有価証券の分類方法

基本的な考え方

【金融検査マニュアルのチェック項目】

  • 自己査定基準の適切性の検証

    有価証券の査定に当たっては、その保有目的区分(売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社・関連会社株式、その他有価証券)に応じ、適正な評価を行い、市場性・安全性に照らし、分類を行うものとする。
    また、時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券又は実質価額の把握できない有価証券の安全性の判断は、原則として債権と同様の考え方により発行主体の財務状況等に基づき行うものとする。

    (注)「実質価額」とは、「金融商品会計に関する実務指針」第92項(時価を把握するこ とが極めて困難と認められる株式の減損処理)による実質価額をいう。以下同じ。

  • 自己査定結果の正確性の検証

    有価証券の保有目的区分及び評価については、「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準委員会)等に基づいて適正に行われているか検証する。

    (備考)「金融商品に関する会計基準」等には、「金融商品会計に関する実務指針」及び1 「金融商品会計に関するQ&A」を含む。

有価証券の査定については、平成11年1月に企業会計審議会から公表された「金融商品に係る会計基準」、及び平成12年1月に公認会計士協会から公表された「金融商品に関する実務指針(中間報告)」等に基づいて、その保有目的区分(売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社・関連会社株式、その他有価証券)に応じて適正な評価を実施し、市場性・安全性に照らして分類を行うことにあります。時価評価の対象となっている有価証券(売買目的有価証券及び自家が把握できるその他有価証券)については、毎期その簿価の洗い出しが行われることから資産査定において帳簿価額を非分類とします。
時価評価の対象となっていない有価証券(満期保有目的の債券、子会社・関連会社株式及び時価が把握できないその他の有価証券)については、次の基準に応じてその分類を進めていきます。
内部監査担当者は、有価証券の市場性・安全性に照らし、正確に分類が行われているか否かについて、そのプロセスを検証しなければなりません。

有価証券の保有目的区分         時価評価

  • 売買目的有価証券   →   時価評価の対象
  • 満期保有目的の債券  →   時価評価できる/できない
  • 子会社・関連会社株式 →   時価評価できる/できない
  • その他有価証券    →   時価評価できる/できない

債券の分類は、満期保有目的の債券、その他の有価証券に分けて、その資産分類をします。
満期保有のものについては、さらに時価による評価の可否に応じて分類をします。

 

時価評価の対象となっている有価証券

(売買目的有価証券及び時価が把握できるその他有価証券)

【金融検査マニュアルのチェック項目】

  • 自己査定基準の適切性の検証
    帳簿価額を非分類とする。
  • 自己査定結果の正確性の検証
    帳簿価額が適正な時価で評価されているか検証する。

「売買目的有価証券」、時価が把握できる「その他の有価証券」については、時価評価して経理されることから、償却・引当を考える必要がありません。
この場合には、時価評価が適正に行われているかどうかを確認する必要があります。

 

時価評価の対象となっていない有価証券

(満期保有目的の債券、子会社・関連会社株式及び時価が把握できないその他有価証券)

1.債券

【金融検査マニュアルのチェック項目】

  • 自己査定基準の適切性の検証
    債券については、原則として、以下のイ〜ハの区分に応じて分類を行う。
  • 自己査定結果の正確性の検証
    債券について、下記に掲げるとおり、分類されているかを検証する。

時価評価の対象となっていない債券(満期保有目的の債券及び時価が把握できないその他有価証券に属する債券)については、次の非分類債券、満期保有目的の債券、その他有価証券の債券の区分に応じて分類します。


【金融検査マニュアルのチェック項目】

  • 自己査定基準の適切性の検証
    イ. 非分類債券
       次の債券については、原則として、帳簿価額を非分類とする。
    (イ)国債、地方債
    (ロ)政府保証債(公社・公団・公庫債等)
    (ハ)特殊債(政府保証債を除く公社・公団・公庫などの特殊法人、政府出資のあ
       る会社の発行する債券)
    (ニ)金融債
    (ホ)信用格付業者による直近の格付符号が「BBB(トリプルBBB)」相当以上の
       債券を発行している会社の発行するすべての債券
  • 自己査定結果の正確性の検証
    債券について、適切な時価が把握されているか検証するとともに、下記4.減損処理により減損処理の対象となる者がないか検証する。

【金融検査マニュアルのチェック項目】

  • 自己査定基準の適切性の検証
    ロ. 満期保有目的の債券(上記イに該当する債券を除く。)
    (イ)時価が把握できるもの
       ①時価が帳簿価額を上回っている場合は、帳簿価額を非分類とする。
       ②時価が帳簿価額を下回っている場合は、時価相当額を非分類とし、
        帳簿価額と時価の差額を、原則として、Ⅱ分類とする。
  • 自己査定結果の正確性の検証
    適正な時価が把握されているか検証する。
  • 自己査定基準の適切性の検証
    (ロ)時価が把握できないもの
       原則として、債券と同様の方法により、価値の毀損の危険性の度合い
       に応じて帳簿価額を分類する。
  • 自己査定結果の正確性の検証
    債券の分類と同様の方法により分類が行われているか検証する。

満期保有目的の債券には、時価評価できるものと時価評価できないものとがあり、それぞれ上記のように分類します。


【自己査定基準の適切性の検証】

  • 自己査定基準の適切性の検証
    ハ.その他有価証券の債券(上記イに該当する債券を除く。)
      原則として、債権と同様の方法により価値の毀損の危険性の度合いに応じて帳簿価額分類する。
  • 自己査定結果の正確性の検証
    債権の分類と同様の方法により分類が行われているか検証する。

非分類債権のその他有価証券の債券については、貸出金の査定と同様に、その発行体の信用力に応じて査定し、分類することとしています。

2.株式

【金融検査マニュアルのチェック項目】

  • 自己査定基準の適切性の検証
    株式については、原則として、以下のイ〜ハの区分に応じて分類を行う。
    イ.非分類株式
      次の株式については、原則として、帳簿価額を非分類とする。
    (イ)政府出資のある会社(ただし、生産会社を除く)の発行する株式
    (ロ)信用格付業者による直近の格付符号「BBB(トリプルB)相当以上の債券を
       発行する会社の株式
    ロ.子会社・関連会社株式(上記イに該当する株式を除く。)
     ①時価又は実質価額が帳簿価額を上回っている場合は、帳簿価額を非分類とす
      る。
     ②時価又は実質価額が帳簿価額を下回っている場合は、時価又は実質価額相当額
      を非分類とし、帳簿価額と時価又は実質価額相当額の差額について、原則とし
      て、Ⅱ分類とする。
      ただし、この場合において、当該株式の時価の下落期間等又は実質価額の低下
      状況等に基づき、実質価額相当額を非分類とし、帳簿価額と時価又は実質価額
      相当額の差額に相当する額をⅢ分類とすることができるものとする。
    ハ.その他有価証券の株式(上記イに該当する株式を除く。)
     ①実質価額が帳簿価額を上回っている場合は、帳簿価額を非分類とする。
     ②実質価額が帳簿価額を下回っている場合は、実質価額相当額を非分類とし、
      帳簿価額と実質価額相当額の差額に相当する額をⅡ分類とする。
      ただし、この場合において、当該株式の実質価額の低下状況等に基づき、実質
      価額相当額を非分類とし、帳簿額と実質価額相当額の差額に相当する額をⅢ分
      類とすることができるものとする。

(注)帳簿価額と時価又は実質価額相当額の差額に相当する額をIII分類とする場合に は、「子会社株式等に対する投資損失引当金に係る監査上の取扱い」(平成13年4月17日日本公認会計士協会)を参照。

  • 自己査定結果の正確性の検証

    株式について、上記に掲げるとおり、分類されているかを検証する。
    適正な時価又は実質価額が把握されているか検証するとともに、下記(4)により減損処理の対象となるものがないか検証する。
    なお、実質価額については、原則として、株式の発行主体の資産等の時価評価に基づく評価差額を加味して算出しているかを検証する。 デット・エクイティ・スワップ(以下「DES」という。)により取得した株式の帳簿価額については、「デット・エクイティ・スワップの実行時における債権者側の会計処理に関する実務上の取扱い」(平成14年10月9日企業会計基準委員会)に基づいて適正に算定されているかを検証する。特に、真正なDESであるかどうかの検証項目等に留意する。
    また、DESにより取得した株式を含む種類株式の期末評価については、「種類株式の貸借対照表価額に関する実務上の取扱い」(平成15年3月13日企業会計基準委員会)に基づいて適正に評価されているかを検証する。特に評価モデルの仮定の適切性に留意する。

    (注)いわゆる実質DES及びDESの取り扱いについては、「監査上の留意事項に! ついて」(平成17年3月11日日本公認会計士協会)を参照。

株式については、政府出資のある会社の発行する株式、外部格付期間の格付が一定水準以上である会社が発行した場合において非分類としています。
非分類株式に該当しない株式については、「子会社・関連会社株式」と「その他有価証券の株式」に分けて、時価又は実質価額と帳簿価額の差額を考慮して細かな資産分類を実施します。

3.外国証券

【金融検査マニュアルのチェック項目】

  • 自己査定基準の適切性の検証
    外国証券については、原則として、以下のイ、ロの区分に応じて分類を行うものと
    する。
    イ.非分類外国証券
      次の外国証券については、原則として、帳簿価額を非分類とする。
    (イ)日本国が加盟している条約に基づく国際機関、日本国と国交のある政府又は
       これに準ずるもの(州政府等)及び地方公共団体の発行する債券
    (ロ)日本国と国交のある政府によって営業免許等を受けた金融機関の発行する株
       式及び債券
    (ハ)信用格付業者の格付符号が「BBB (トリプルB)」相当以上の債券を発行して
       いる会社の発行するすべての債券及び同債券を発行する会社の発行する株式
    ロ.上記イ以外の外国証券
      原則として、上記①債券ロ、ハ及び②株式ロ、ハの分類方法に準じて分類を行
      うものとする。

(注)「日本国が加盟している条約に基づく国際機関」とは、国際復興開発銀行(IBRD)、国際金融公社( I P C ) 、米州開発銀行( I D B ) 、欧州復興開発銀行( E B R D ) 、アフリカ開発銀行( A f D B ) 、アジア開発銀行( A D B ) である。

  • 自己査定結果の正確性の検証
    外国証券について、上記に掲げるとおり、分類されているかを検証する。
    外国証券について、適正な時価又は実質価額が把握されているか検証するとともに、下記(4)により減損処理の対象となるものがないか検証する。

外国証券では、非分類に該当するか否かについて適切に判定されているかどうかがポイントとなります。

4.その他の有価証券

【金融検査マニュアルのチェック項目】

  • 自己査定基準の適切性の検証
    その他の有価証券は、上記1.基本的な考え、2.時価評価の対象となっている有
    価証券3.時価評価の対象となっていない有価証券及び下記4.減損処理に準じて分類する。
    ただし、貸付信託の受益証券及び証券投資信託等のうち預金と同様の性格を有するものは、非分類とする。
  • 自己査定結果の正確性の検証
    ファンドについては、その種類・内容・リスク特性等の特徴を踏まえて、必要に応
    じて購入先などから詳細な各種情報を入手し、金融機関が自ら適切にファンドの資産性や評価について、検討しているかを検証する。

その他の有価証券では、特に、ファンドについて十分な情報を得る必要がある点に留意しなければなりません。

 

減損処理

金融商品時価会計の導入に伴い、金融検査マニュアルにも減損会計の概念が導入されています。
時価の把握できるものと、時価を把握することが極めて難しい株式に分類します。
減損処理の考え方に基づき時価の下落率やその回復の可能性を勘案の上、簿価と時価との差額を考慮して細かく分類していきます。
減損処理については、
①時価が把握できるもの
②時価を把握することが極めて難しいと認められる株式
について、次のように金融検査マニュアルに示されています。

1.時価が把握できるもの

【金融検査マニュアルのチェック項目】

  • 自己査定基準の適切性の検証
    売買目的有価証券以外の有価証券のうち、時価が把握できるものについて時価が著
    しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、当該時価とその取得原価又は償却原価との差額をⅣ分類とする。
  • 自己査定結果の正確性の検証
    イ.時価が著しく下落しているものについて、回復可能性を検証しているかを検証
      する。
    ロ.回復可能性を検討した結果、回復の可能性があると認められるものを除いて、
      減損処理の対象としているかを検証する。
    ハ.上記イ、ロを踏まえて、減損処理が必要な場合、時価とその取得原価又は、償
      却原価との差額をⅣ分類としているか検証する。

(注)減損処理の具体的処理については、「金融商品会計に関する実務指針」第91項、第92項、第283-2項、第284項及び第285項を参照。

2.時価を把握することが極めて難しいと認められる株式

【金融検査マニュアルのチェック項目】

  • 自己査定基準の適切性の検証
    時価を把握することが極めて困難と認められる株式について、当該株式の発行主体の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したときは、当該実質価額とその取得原価との差額をⅣ分類とする。
    ただし、回復可能性が十分な証拠によって裏付けられるのであれば、当該差額をⅣ分類としないことができる。
  • 自己査定結果の正確性の検証
    株式の発行主体の財政状態の悪化により期末の株式の実質価額が取得時の実質価額に比べて相当程度低下し、かつ、当該実質価額が取得原価に比べて50%程度以上低下している場合は、当該差額をⅣ分類としているか検証する。
    Ⅳ分類としていない場合は、回復可能性が十分な証拠によって裏付けられているか検証をする。

【参考】

「金融商品に係る会計基準」及び「金融商品に関する実務指針」に基づく減損処理の運用となる判定基準のフローチャートを記載します。

 

【減損処理の適用基準】

 

記事製作者

中小企業診断士 湯谷 一夫

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