります。
内部監査の従事者は、内部監査で発見・指摘した問題点を正確に反映した内部監査報告書を作成しなければなりません。内部監査報告書は、問題点を是正させるためのフォローアップ・プロセスの出発点になります。


【金融検査マニュアルにおけるチェック項目】

(iv)内部監査部門長は、内部監査報告書の内容を確認し、そこで指摘された重要な事項について、問題点の発生頻度、重要度及び原因等を分析した上、遅滞なく取締役会に提出又は報告しているか。特に、経営に重大な影響を与えると認められる問題点又は顧客の利益が著しく阻害される問題点は、速やかに取締役会に報告しているか。
また、内部監査部門長は、必要に応じて内部管理等に関する会議(各種法令等遵守委員会等)に出席し、内部監査の状況の報告及び情報収集を行っているか。

内部監査部門長は、内部監査報告書の内容を確認して、重要と思われる事項については取締役会に報告する必要があります。
重要な事項について掘り下げて「問題点の発生頻度、重要度及び原因等を分析」しなければならないことが強調されています。
また、報告対象として「顧客の利益が著しく阻害される問題点」と明記されている点に留意が必要です。

重要なポイントとして、「遅滞なく」報告することが挙げられます。
対応が送れることによって、会社に取り返しがつかないダメージを与える可能性もあります。したがって、「経営に重大な影響を与えると認められる問題点」については、遅滞なく報告する必要があるわけです。

内部監査部門は、実際の監査に入ったときだけでなく、監査を行っていないときであっても、各部門の情報に対するアンテナを張り巡らせていなければなりません。
内部監査部門長が独立したモニタリングを行うという立場から、必要に応じて各種会議に出席し、組織がどの方向に向かおうとしているのか、どの辺りに組織としてのリスクがありそうなのか、という情報を収集することは非常に有益です。
この際に注意することは、あくまでもオブザーバーであることを明確にしておくことです。
内部監査部長が会議の決議事項に対して異議を申し立てず黙認したと解釈されると、その決議事項に関して厳しい内部監査を行うことができなくなり、利益相反が生じる可能性があります。内部監査の「独立性」を損なわないように、会議の決議事項に拘束されないことを関連規程等で明確にしておくことです。


【金融検査マニュアルにおけるチェック項目】

(v)内部監査部門は、内部監査の過程で法令違反行為又はそのおそれのある行為を認識した場合、速やかにコンプライアンス統括部門に報告しているか。
また、内部監査の結果を分析して問題点等を的確に指摘し、定期的に又は必要に応じて随時、これをコンプライアンス統括部門、各業務部門及び営業店等に通知しているか。

内部監査の実施によって、法令等違反等の不祥事件等が発覚する場合があります。
そのような場合には、内部監査担当取締役への報告のみならず、コンプライアンス部門をはじめとする関係部署へも報告することが求められます。
また、内部監査結果の分析を通じて判明した問題点については、個別内部監査の被監査部門に限らず、コンプライアンス統括部門、各業務部門及び営業店等にも周知することによって、各部門で同様の問題がないかどうか確認させ、再発防止を図ることが望まれます。

 

フォローアップ態勢

【金融検査マニュアルにおけるチェック項目】

被監査部門等は、内部監査報告書等で指摘された問題点について その重要度合い等を勘案した上、遅滞なく改善し、必要に応じて 改善計画等を作成しているか。
また、内部監査部門は、被監査部門等の改善状況を適切に確認し、その後の内部監査計画に反映させているか。

いかに内部監査部門が正しく、有効な指摘をしたとしても、指摘を受けた現場が対応せずに内部監査部門の「言いっ放し」状態では、何の意味もありません。
このような状態を防ぐためには、内部監査部門の地位の改善と強制力の強化を図り、被監査部門の協力を得られるようにしなければなりません。
また、被監査部門は、内部監査報告書で指摘された問題点については、重要度合いを勘案した上で、遅滞なく改善しなければなりません。

必要に応じて被監査部門が改善計画を作成し、具体的な改善の道筋を明確にすることが金融検査マニュアルで強調されています。
また、内部監査部門は、被監査部門の改善状況を適切に管理しなければなりません。
その意味でフォローアップ機能の強化が重要です。改善が遅れている場合には、その理由を把握しておく必要もあるでしょう。もし、改善が進捗しないようであれば、早い時期に改めて内部監査を実施することも選択肢の一つとなります。

記事製作者

中小企業診断士 湯谷 一夫

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